不登校、母と「ボッコボコ」けんか…救ってくれたのはSNS 10代人生相談で話題・19歳ひかりんちょの素顔
「10代を代表する代弁者」として、テレビやイベントに引っぱりだこの“Z世代”女性タレントがいる。ひかりんちょ(19)だ。「居場所を見つけた」SNSでスカウトされ、今やSNS総フォロワー数160万人超で、悩み相談にもアドバイスを送るティーンが憧れる存在に。過去には中学時代の不登校や母親への反抗期を乗り越えた「ありのまま」を大事にする生き方に迫った。
Z世代タレント「ひかりんちょ」 小6でSNS開始、16歳で初のエッセー本、NHK福祉番組でも話題
「10代を代表する代弁者」として、テレビやイベントに引っぱりだこの“Z世代”女性タレントがいる。ひかりんちょ(19)だ。「居場所を見つけた」SNSでスカウトされ、今やSNS総フォロワー数160万人超で、悩み相談にもアドバイスを送るティーンが憧れる存在に。過去には中学時代の不登校や母親への反抗期を乗り越えた「ありのまま」を大事にする生き方に迫った。(取材・文=吉原知也)
ブラジル人の父と日本人の母の間で生まれ、現在は義父と実母と暮らす。きょうだいは4人で、弟と2人の妹を持つ長女だ。小学3年のクリスマスにスマホを与えてもらい、小6でSNSを始めた。中学に入ると、ミクチャやTikTokに投稿するように。次第に注目を集め、中1の時には学校の先輩や後輩が「冷やかし」にクラスに来ることもあった。だが、中2の時に人生の転機が訪れる。もともと人間関係や友達作りが得意ではなかったが、「中2でクラス替えがあって、そこでなじめなくなりました。学校では友達がいなくて、家では反抗期でお母さんとけんかして。妹たちの面倒も見なくなって…。自分の居場所がなくなっちゃったんです」。学校に行けなくなった。
救ってくれたのはSNSだった。音楽に合わせて口を動かすリップシンクや踊りの投稿から始め、不登校になった頃から本格的に取り組んだ。「ちょっと学校には行ってないけどこうやって頑張って生きてますといった状況や日々の感想を発信したり、共感を求めるような投稿をしたりしていました」。中2の時に当時の所属事務所からDMでスカウトの連絡が来て、早くも芸能界への扉が開いた。
中3になると落ち着き始め、昼に給食だけ食べに来られるようになったが、不登校はその後もずっと続いた。今振り返ると、「学校で青春するのもよかったなとは思うのですが、できないものはしょうがないかな。自分の居場所が学校だけじゃないということが分かったのは、私としてはいい経験でした。ひかりんちょに必要な経験だったと思っています」。
それに、家族とも仲直りができた。ただ、母親とけんかしていた当時はなかなか激しかったようで、「一番ひどかったのは中2の冬だったのですが、2人で殴り合い。互いのストレスをぶつけるように、もう2人ともボッコボコで。私は眼帯を付けることになりました」。それ以来けんかはしていないといい、今では母親とべったり。「一緒にお出かけもしますし、お昼寝もしています(笑)。何が起きても何でも話すことができる、お母さんはそんな大事な存在です」と笑顔を見せた。
16歳の時に初のエッセー本を出版。飾らない言葉で、周りに流されずに生きる自身のことをつづった。17歳で「10代のお悩み相談」がテーマの2冊目の著作を発表。反響を呼び、同世代を中心に親世代、教育関係者の注目を集めることになった。福祉番組に登場する機会が増え、夏休み最終日に合わせた「生きるのがつらい10代のあなたへ」をテーマにしたNHK番組に出演。10代の悩みを取り上げるEテレ番組のMCを務めるまでになった。10代の“駆け込み寺”として存在感を高めている。
「相手への共感をすごく大事にしていて、『あなたは1人じゃないよ』というメッセージを伝えています」
キュートなルックスを生かしてファッションイベントでもおなじみの存在に。仕事との両立で今春、高校を卒業した。それでも、新型コロナウイルス禍が影を落とした。「よくイメージされるJKではなかったですね。高校でも友達ができなかったので(笑)。それに、コロナ禍とかぶってしまい、修学旅行に行けず、行事はほとんどなかったです」と明かす。コロナ禍の高校生活を送った当事者として思うことがあるという。「コロナ禍がひどかった時期は、『10代が元凶だ』みたいな言われ方をされていたと思います。若者は遊び回っていると思われてしまい、大人との亀裂みたいなものを感じました。でも、私たち10代は行動制限をする意味を理解していましたし、人目を気にして、羽を伸ばす機会はあまりなかったんですよ」。いいこともあった。静岡の実家暮らしで、家族でBBQやカードゲームを楽しみ、より絆が深まった。SNS利用が盛り上がったことで、10代のファンだけでなく、大人にも自身のSNSに触れてもらう機会が多くなったという。
情報化が進み、複雑性の増す現代を生きる10代のインフルエンサー。常に、前を向いて楽しく生きようというメッセージを発信し続けている。思春期の真っただ中でもがき苦しむ同世代の「生きるのがつらい」という相談にはどう答えているのか。
「まず、私は相手への共感をすごく大事にしていて、『あなたは1人じゃないよ』というメッセージを伝えています。そのうえで、言葉が悪いと捉えていただきたくないのですが、もし、自分の中でため込み過ぎるぐらいだったら、『死にたい』と口に出してもいいんじゃないかなと思っています。その言葉を口に出すことによって発散できることもあるのかなと。私自身はどん底まで落ちるタイプで、死にたいと思ったこともあります。でも、『今死んだらまだ経験していないことがいっぱいある。バンジージャンプできてないし』と考えたら、もっともっとやりたい細かいことがどんどん出てきて、ネガティブな思いはなくなっていきました。相談を受けた場合は、例えば『もし今死んだら遺影がかわいくないよ』といったこと、そういうちょっとでも心残りがあるんだったらもうちょっと生きるのはどうかな、といった答えをするようにしています。『最後に世界旅行してみれば?』と言うこともあります。自分がまだやってない楽しいことはいっぱいあるんだよ、何か小さなことでも生きる理由を見つけてみたら。そんな投げかけをするようにしています」
ネクストブレークの存在はさらなる飛躍を思い描く。「誰かを助けるため、誰かの力になれるような活動をメインでやっていきたいです。そのためにも、テレビのバラエティー番組にも挑戦して、より多くの方々に私のことを知っていただきたいです」と力を込めた。
□ひかりんちょ 2003年7月14日、静岡県出身。SNS総フォロワー数160万人超。エッセー「ありのままの私を受け入れずに批判する奴には、心の中で中指立てればいい」(KADOKAWA)など2冊刊行する傍ら、自動車メーカー「ダイハツ工業」など宣伝プロデュース業、日本最大級のファッションの祭典と名高い「TGC」参加など注目を集めている。