慶大中退し役者の道へ、名付け親は福山雅治 “きづき”が「鎌倉殿の13人」で存在感
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の鶴丸/平盛綱役で脚光を浴びているのが、俳優のきづき(31)だ。「Amazon プライム・ビデオ」のCMでも知られる身長155センチの個性派は、慶應大学経済学部中退、現在の芸名は福山雅治が名付け親。10月16日に放送された「鎌倉殿の13人」39話では北条義時(小栗旬)から諱(いみな)をもらい鶴丸から平盛綱となったことで注目を集めている。
大河ドラマの現場「規模の大きさに驚きました」
NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の鶴丸/平盛綱役で脚光を浴びているのが、俳優のきづき(31)だ。「Amazon プライム・ビデオ」のCMでも知られる身長155センチの個性派は、慶應大学経済学部中退、現在の芸名は福山雅治が名付け親。10月16日に放送された「鎌倉殿の13人」39話では北条義時(小栗旬)から諱(いみな)をもらい鶴丸から平盛綱となったことで注目を集めている。(取材・文=平辻哲也)
「鎌倉殿の13人」は、鎌倉幕府を開いた源頼朝(大泉洋)の死後の権力を巡って、北条義時(小栗旬)ら幕府の御家人がパワーゲームを繰り広げる物語。鶴丸は、義時の最初の妻、八重(新垣結衣)に救われた少年で、北条泰時(坂口健太郎)とともに義時のもとで成長し、泰時を支えていくという役だ。
「今回の大河ドラマ出演の話をいただいた時には放送が始まっていて、一視聴者として見ている中、お話を頂いたのでとてもうれしかったです。さらに北条家が中心のお話で、その周りにいられる役と聞いてびっくりしました。本当に運やめぐり合わせに恵まれています」。
大河ドラマの現場はどうか。
「まずは規模の大きさに驚きました。時代物ということもあって建物や外観もほとんどのシーンがセットで組まれていますし、出演者やスタッフなどこの作品に関わっている人数も多い。そして、いい作品を作るぞという現場の熱。その中で必死に演じていった感じです」
親友のような存在である泰時役の坂口健太郎(31)とはアイコンタクトをとるようにした。
「時代が進むにつれて鶴丸は平盛綱になり、泰時と共に厳しい場面に直面する機会が増えていきます。そんな中でも心はつながっているというのを表現するのに、坂口君との演技の中で自然とだったり、相談したりして、泰時とのアイコンタクトは増えていきました。
また普段の関係も徐々に変わってきて、最初は頑張って話そうという感じもありましたが、今となっては話さなくても気にならない、一緒にいるのが自然な感じになっています」
一方、主演の小栗との絡みはものすごく緊張したという。
「39話で鶴丸が義時に平盛綱という諱(いみな)をもらい、『ついでに御家人にしてもらうわけには行きませんかね』というずうずうしいお願いを切り出すシーンがあったのですが、実は義時と鶴丸がしっかり話すのはこのシーンが初めて。リハーサルの時は緊張してガチガチだったんです。どうにかしないとと思って、本番前に思い切って小栗さんに相談したら『100点を目指しがちだけど、ダメで元々ぐらいの気持ちで挑んだ方が硬くならずに緊張しなくて済むんじゃないか』とアドバイスくださって、気持ちが楽になりました」と感謝する。
「小栗さんは日ごろから出演者やスタッフをリラックスさせてくれようと撮影の時につけるマスクに毎日違うメッセージを書き込まれているんですが、盛綱が御家人になれるかが決まる切り的の会(弓矢の大会)の撮影日のマスクには『盛綱爆誕!!』の文字が。本当にうれしかったですし、気合が入りました」。ほかにも、大ベテランが顔をそろえる大河ドラマは学びがいっぱいあるという。
小学校では体操教室、中学高校では陸上部と軟式野球部、大学で演劇を始める
きづきが俳優を目指したのは、大学浪人中に友人が所属する演劇サークルの舞台を見たのがきっかけ。小学校では体操教室、中学高校では陸上部と軟式野球部に入った。筋肉もあり、運動神経には自信もあったが、どれも今ひとつ熱中できなかったという。
「大学で演劇を始めるまでは、自分の意志で行動していなかったように思うんです。今思えばですけど、何の目標もなく、受験勉強をして、周りに合わせて大学に入った感じでした。その反動というわけではないですけども、大学に入って自分から初めて何かを表現してみたいと思い、演劇をはじめました」
慶應大学経済学部は私学でもトップクラス。無事に卒業すれば、官公庁や一流企業での道も開けていたはずだが、俳優の道を選んだことには後悔はない。
「後悔はありませんが、親には申し訳ないことをしたなと思っています。浪人して、2回だぶって、3回生までやって、23歳の時に中退しましたから。それでも今、俳優業を応援してくれているので本当にありがたいです」と感謝する。
2014年から俳優として本格的に活動。19年に本名から現在の芸名に改名したのも転機になった。その名付け親は同じ事務所の大先輩である福山雅治だ。
「知り合いの放送作家さんが福山さんのラジオ番組も担当していて、番組の企画として、福山さんが名付けてくれたんです。僕は直接福山さんとお話ししたことはないのですが、プロフィールやアンケートを見て、僕の雰囲気に合う名前をつけてくださったみたいです。福山さんとはまだ、お会いしたことはないんです。有名になったら、自然と仕事の現場で出会えるだろう、と」
その後は「Amazonプライム・ビデオ」のCMが決まり、思いがけず1年間のロングラン放送になって、その顔が知られるようになった。フジテレビ「監察医朝顔」、TBS「G線上のあなたと私」、日本テレビ「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」、そして現在出演中の「鎌倉殿の13人」へと続く。30日放送の41話では、いよいよ和田合戦がぼっ発。
「平盛綱となった鶴丸は泰時をより近くで支えていくようになります。時代の荒波の中で泰時と共に鎌倉を支えるひとりとなって盛綱の表情も険しくなっていきますが、二人の間に変わらずにある友情を大切にしながら演じたので、そのあたりに注目してみていただけたらうれしいです。」と今後の見どころを語ってくれた。今後ますます存在感を見せてくれそうだ。
身長155センチの個性派は、その名の通り、いろんなものに“きづき”をもらいながら、次のステージを目指す。
□きづき 本名・城築創(きづき・はじめ)。1990年12月28日、東京都出身。慶應義塾大学在学中に演劇サークルに所属し、芝居をはじめ、大学を中退。2014年から本格的に俳優活動を開始。19年にCM「Amazonプライム・ビデオ」のPrime兄弟で注目を集める。主な出演作はフジテレビ「監察医朝顔」、TBS「G線上のあなたと私」、日本テレビ「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」など。身長155センチ。普通自動車免許。趣味:野球、ボクシング、ドライブ、観葉植物。