山口めろん、音痴「気にしない」 ボイトレの先生から「もう通わなくていい」言葉も前向くワケ
音楽専攻で絶対音感の持ち主なのに、歌は音痴。そのギャップで話題なのがタレントの山口めろんだ。ピアノはテレビ番組で優勝するほどの腕前なのに、弾き語りになると、なぜか歌の音程が外れまくり。だが、視聴者からは「クセになる」と評判だ。本人に歌について聞くと、音痴エピソードが出るわ、出るわ…。11月2日に1年ぶりの2ndシングル「君にメロン」を発売する山口の素顔に迫った。
音痴が「クセになる」と話題 下積み時代のエピソード
音楽専攻で絶対音感の持ち主なのに、歌は音痴。そのギャップで話題なのがタレントの山口めろんだ。ピアノはテレビ番組で優勝するほどの腕前なのに、弾き語りになると、なぜか歌の音程が外れまくり。だが、視聴者からは「クセになる」と評判だ。本人に歌について聞くと、音痴エピソードが出るわ、出るわ…。11月2日に1年ぶりの2ndシングル「君にメロン」を発売する山口の素顔に迫った。(取材・文=水沼一夫)
山口は3歳のときに両親の勧めでピアノを始めた。中高一貫校では琴部に所属。高2で部長を務めた。そして大学は、日本大学芸術学部音楽学科ピアノコースに進学。アイドル活動の後、2018年にフジテレビ系「芸能界特技王決定戦TEPPEN」ピアノ部門で優勝し、一躍名をとどろかせた。
絶対音感の持ち主ゆえに、悩みもある。「音楽をBGMにすることができないですね。カフェに行ったとき、BGMで音楽が流れていると、ドレミで頭に入ってきちゃうので友達と話していても気が散っちゃいます。寝る前に音楽を聞いて寝るとかもできないですね。逆に脳が働いて目が覚めちゃうので」。さらりとアーティスト肌をのぞかせるが、そんな雰囲気を木っ端みじんに砕くのが歌唱力だ。
山口自身が音痴と気づかされたのは、大学入試の準備をしているときだ。
通常、音楽大学の試験では初見で歌を歌う「新曲視唱」というテストがある。
「私の学校は他の学校と違って新曲視唱がなかったんです。それを参考にしながら選んだというのもありました。自分では納得いってなかったんですけれども、音大受験のために地元の先生がいろいろ教えてくれたりレッスンしてくれたときに、『ちょっと初見で歌うというのは苦手かもしれないね』と言われてたので、そうなんだと思っていました」
入学後ははっきりと分かる出来事があった。
「歌の授業があったんですよ。小ホールで定期的に1人ずつ前に出て歌わなきゃいけない授業なんですけれども、そのときに私が前に出て歌うと、みんなムービーとか撮り始めるんですよ。『面白いから撮らせて』と言って、みんなが撮っていて。その授業は、写真学科の人とか演劇学科の人とか音楽専攻以外の人も取れるんですね。だからなんで撮られるんだろうってそのときは思っていました」
19歳からは並行してアイドル活動も始めた。メンバーは8人ほどのガールズグループだった。
しかし、そこで山口は“異例の扱い”を受ける。
「普通に歌っていたつもりなんですけれども、私だけダミーマイクだったんですよ。8人メンバーがいて、私だけはいつも専用のマイクがある。なんで私いつも決められているんだろうと思ったけど、それものちのち気づきました。電池とか入ってなくて、すごく軽いマイクだったので、そういうことだったんだと」
「本当に頭おかしくなる」 2ndシングルエンジニアの苦悩
そして決定的だったのは、23歳から住み続けている自宅アパートの隣人の反応だった。山口の部屋にはピアノが置いてあるものの、防音設備はなかった。練習のため、ピアノで弾き語りをすると、壁の向こうから妙な声が聞こえた。
「部屋は楽器OKなんですけど、防音じゃないから、めちゃくちゃお隣さんに音が漏れてしまっていて。それで私が弾き語りすると、お隣さんから笑い声が聞こえるんですよ。自分が歌下手なんだな、ということにちゃんと気づいた瞬間ですね」
