中村獅童、歌舞伎界の今後に危機感「大切なものは守って、そうじゃないものは変わっていかないと」
今年で50歳を迎えた歌舞伎俳優の中村獅童。古典作品の出演はもちろんのこと、絵本「あらしのよるに」(作・きむらゆういち/絵・あべ弘士/講談社刊)の新作歌舞伎化や、初音ミクを中心としたバーチャルシンガー(ボーカロイド)とコラボした超歌舞伎など、新たな取り組みにまい進している。去る9月21日、獅童は巡業公演「松竹特別巡業『中村獅童のHOW TO かぶき』『絵本 あらしのよるに 一人語り』」(11月9日~23日)のオンライン取材会に出席。取材会では、質疑応答終了後に獅童自ら「雑談しません?」と会を延ばし、今後の歌舞伎界への思いを語ってくれた。
若手や弟子たちにもチャンスを「その中からスターを作ることも大事」
今年で50歳を迎えた歌舞伎俳優の中村獅童。古典作品の出演はもちろんのこと、絵本「あらしのよるに」(作・きむらゆういち/絵・あべ弘士/講談社刊)の新作歌舞伎化や、初音ミクを中心としたバーチャルシンガー(ボーカロイド)とコラボした超歌舞伎など、新たな取り組みにまい進している。去る9月21日、獅童は巡業公演「松竹特別巡業『中村獅童のHOW TO かぶき』『絵本 あらしのよるに 一人語り』」(11月9日~23日)のオンライン取材会に出席。取材会では、質疑応答終了後に獅童自ら「雑談しません?」と会を延ばし、今後の歌舞伎界への思いを語ってくれた。(取材・構成=コティマム)
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この日は京都・南座で「超歌舞伎」公演を終えてオンライン取材会に出席。超歌舞伎は若い世代に大人気だったといい、「みんな『うわーっ!』って大盛りあがり。この前なんて、『し・ど・う! し・ど・う!』って獅童コールが起きて、俺はプロレスラーなんじゃないか? って思うくらい」と劇場の興奮を振り返った。
「みんなに『きゃー!』って言われているけど、おとといなんて、(公演後に)四条大宮の『餃子の王将』に並んでいましたからね(笑)。30分並んで餃子食べて。それが現実と虚構ですよ(笑)」
獅童は超歌舞伎や新作歌舞伎を通して、若い世代や子どもたちに歌舞伎を伝えている。50歳を迎え、「若い方や子どもたちに歌舞伎を知っていただく。これがやっぱり、自分の人生をかけてこれからもやっていくこと」と語った。また「この間、松竹の社長と今後の歌舞伎界のことを話す機会があって」と明かし、「社長もいろんなことを考えていらっしゃるということがわかりました。大切なものは守って、そうじゃないものは変わっていかないといけないと思う。じゃないと、お客さんは離れて行っちゃう。歌舞伎界は大変な時代に突入していると危機感を持っている」と吐露した。
「昔は『忠臣蔵』でコントができた。それは昭和時代のお客さんがストーリーを知っているから。あるエピソードで涙が流れたとして、それ(涙を流す理由)が分かる理屈が歌舞伎にはある。でも若い子たちは時代も環境も違うし、そういう感情が分からない。未来を考えると、10年後、20年後を見据えないとだめ。だからこそ、子どもたちにメッセージを発信している」
若手や弟子たちにもチャンスを与えたいという。超歌舞伎では弟子たちがメインキャストを演じる「リミテッドバージョン」がある。「社長にも言ったんですが、腕のあるお弟子さんがたくさんいるので、その中からスターを作ることも大切。もちろん、お父さんの代から応援していて、『その子どもがお父さんと同じ役をやるのを見てみたい』というのも、歌舞伎のいいところ。それと同時に、努力していて光っているお弟子さんにチャンスを与えることも大事。そうなっていくと、歌舞伎通の人も『変わってきたな』って思うんじゃないかな」と思いを語った。
「リミテッドバージョンは、お弟子さんに勇気や希望を与えられる。『おれたちも頑張ったら主役やれるのかな』って。僕らだけでなく、お弟子さんたちも含めて、みんながイキイキと心を込めて感じるものがないと、ますます若者のハートには届かないのかな」
10月は古典で初役 息子・陽喜くんと共演 12月は南座の顔見世も
新たな取り組みに熱心な獅童だが、もちろん古典も大切にしている。10月5日から始まる「平成中村座」では、古典の「極付幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)」に出演し、主人公の長兵衛を演じる。また同作では4歳の息子・小川陽喜くんも長兵衛の息子・長松役で出演する。
獅童は「長兵衛は初役で演じます。せがれが長松をやるんですが、とにかく本当に歌舞伎が好きで。ずっと家でも歌舞伎ごっこして、幡随長兵衛の稽古も自主的にやっています」と明かした。
さらに12月には、京都・南座「吉例顔見世興行」で歌舞伎三大名作のひとつ「義経千本桜」の「すし屋」に出演。主人公のいがみの権太を演じる。「顔見世」は江戸時代の11月に役者の顔ぶれが1年に1回変わったことから、新しい顔ぶれをお披露目する当時の年始興行だった。現在は10月に名古屋・御園座、11月に東京・歌舞伎座、12月に南座で行われ、東西の人気役者が集結する。この中でも南座の顔見世は最も歴史が古い。
獅童は、「20代後半の頃、まだまだ並びの端役しかいただけない頃に出ていた京都顔見世で、今回は自分の出し物をさせていただく。そちらの演目(すし屋)も古典」としみじみ語り、「新作をやっているときの中村獅童、古典をやっているときの中村獅童。そこで新作と古典の違いも見せたいし、その違いも楽しんでいただきたい」と意気込んだ。
オンライン取材会を20分以上延長し、歌舞伎への思いを語った獅童。「今日は何食べよっかな。家族も東京に帰っちゃったし。今日は『餃子の王将』はやめて、ホテルに帰ってせりふを覚えなきゃ」と、笑顔で締めくくった。