eスポーツが百貨店の景色を変える 伊勢丹新宿店の画期的な試みを徹底追跡

伊勢丹新宿店が8月7日から12日まで「ISETAN e-sports フェスタ」を開催している。会場は本館6階の催物場で、伊勢丹がeスポーツのイベントを催すのは初めて。人気上昇中のeスポーツが百貨店の景色を変えようとしている。

板橋ザンギエフ氏(右)とまちゃぼー氏が参戦
板橋ザンギエフ氏(右)とまちゃぼー氏が参戦

デパートの一角に複数のゲーム機…異業種コラボのイベントで「新しいファンを取り込む」

 伊勢丹新宿店が8月7日から12日まで「ISETAN e-sports フェスタ」を開催している。会場は本館6階の催物場で、伊勢丹がeスポーツのイベントを催すのは初めて。人気上昇中のeスポーツが百貨店の景色を変えようとしている。

 そこに慣れ親しんだ光景はない。デパートの一角には複数のゲーム機が置かれ、画面に向かう多くの観客たちの歓声が響いた。

 かつて、百貨店の催事場といえば、物産展や四季折々のイベント、中高年向けの企画が多かった。それが、なぜeスポーツになったのか。

 イベントを企画した伊勢丹新宿店の阪口伸也氏は次のように語る。

「時代が変わってきた。AIが発達してきてとか、いろんなことが目まぐるしく日々、変わっている。そんな中で、eスポーツというものも国体の文化プログラムになった。欧米では賞金総額が30億を超えるプロゲーマーの大会があったり、10代で3億を稼ぐ選手も出てきている。今までのプロ野球選手みたいな、あるいは、それ以上のプロでのレベル、賞金獲得も出てきている。ただ、日本では上限が1000万とかというレベルで、まだまだこれからのもの。ファッションということだけではなくて、世の中のいち早い動きだったり、トレンドを取り込んで、お客様に提供していく。その一つの試みとして今回、eスポーツを取り入れました」

 背景には業界を取り巻く強い危機感がある。

「イベントを異業種と共有することで新しいファンを取り込む」

 経済の停滞やネットショッピングの発達により、顧客の百貨店離れが叫ばれて久しい。流行に敏感な若者への訴求は課題の一つだった。

 そこで白羽の矢が立ったのが、eスポーツだった。競技のすそ野を急速に拡大させ、30代以下、特にミレニアル世代の認知度は抜群だ。「これから食い込んでいかないといけないのがミレニアル世代」と阪口氏。伊勢丹が描く新規顧客獲得のための戦略と、eスポーツが持つ強みがピタリと一致した。

 企画を立ち上げたのは昨年秋。伊勢丹新宿店には玩具売り場はあっても、ゲーム機は売っていない。すべてが手探り状態から始まった。

 試行錯誤する中で、常に胸にあったのは「毎日が新しいファッションの伊勢丹の原点回帰」という伊勢丹新宿店のスローガン。阪口氏は「イベントもファッション」と位置づけ、新たな流れを作る施策に挑戦した。

オープニングにはケンドーコバヤシ(中央)も登場
オープニングにはケンドーコバヤシ(中央)も登場

異色コラボをプロゲーマーも歓迎

 イベントに参加したeスポーツ選手たちも、異色のコラボを歓迎した。

 DetonatioN FIGHTING GAMES所属の板橋ザンギエフ氏は「伊勢丹でやるっていうのは『おーっ』というものがありましたね。マダムとかが買い物に来るようなイメージの場所だった。ゲームは言ってしまえば、もともとアンダーグラウンドのもの。こういう場所でやらせてもらえるのは、少しずつ認知されているんだなというのと、一応、勝った負けたで切磋琢磨しているっていうのは認められつつあるんだなっていうのはひしひしと伝わってくる」と話す。

 吉本興業株式会社のeスポーツプロチーム「よしもとゲーミング」所属のまちゃぼー氏も「伊勢丹でやらせていただくっていうのは本当に光栄な話。あまりこういった場所でやるようなものではなかった。すごく嬉しい」と声を揃えた。2人は「STREET FIGHTER Ⅴ ARCADE EDITION」のエキシビションマッチで対戦し、イベントを盛り上げた。

 初日にトークショーを行った一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)副会長の浜村弘一氏は、伊勢丹でのイベント開催について「想像もしなかった。eスポーツって割と若い人はみんな知っているんですけど、ちょっと上の方々はほとんど認知していない。(競技の魅力を)違う客層に伝えられるのはありがたい」とeスポーツ側にもメリットがあると強調。イベント開催中の後半3日間は、茨城国体で文化プログラムとして初めて実施される全国都道府県対抗eスポーツ選手権の「グランツーリスモSPORT」関東代表決定戦も行われる。eスポーツは2022年にはアジア大会でも正式採用される。「eスポーツを好きな人たちは、ネットを介して見てる人が多い。そうじゃない人に届けられる時に、ジャンプアップしていくと思う。eスポーツの認知拡大のためにも国体、オリンピック、アジア大会はすごく大事にしていきたい。ここ(伊勢丹)もそうですね。eスポーツを知らない人たちが(eスポーツに)触れるチャンスを作っていただけるっていうことがすごく大事」と力を込めた。

 阪口氏はイベントの継続について「結果を踏まえて次回どうするか検討していきたい」と言葉を選びながらも期待を寄せた。