俳優の井上想良（24）が「永遠の昨日」（MBSほかで放送中、全8話）で連続ドラマ初主演を果たした。カンテレ深夜ドラマ「合コンに行ったら女がいなかった話」（毎週木曜・深夜0時25分）でもメインキャストを務め、今年は大ブレークの兆しだ。（取材・文＝平辻哲也）

　井上は大分県でテニススクールを経営している父の下で3歳の時からテニスの英才教育を受けてきたリアル“テニスの王子様”。幼少期はロジャー・フェデラーに憧れ、プロを目指し、全国選抜高校テニス大会の団体戦で全国3位に輝き、東京の有名私立大学にはスポーツ推薦で進学した。そんなテニスの実力者がなぜ芸能界を目指したのか。

「テニスは本当に厳しい世界なんです。錦織圭さん、大坂なおみさんといった一線で活躍している人は中学、高校生の時から海外に行っています。だから、日本の高校に進学する段階でプロになろうとは思っていませんでした。大学2年の時にワタナベエンターテインメントの関係者の方から声をかけていただいたのですが、上京した僕から見たら、芸能界は夢のまた夢。でも、母の影響でドラマや映画は好きでしたし、大学で芸能活動している友人もいたので、それがきっかけになりました」

　大学に通いながら、ワタナベエンターテインメントカレッジで1年間、演技などを勉強。2020年から芸能活動を開始し、21年にはAbemaTVの人気恋愛リアリティ番組「恋とオオカミくんには騙されない」で人気に。大学を卒業した現在はテレビドラマ出演が相次いでおり、勝負の年といえそうだ。

　初の主演ドラマ「永遠の昨日」は榎田尤利の人気BL小説が原作。交通事故にあってしまった高校生の浩一（小宮璃央）と同級生の満が心を通わせる姿を描く。「泣けるBL小説」として話題になっている。井上が演じるのは、秀才で人付き合いが苦手な満だ。

「素直にすごくうれしかったのですが、本当に主演なんてできるのかと不安でしたね。満は自分の中に、秘めている思いを持っているのですが、あえて周りに伝えようとしない人で、そういう思いは誰に誰にでもあるので、共感できました」。主演については「出ていないところがないくらい。設定上、僕の語りで進んでいくので、これが主演なのかと思いました。毎日撮影があったので、役の軸をブレずに演じられたので、やりやすかったのですが、8月の撮影だったので、暑さと日焼けは大変でしたね」と話す。

　元宝塚歌劇団男役スター、七海ひろきのドラマ初主演作「合コンに行ったら女がいなかった話」でもメインキャストを務める。こちらは、男子大学生が合コンに行ったら、男装イメケン女子3人がいた……というラブコメ。「僕は普通の大学生で、目撃者のような立場の役。みなさんのエネルギーを感じるドラマでしたね。セリフ量も多かったですし、この夏はしっかりと芝居に向き合えた2、3か月だったように思えます」と充実した表情だ。

　芸能界へは「1度きりの人生だ」との思いで飛び込んだ。当初はモデルとしてスタートだったが、芝居をやっていくうちに、俳優の仕事の魅力に目覚めた。

「憧れの人は作っていないのですが、同じ表現者として尾崎豊さんを尊敬しています。高校時代にたまたまYou Tubeで流れてきたのを見て、ファンになりました。尾崎さんはストレートな感情を表現できて、周りを引き込ませる能力がすごい。歌は得意なわけではないんですけども、尾崎さんの曲はだいたい歌えます。目標も決めてはいませんが、ゆくゆくは日本アカデミー賞を受賞すること。そこに向かって、頑張っていきたいなと思っています」

　私生活では3人兄弟の長男。2人の弟も大学テニス界で活躍中だ。「テニスは弟2人の方がうまいんです。父は2人に期待をかけているようですが、弟たちには変なプレッシャーをかけてしまったかなと思っています（笑）。一つ下の弟とは一緒に住んでいて、休みの日にはよく遊びに出かけています」と明かす。テニス界を飛び出した“王子様”は、演技の世界で頂点を目指していく。

□井上想良（いのうえ・そら）1998年8月12日、大分県出身。2020年から活動。21年にAbemaTV「恋とオオカミには騙されない」の出演。最近の出演作は映画「線は、僕を描く」（10月21日公開）など。178センチ。