お笑い界が暗い「今」だからこそ…「べしゃり暮らし」が伝える“芸人人生”に共感

お笑い界が揺らいでいる中で、日本一の芸人を目指す若者の青春を描いた漫画「べしゃり暮らし」が、大きな輝きをもたらしている。7月からドラマ版(テレビ朝日系)が、劇団ひとりさん演出、間宮祥太朗さん主演でスタート。ドラマ化に合わせ「週刊ヤングジャンプ」では、ニッポン漫才クラシック編が連続掲載され、物語が完結へと向かっている。2005年から続く芸人漫画の超大作は、お笑いに魅せられた作者の愛と情熱が詰まった作品となっている。

©森田まさのり・スタジオヒットマン/集英社
©森田まさのり・スタジオヒットマン/集英社

作品のために芸人養成所に入学…作者・森田まさのり氏の本気

 お笑い界が揺らいでいる中で、日本一の芸人を目指す若者の青春を描いた漫画「べしゃり暮らし」が、大きな輝きをもたらしている。7月からドラマ版(テレビ朝日系)が、劇団ひとりさん演出、間宮祥太朗さん主演でスタート。ドラマ化に合わせ「週刊ヤングジャンプ」では、ニッポン漫才クラシック編が連続掲載され、物語が完結へと向かっている。2005年から続く芸人漫画の超大作は、お笑いに魅せられた作者の愛と情熱が詰まった作品となっている。

 作者は「ろくでなしBLUES」「ROOKIES」といった大ヒット作で知られる森田まさのり氏。お笑い・芸人を愛する森田氏は、本作品を連載するにあたって吉本興業の芸人養成所「NSC」に入学。芸人になるためのイロハを学び、“芸人のリアル”をその目で見届けてきた。作品では養成所の授業風景、お笑いライブの裏側などが丁寧に描かれており、ワタナベエンターテインメントの養成所に通った経験のある私は思わず当時を思い出してしまった。こういったシーンを描けるのは、養成所を経験した森田氏だからこそだ。

 さらに森田氏は、「SHIORI EXRERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん」の作者・長田悠幸氏と「漫画家」というコンビを結成。M-1グランプリ2018で準々決勝まで進出し、ベストアマチュア賞を受賞している。本職の芸人が勝ち残れない中、この結果が残せるのは、森田氏が本気でお笑い・漫才に取り組んだからではないだろうか。

学園の爆笑王がプロの世界へ…キーワードは「相方とは何か」

 主人公“学園の爆笑王”上妻圭右は、“元芸人の転校生”辻本潤と「きそばAT」を結成。実家の蕎麦屋を継ぐことを考えていたが、学園祭の漫才コンテストに出場したことをキッカケに、本気でプロの芸人を目指すことを決心する。芸人養成所では、学費免除コンテストでの優勝を目指し、親友の子安蒼太を加えたトリオ「べしゃり暮らし」を結成。1度は芸人としての楽しさに目覚めた子安だが、上妻・辻本の持ち味である“アドリブ”についていくことができず、自ら脱退し構成作家として2人を支えていくことを選択する。

 本作のキーワードの一つが“相方とは何か”だ。上妻と辻本は何度も衝突を繰り返す。子安の才能を認めトリオでの成功を確信する上妻、持ち味を活かすため子安の脱退を受け入れた辻本。時には殴り合い、互いの気持ちをぶつけ“コンビの絆”を深めていく。ほかにもさまざまな“コンビの形”が描かれており、特に先輩芸人「デジタルきんぎょ」の絆は涙なしでは語れない。それぞれの芸人が出した“相方とは何か”。その答えに芸人という職業の素晴らしさ、難しさを感じた。

©森田まさのり・スタジオヒットマン/集英社
©森田まさのり・スタジオヒットマン/集英社

実在芸人を思わせるエピソードの数々に“生き様”を感じた

 べしゃり暮らしの先輩に当たるコンビ「るのあーる」はキャリア1年目にして、あるあるネタで大ブレイクを果たす。実在する芸人「オリエンタルラジオ」らを思わせるスピード出世だ。しかし、るのあーるのボケ担当・梵健太は、トーク番組で結果が残せないこと、ブレイク後も続くギャラの安さにもがき苦しむ。有名な先輩芸人に「知人に頼まれまして」とサインを貰い、オークションで売って生活費の足しにしていた。芸人という職業にしがみつく若者の苦悩、こういったエピソードも芸人のリアルなのだ。

 ほかにも、正義を貫いたがゆえに業界を干されたコンビの逆襲、偉大な父を持つ2世芸人の苦悩、実在しそうな芸人のエピソードが描かれており、笑いに一切妥協しない登場人物たちに“芸人の生き様”を感じる。

 お笑い業界の暗いニュースが世間を騒がせている今だからこそ読んでもらいたい芸人漫画「べしゃり暮らし」。森田氏にしか描けない“芸人のリアル”を追求した本作品。“芸人の生き様”に触れることができるだろう。

(イシイ ヒデキ/Hideki Ishii)