その弾き語りをYouTubeに公開すると、そこでも「面白い」「すごい独特の歌声だね」との反応があった。同時に、歌と伴奏のアンバランスさに魅了されるファンが続出。レコード会社の目に留まり、昨年11月にCDデビューを果たす。今やピアノでの活躍以上に、注目を浴びる存在になっている。
2ndシングル「君にメロン」は自ら作詞・作曲を手がけ、ジャケットデザインまでプロデュースした意欲作だ。表題曲の「君にメロン」は書き下ろしの新曲。「歌詞にいろんな品種のメロンの名前を入れているので、この曲を聞くといろんなメロンが覚えられるよという歌になっています。明るくてポップな感じなので、フルーツ屋さんとかスーパーで流れてほしいですね。子どもたちにも歌いやすいメロディーにしています」
CDには音程が正確な「君はメロン」正解バージョンも入っている。これについて、山口は「元々歌っている1曲目に入っている歌をエンジニアさんが全部音程直してくれた感じです。なんか1か月ぐらいかけて『本当に頭おかしくなる』って言いながら全部直してくれました」と裏話を明かした。
カップリングには山下達郎の名曲「クリスマス・イブ」のカバーを収録。これも聞き慣れたあの曲調とはまるで違う歌に聞こえてしまう。あまりに個性的な歌声は、一度聞くと耳からは離れない。
大学時代は劣等生 “メロン界のアイドル”の大きな夢とは
大学時代、ピアノの腕は「中の下ぐらい」。優等生ではなく、どちらかと言えば、劣等生だった。それがTEPPEN優勝で脚光を浴び、人生の風向きを変えた。「だから先生もびっくりしていました。『やればちゃんと弾けるじゃん』みたいな感じで。友達にも『こんなにピアノ弾けたんだね』って言われましたね」
次なるブレークは弾き語りで狙っているが、歌がうまくないことで落ち込むことはないのだろうか。
山口は「特にあんまり気にしてないですね。クセになるよとか面白いねって言ってくれる人はすごくありがたいし、共感してくれる人もたくさんいます。『私も絶対音感があって、絶対音感があるからこそちょっとピアノにつられて音痴になっちゃうので気持ち分かります』みたいなコメントもたくさん来るので。そういう人もたくさんいるんだって思ってうれしくなったりします」と話す。
歌もピアノも同じ音楽だ。
「弾き語りしているときは本当に気持ちよく歌って世界一歌がうまいって思いながら弾き語りをしているので、周りがどういう反応とかはそこまでは気にせず、自分が歌いたいから歌って満足してるって感じです」
少しでもうまくなろうとボイストレーニングにも通った。先生からは、「もうあなたはそのままでいいから。もう通わなくていいよ」と言われた。山口は「なんか遠回しに来ないでって言われたのかなとも思いつつ、でもあなたはそのままでいいって言ってくれたので、アーティストとしてはそれはうれしいなって思いました」と前向きに捉えている。
歌手としての目標もでっかい。「歌番組とか出てみたいです。Mステと紅白に出たいですね」。異能を発揮する“メロン界のアイドル”が歌唱界を席巻する日はやってくるのか。
□山口めろん(やまぐち・めろん)11月4日、兵庫県豊岡市出身。3歳からピアノを始める。高校3年時にヤマハヤングピアノコンテスト金賞。日本大学芸術学部音楽学科ピアノコース卒業。趣味は弾き語り、ラジオを聴くこと、漫画や絵を描くこと、ゲーム。特技はピアノ逆再生弾き。2018年「芸能界特技王決定戦TEPPEN」ピアノ部門優勝。茨城県八千代町観光大使。
◆YouTube「山口めろんちゃんねる」
https://www.youtube.com/channel/UCbjgleVuLMXqVCkb_xg_icA