【舞いあがれ!】高畑淳子、脚本は「読むたびに胸が詰まる」 五島ことばが紡ぐ感動とは
女優の高畑淳子が、ヒロイン・舞の祖母役で出演しているNHKの連続テレビ小説「舞いあがれ!」(毎週月~土曜、午前8時)について、出演が決まった際の感想や演じる役の印象、共演者の印象などを語った。
舞の祖母・才津祥子を演じる
女優の高畑淳子が、ヒロイン・舞の祖母役で出演しているNHKの連続テレビ小説「舞いあがれ!」(毎週月~土曜、午前8時)について、出演が決まった際の感想や演じる役の印象、共演者の印象などを語った。
物語は女優の福原遥が主人公・岩倉舞を演じ、東大阪や長崎・五島列島を舞台に、舞がパイロットになる夢など空への夢を見つけて奮闘する姿を描く。
高畑演じる才津祥子は、五島列島に住むめぐみの母親で舞の祖母。漁師だった夫が亡くなったあと、女手ひとつでめぐみを育てた。なんでも自分でやって、自分の力で生きていくことをモットーにしている。めぐみとは折り合いが悪いが、孫の舞にとっては良き理解者となるという役どころだ。
本作への出演が決まった際は「そりゃあもう、うれしかったです」として、オファーが届いたときを振り返った。
「『こういう役があるんだけど』と話をいただいてから、『どうなるかわかりませんけど、少し待ってください』と言われて何週間か待ちました。何人か候補がいらっしゃるんだろうなと思って、オーディション気分で待ちました(笑)。私たちの時代は“朝ドラ”が登竜門で、私も何度受けたかな。4回ぐらい落ちましたね。そういう若い時の記憶があるぐらいなので、とってもうれしかったです」
演じる役柄について「祥子は五島にある海の資源と陸の資源を無駄なく使って無駄なく生きる、SDGsを難しい理屈なしに当たりのこととして、おおらかに実践している人です。自分の娘と大げんかして14年も会っていないなど頑固なところもありますが、空を見て、海を見て暮らしている人の強さがあり、発する言葉に深みがあります」と理解する。
舞台となる五島列島の言葉だからこそ伝えられる感動があるのだという。
「五島ことばが難しかったので、練習をしながら何度も何度も読んでいると、気づくとティッシュの山ができているほど、涙が止まらないんですよね。例えば、『変わりもんば、変わりもんとして堂々と生きたらよか。周りに合わせんでよか。自分ば知っとる人間が一番強かけん』という台詞(せりふ)があるのですが、これも五島の言葉で言うからいいんでしょうかね。標準語で『自分を知ってる人間が一番強いからね』とか言われても、“カッチーン!”となるかもしれませんよね。海の潮の流れや、空の気候など、あらがえない自然と共に生きている人の言葉だからでしょうね」
作中、祥子は亡き夫とともに乗っていた船をひとりで守って暮らしていた。高畑自身との共通点はあるのだろうか。
「船の免許は持っていません。撮影のために二階建てで運転できる船を探してくださったんです。本当は上で運転しているけど、私が運転しているように見える船で撮影したんですが、海面すれすれのところを走るので、座っているすぐ横に波が走っていくのが見えて、本当に気持ちよかったです。五島は本当にきれいでした!」
ヒロイン演じる福原遥は「まさに適役」
本作のテーマや魅力を語るうえで、特に注目しているのは脚本なのだという。
「いまの世の中はとても生きづらいと感じる人が多いと思いますが、この作品には、もう少しうまく楽に生きられるはず、もっと違う観点があるのではないか、といった問いかけが込められていると私は思います。脚本家のお一人の桑原亮子さんが、中途失聴による重度の聴覚障害がおありだと知り、だから言葉を紡ぐというなりわいに、ご自身のいろいろなことを詰めておられるのだなと思いました。台本を読むたびに、胸が詰まるような気持ちになったんです。いろいろことにぶつかりながらも生きなければならないことを体感なさっている方なんだなと思いました。人生っていろいろなことにぶつかりながらも生きていかなければならないもの。“朝ドラ”は『今日もがんばるぞ!』と思ってもらうような役割もあるんだろうなと思いました」
共演するヒロインの福原について「別のドラマでご一緒したんですが、肌も透けるようで本当におきれいで。舞ちゃんという人が抱えている繊細さと、気を遣いすぎたり、人のことを背負いすぎたりというところなど、福原さん自身が、常にそういう気配りできる優しさがあるので、まさに適役だと思います」と絶賛する。
東大阪や五島列島を舞台にした本作ならではのポイントも明かす。
「五島の美しい夕日や海辺などの日本の旅情的な景色と、人々が忙しく働く東大阪の町工場という正反対の場面が出てきます。“朝ドラ”は歴史上の人物が出てきて流れを感じたり、その時代を回想したりしながら見るのが好きなのですが、同時に『人間の根幹はここにある』ということを感じ取っていただける作品ではないかと思っています。ストレスが多い現代ですが、見る角度を変えれば、親子の問題を含めて氷解することもあります。何か目線が変われば、顔を上げて生きていける。そういう力になれたらと思います」
最後に役者としての矜持ものぞかせながら、「私達は畑を耕しているわけでも、お米を作っているわけでもありませんが、演劇やお芝居は、そういう面でのお肉を作っていると思うのです。人の気持ちを強くできるというのが、テレビや舞台のいちばんの仕事だと思います。視聴者の方に、気持ちが強くなっていただけたらうれしいです」と意気込んだ。