混雑時におけるベビーカー論争、メーカーに聞いたら意外な回答 「畳まずに使用して」
電車やバスの中でのベビーカーの利用をめぐる議論が、SNS上で度々話題となっている。混雑した車内ではベビーカーの折り畳みを求める声も多いが、メーカーはこの問題についてどのように捉えているのか。ベビー用品メーカー大手のコンビ株式会社に、公共交通機関におけるベビーカーマナーの見解を聞いた。
SNS上で度々議論となる、公共交通機関でのベビーカーのマナー
電車やバスの中でのベビーカーの利用をめぐる議論が、SNS上で度々話題となっている。混雑した車内ではベビーカーの折り畳みを求める声も多いが、メーカーはこの問題についてどのように捉えているのか。ベビー用品メーカー大手のコンビ株式会社に、公共交通機関におけるベビーカーマナーの見解を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
軽量モデルやコンパクトモデル、外出先で食事がしやすいハイシートモデルなど、さまざまなラインアップがそろう国内ベビーカー市場。居住スペースが広く収納に困らないため大型の製品が一般的な欧米に対し、日本では住宅事情を鑑みて軽量コンパクトなタイプが主流となっており、ほとんどは駅の改札を通れるよう幅55センチ以下に設計されているという。さらに、多くのモデルで折り畳み機能が搭載されているものの、本来は電車やバスの中で折り畳むための機能ではないとコンビの担当者はいう。
「ベビーカーの畳める機能は、あくまでも自宅で使わないときの収納目的でつけられたもの。公共交通機関での折り畳みについては、安全管理の面からも、畳まずに使用してほしいというのがメーカーとしての回答になります。片手で操作しやすいように進化はしてますが、出先で勝手に畳まれてしまうことがないよう、ロックやバーは二段階式に作っています。公共交通機関でのマナーについては、日本製品の折り畳み機能が優れているがゆえに議論に発展するのではという複雑な思いもあります」
メーカーとして正しい用途を発信しているものの、混雑した車内では畳むのがマナーという誤った認識が浸透しているのが実情だ。そんな世間の見方もあり、購入者からの需要という面でも、なるべく周囲の邪魔にならない小さいモデルを求める声が多いという。
「本来、ベビーカーは外的要因からお子様を守るために大きめに作られており、タイヤなども大きい方が段差を乗り越えたり衝撃を吸収する上で効果的なんです。しかし、周囲の目を気にしてなるべく小さい製品を求める声は多いですね。弊社の最新モデルでも、奥行を従来品より15%短い86.5センチまで縮小し、ママパパが電車の座席に座った際に、座席2人分の幅からはみ出さないサイズとしています」
昨年2月には、JR湖西線の志賀駅で駅員が階段からベビーカーを運ぶ手伝いをしていたところ、乗っていた乳児が誤って落下。頭の骨を折る痛ましい事故もあった。周囲がベビーカーを押す母親を手伝うときには、どのような注意が必要なのか。
「ベビーカーにお子様を乗せたまま持ち上げる行為は、メーカーとしては禁止事項にしています。仮に落下防止のベルトをしていたとしても、月齢によっては首が座っていないこともあり、安易に行うことは危険。ベビーカーは構造上、乗った状態で持ち上げることを想定して作られておらず、フレームのゆがみや別の事故につながる恐れもあります。コロナ禍でお子様に触れられることに神経質になっている方もいる。まずはお声がけしたり、他の荷物を持ってあげたりなど、接触を避けたお手伝いをお願いできればと思います」
土地の広さや人口密度の問題あり、なかなか子育てへの理解が進まない日本。一人ひとりがゆとりを持って、あたたかく子育てを見守れるような環境作りが求められている。