前田敦子のド迫力演技がすごい 菊池風磨もビビったリアルなけんかシーンができた理由
女優の前田敦子(31)が“等身大の女性”を演じているのが、映画「もっと超越した所へ。」(公開中、山岸聖太監督)だ。クズ男を引き寄せてしまう女たちのリアルな苦悩と怒りを描く群像劇で、恋愛間違えがちな衣装デザイナーを演じた。
映画「もっと超越した所へ。」 クズ男を引き寄せてしまう女の苦悩と怒り描く群像劇
女優の前田敦子(31)が“等身大の女性”を演じているのが、映画「もっと超越した所へ。」(公開中、山岸聖太監督)だ。クズ男を引き寄せてしまう女たちのリアルな苦悩と怒りを描く群像劇で、恋愛間違えがちな衣装デザイナーを演じた。(取材・文=平辻哲也)
本作は、演出家・劇作家として活躍する根本宗子作品の初の映画化で、根本自身が脚本を担当した。クズ男沼にハマる4人の女性の姿を、前田敦子&菊池風磨、伊藤万理華&オカモトレイジ、黒川芽以&三浦貴大、趣里&千葉雄大のコンビで描いた。
前田が演じたのは、バンドマン志望の中学時代の同級生・怜人(菊池)と成り行きで同せい生活を送ることになった真知子。やや強引な怜人の言葉と行動に流されているが、次第に不満を募らせていく…。我慢を重ねた末のけんかシーンがリアルすぎる。
「ある意味、パーソナルな部分だけが描かれた作品だったので、どうしても本来の自分も多分混ざっちゃっているんだと思うんですよ。そんなくすぐったさがあって、自分のシーンは客観的に見られなかったです。怒るとか、けんかするとか、カップルのけんかって、嘘はつけない場所だと思うんです。勢いでバーッとしゃべっていくやり方・撮り方だったので自分と真知子はいい感じにミックスされてますね」
最初のシーンは監督が緻密に作ってくれたが、けんかから始まる怒涛のクライマックスは演者に任されていた。「監督自身がすごい楽しんで、(私たちの演技を)受け取ってくれた感じがしますね。『もっとやれ』みたいな感じでした」と振り返る。
夢を追いかけて、時に言い訳ばかりする彼氏を相手に、我慢を重ねるヒロインの気持ちはかなり理解できたとか。
「私は、言いたいことを我慢するタイプなんです。『ま、いっか』って思っているんですけど、それが実はたまっているんですね。それから間違っていると思った時は、とことん詰めるタイプ。それはすごく共感できました。(彼氏の考え方には)人生、そんなに甘くないぞと思ってしまいました。ただ、最後は感情論なんですよ。ただただ、(文句を)言い続けたいだけ。男性のみなさんはそんなふうに詰められたことありませんか。大抵の女の子はやったことあると思うんです。突然、寝ている隣に座って、喋りだすんです。それも静かに」
これまで演じてこなかった等身大の女性「新しい挑戦になった」
真知子は一見おとなしそうに見えるが、芯の強さを持った女性だ。「ほかの女の子たちはかわいげのある感じで怒っているんですけども、真知子は違うんですね。(菊池)風磨君は、本当にビビっていましたね。『このシーン怖い、怖い、イヤだ』って(笑)。」
真知子役は、これまであまり演じてこなかった等身大の女性で、「新しい挑戦になった」と胸を張る。確かに、前田の演技は素晴らしい。実家にパラサイトするグータラなヒロインを演じた「もらとりあむタマ子」(山下敦弘監督)以来かもしれない。
クランクアップ後の年末には、前田宅で海外に戻る黒川芽以の送別会を開催し、都合がつかなかった菊池以外の主要キャストが全員集合したそう。
「いつも仲良くなると、『絶対集まろうね』と言いながら、消えていくものなんです。『そういうのはイヤだよね、本当に集まろうね』と言っていたら、口だけじゃなくて、みんなが集まったんです。こんなことはほぼ初めて。みんな感動していました。パーティーみたいなことをしたいというので、お菓子を山ほど買って、ウーバーイーツでピザを取ったり、本当に楽しかったです。最近は、同年代の方々との仕事も増えてきたのですが、みんなで作っていけるのは本当にいいなと感じています」。劇中での役だけではなく、出演者との関係性も“超越”したものになったようだ。
□前田敦子(まえだ・あつこ)1991年7月10日、千葉県出身。AKB48 のメンバーとして活躍し、2012 年に卒業。女優として市川準監督の「あしたの私のつくり方」(07)で映画デビュー。11 年、映画「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」で初主演を飾る。近年の主な出演作に「くれなずめ」(21)、「DIVOC-12/睡眠倶楽部のすすめ」(21)、舞台NODA・MAP 第24 回公演「フェイクスピア」(21)、ミュージカル「夜の女たち」(22)など。また、WOWOW で放送・配信をする「アクターズ・ショート・フィルム2」で短編映画の監督を務める。