ブルーノ・マーズがジャンルレスな音楽を作れるワケ 幼少期の家族バンドと裏方時代

4年半ぶりに来日公演を行っている米歌手のブルーノ・マーズ。2010年のデビュー以来、グラミー賞を15回獲得するなど世界的な人気を誇っている。ブルーノ最大の魅力・武器は、その音楽性が「ジャンルレスであること」と言えよう。ロック、レゲエ、ポップス、バラード、ソウル、ファンク、アコースティック、オーガニック、90年代R&B、ニュー・ジャック・スウィング、フィラデルフィアソウル、ミネアポリスサウンド……と、とにかく音楽の幅が広い。ブルーノ自身も「それが僕のパーソナリティー」と語っている。では、この幅広い音楽性はどのように身についたのだろうか。それは彼のルーツをひも解くことで納得できるだろう。

ブルーノ・マーズ【写真:Getty Images】
ブルーノ・マーズ【写真:Getty Images】

多様な音楽性の基盤となった家族バンドと「ザ・スミージントンズ」

 4年半ぶりに来日公演を行っている米歌手のブルーノ・マーズ。2010年のデビュー以来、グラミー賞を15回獲得するなど世界的な人気を誇っている。ブルーノ最大の魅力・武器は、その音楽性が「ジャンルレスであること」と言えよう。ロック、レゲエ、ポップス、バラード、ソウル、ファンク、アコースティック、オーガニック、90年代R&B、ニュー・ジャック・スウィング、フィラデルフィアソウル、ミネアポリスサウンド……と、とにかく音楽の幅が広い。ブルーノ自身も「それが僕のパーソナリティー」と語っている。では、この幅広い音楽性はどのように身についたのだろうか。それは彼のルーツをひも解くことで納得できるだろう。(文=コティマム)

 1985年にハワイ・オアフ島で生まれたブルーノは、ラテン・パーカッショニストの父、シンガーの母、ギタリストのおじ、ドラマーの兄を持つ音楽一家で育ち、家族バンドとしてホテルやビーチで営業していた。バンドはテンプテーションズやアイズレー・ブラザーズなど、50~60年代のモータウンサウンドを演奏していたというから、幼少期の時点で30年前の楽曲を耳にしていたことになる(ちなみにこのバンドは日本でも公演しており、2歳で初来日したブルーノは父に懇願してステージに上がっている)。

 エンターテインメントが当たり前の環境で育ったブルーノは、幼い頃から父のステージでエルヴィス・プレスリーの物まねを披露していたという。生のステージに触れながら、アメリカのヒットチャートやハワイアン・レゲエ(ジャワイアン)、R&B、ロック、カントリーなどさまざまな音楽を聞いて育った。古いところではジェイムス・ブラウン、リトル・リチャード、ジャッキー・ウィルソンにハマり、マイケル・ジャクソンやプリンスにも大きく影響を受けた(彼の作品を聞けば納得)。またスケボーをやっていたことからヒップホップも聞いており、西海岸の大御所2パックもよく聞いていたという。

 幼少期からすでに幅広い音楽を吸収し、ジャンルレスな基盤が完成されていたブルーノ。彼はデビューを夢見て高校卒業後にLAに渡り、一度は名門レーベル・モータウンと契約するが、すぐに解消。ここではチャンスに恵まれなかった。

 そんな中で出会ったのが、シンガー・ソングライターでパフォーマーのフィリップ・ローレンス(以下フィル)だ。フィルも音楽一家で育ち、ディズニーのアニメやゲームの声優を務めるなど、キャリアを重ねていた(2008年には「リトル・マーメイド」のセバスチャン役を担当)。レコーディングプロデューサーによって引き合わされた2人は、プロデュースチーム「ザ・スミージントンズ」を結成(ここにアリ・レヴィーンも加わる)。自身が表舞台に立つのではなく、アーティストに楽曲をプロデュースする“裏方”として活動するようになった。この裏方時代にプエルトリコ出身のアイドルグループ「メヌード」や、ブランディ、デスティニーズ・チャイルドなどの売れっ子の楽曲制作を担当した。

 09年には大物プロデューサーたちと共同でフロー・ライダーの「Right Round」を手がけ、これが大ヒットして全米1位に。ザ・スミージントンズの名が知れ渡るようになる。その後もショーン・キングストンなど数々のアーティストの楽曲を制作。さらに翌10年にはシーロー・グリーンの「Forget You(※F**k Youのクリーンバージョン)」も手がけ、同曲は全英1位とグラミー賞を獲得している。

 同時期にブルーノは、B.o.Bの「Nothin’ On You」(全米1位)やトラヴィ―・マッコイの「Billionaire」(全米4位)にシンガーとして参加し、自身も「歌う側」として出るように。そしてついに同年、自身のデビューアルバム「Doo-Wops & Hooligans」を発売した。このアルバムもザ・スミージントンズが手がけており、なんとシーロー・グリーンとB.o.Bもゲスト参加している。

 こうして彼の軌跡をたどると、幼少期から蓄えられたさまざまな音楽ジャンルの感性と、「時代に合うヒットする曲」を作るためのプロデューサーとしてのノウハウが、彼を形作っていることがわかる。ザ・スミージントンズとしては、幅広いアーティストを相手に、それぞれに合うR&Bや80年代ポップ、エレクトロ、レゲエ、カリビアンポップなどを作り出してきた(ちなみにブルーノは20年、嵐に「Whenever You Call」を楽曲提供している)。ハワイ時代とザ・スミージントンズ時代の経験が、今のジャンルレスなブルーノ・マーズにつながっているのだろう。

 またブルーノは、「The Hooligans(ザ・フーリガンズ)」というバンドメンバーを帯同しており、この中にフィルがいる(ブルーノの兄もいる)。メンバーはコーラスやキーボード、ベース、トロンボーン、トランペットなどを担当しているが、バックバンドというよりはメインに近い。ブルーノと共にダンスしながら、一緒に動き回ってパフォーマンスする。全員で足をそろえて踏み鳴らすステップは、まるでジェイムス・ブラウンのようだ。今回筆者は東京公演を見たが、フィルの存在感は強く、フーリガンズ含めたチームとしての魅力が現れていた。

 決まった型にハマらず、あらゆる音楽を自分の中に取り込んで発信してきたブルーノ。現在は「シルク・ソニック」を含め4作のアルバムが出ているが、次回作はどんな音楽を聞かせてくれるのか。

□ブルーノ・マーズ(本名ピーター・ジーン・ヘルナンデス)1985年10月8日生まれ。37歳。ハワイ出身。ラテン・パーカッショニストの父、シンガーの母、ドラマーの兄、ギタリストのおじという音楽一家に生まれ、幼少期から父の率いるステージに立つ。高校卒業後にLAに渡り、プロデュースチーム「ザ・スミージントンズ」を結成。多くの大物アーティストの楽曲を手がけヒットを連発する。2010年に「Doo-Wops & Hooligans」でデビュー。デビューから3年の間に、「just the way you are」「LOCKED OUT OF HEAVEN」など5曲が全米1位を獲得。22年までに15回のグラミー賞を受賞している。

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