緊急事態下の物流はどうなるのか…専門家「中期的には安心」“雇用改革”を提案「農業従事の選択肢」「出前業の拡大」

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言が出され、7都府県ではこれまで経験のない“自粛生活”に入った。コロナ禍の不安心理による医薬品や食料の買い占めが問題化する側面もある中で、物流・小売の安定供給が注目されるポイントのひとつだ。これまで通りに雇用が維持できるかも懸念されている。未曾有の事態で日本はどうなるのか。流通アナリストの渡辺広明氏に聞いた。

流通アナリストの渡辺広明氏
流通アナリストの渡辺広明氏

流通のプロが提言「布マスクへのシフト」 欧米など需要拡大でマスク入手難の見通し

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言が出され、7都府県ではこれまで経験のない“自粛生活”に入った。コロナ禍の不安心理による医薬品や食料の買い占めが問題化する側面もある中で、物流・小売の安定供給が注目されるポイントのひとつだ。これまで通りに雇用が維持できるかも懸念されている。未曾有の事態で日本はどうなるのか。流通アナリストの渡辺広明氏に聞いた。

 安倍晋三首相による緊急事態宣言から一夜明けた8日の午前中に、スーパー・ドラッグストア・ディスカウント・コンビニなど小売業態の店舗を視察した渡辺氏は、品ぞろえに変化のないことを実感。「一時は買い占めの対象になっていたトイレットペーパーの在庫も店によっては多少あり、デマ情報による購買は減っている印象だ。スーパーの生鮮食品は毎日届くし、コンビニでの弁当などの中食は基本的に1日3回入荷される。日本の物流は世界でも最高峰のレベルで、中期的には安心できる」と強調する。

 日本の現状の物流供給システムでは、“食べ物がなくて困る”という状況には中期的にはならない。ただ、非常時に需要が急激に高まるカップ麺などの加工食品については、もともと生産量は1~2か月の流通在庫があるだけで、製造ラインを急には増やせないため、カップ麺などは製造が売れ筋商品に集約され、品揃えの幅が少なくなってしまう面はあるという。

 デマによる異常な購買は、国・自治体やメディアの啓発によって減ってきているものの、やはりマスクの品薄は解消のめどが立っていない。渡辺氏は「布マスクへのシフト」を提言する。医療現場への提供を最優先に考慮したうえで、飛沫の拡散を防ぐという意味で一定の効果が見込まれ、洗えば再利用可能な布マスクを家庭に採り入れていくという考えだ。マスクの確保については、深刻な感染悪化に陥っている欧米での需要が拡大しているといい、「欧米での需要が増えている。中国でのニーズも依然として高いと聞いており、感染がアフリカや発展途上国に広がり続けることになれば、世界的に入手が困難になる。近年、マグロが世界で人気になって高騰化したことと同じような現象だ」と指摘する。渡辺氏は重ねて、「布マスクも含めて、一般の人が過剰な買い方を控えることが大事」と話す。

 物流にはそこまで心配はないというが、雇用の面では労働者にとって、フリーランスをはじめ小規模飲食業や工場派遣労働者などの仕事が少なくなるなどの影響を受ければ、生活費を稼ぐための死活問題にもなってくる。コロナ禍によって休業・離職を余儀なくされる人が多くなることも予想される。

 渡辺氏は“労働改革”を提案する。例えば、もともと高齢化・人手不足に悩む農業だ。新たな職場として、農業従事を選択肢に挙げるという雇用システムだ。改めて、非常時の食料自給が再考される中で、「農業復活につなげる契機にもなり得る」との考えを明かした。

 それに、渡辺氏のようにフリーランスで活動する人にとって、コロナショックによる収入減のダメージを受けることもあるという。日本の労働システムの今後について、渡辺氏は「Uber Eats(ウーバーイーツ)への応募者が殺到していると聞く。出前業の拡大は注目されるだろう。今後はテレワークだけでなく、リスクヘッジのためにも副業の導入・浸透が進むことになるのではないか」との見解を示した。

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(ENCOUNT編集部)

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