【電波生活】「ガイアの夜明け」が取材する人とは 番組P「目の前の仕事の手を抜かず懸命に必死」

注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はテレビ東京系経済ドキュメンタリー「ガイアの夜明け」(毎週金曜、午後10時)。2002年の放送開始から20周年を迎えた。02年は銀行再編など日本経済の先行きが不透明な時代だった。番組は経済再生を目指して奮闘する人々を追ってきたが、コロナ禍に加え円安も進む今も同様に厳しい経済環境にある。今、番組の果たす役割や20年見続けてきた日本経済を支える人々の共通点、さらに取材現場の変化などをチーフ・プロデューサーの鈴木嘉人氏に聞いた。

「ガイアの夜明け」の案内役を務める松下奈緒【写真:(C)テレビ東京】
「ガイアの夜明け」の案内役を務める松下奈緒【写真:(C)テレビ東京】

案内役の松下奈緒は取材能力も抜群 取材相手から「自然に話を引き出されたよ」

 注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はテレビ東京系経済ドキュメンタリー「ガイアの夜明け」(毎週金曜、午後10時)。2002年の放送開始から20周年を迎えた。02年は銀行再編など日本経済の先行きが不透明な時代だった。番組は経済再生を目指して奮闘する人々を追ってきたが、コロナ禍に加え円安も進む今も同様に厳しい経済環境にある。今、番組の果たす役割や20年見続けてきた日本経済を支える人々の共通点、さらに取材現場の変化などをチーフ・プロデューサーの鈴木嘉人氏に聞いた。(取材・文=中野由喜)

「番組の過去の映像を見返すと、いろんな場所にカメラが入り、企業のトップにも密着取材ができていました。それがコロナ禍で密着取材は非常に厳しくなりました。それでも番組は『必ず夜明けはやってくるんだ』というメッセージ込めて作り上げています。番組を見終わった後に『見て良かった』『希望はある』『勇気や力をもらった』と思ってもらえるような内容です。この番組が今の厳しい経済環境の中でも、灯りをともすことを目指しています」

 番組は厳しい経済環境にもたくましく生きる人を主人公に据えて取材し放送してきた。20年で取材した主人公に共通点はあるのか。

「会社組織の一員であろうが起業家であろうが、目の前の課題、目の前の仕事に全力で取り組む姿が、僕らがカメラを回して主人公として密着しようということにつながっていきます。その人たちの生き方から学べるのは、目の前の仕事の手を抜かず懸命に必死にやっているところ。共通していると感じます」

 日本人らしさを感じることもあるようだ。

「会社、仕事に日本人は悪く言うとすべてをかけてしまいがち。つまり家庭を犠牲にするとか。ただ良くも悪くも日本人は仕事にまじめに向き合っていると感じます。ライフワークバランスと言われますが、日本人の特徴としては仕事に非常にまじめに向き合っています。今は家族との時間を大事にする意識もだいぶ変わってきているとは思います」

 そもそも番組で主人公となる企業人をどうやって見つけているのだろうか。

「いつもアンテナをはっているのは各企業が今、何で注目されているのかとか、その企業の新商品や戦略、業績などです。さまざまな記事も参考にしますが、そこで選んだ相手先に出向き、広報の方や相手を直接、何が取材できるかを徹底的に話します。こちらの番組の意図、テーマをしっかり伝えること。主人公となるような方がいるか相談し、この人がふさわしいとご提案いただくこともあるし、こちらが探すこともあります。この最初の話し合いにしっかり時間をかけます」

 制作陣の苦労など舞台裏の様子も聞いてみた。

「人に密着するのが『ガイアの夜明け』。コロナ禍で難しくなりました。昔は数か月から1年、毎日カメラを回して対象の方を密着取材していました。そうすると最初は意識していたカメラも途中から日常になり、本音は引き出しやすくなります。僕らはできればカメラの存在を消したいと思っています。その人の素の部分を引き出すのは、最初は難しいですが、カメラの存在が薄れることで広がることがあります。それがコロナ禍で難しくなりました。ともすればインタビューだけになってしまうことも続きました」

 どんな対策をしているのか。

「なるべく時間をかけ、粘って取材する感じでしょうか。短いスパンで取材するパターンもありますが、数か月、1年かけて少しずつ取材したり、テーマを追いながらも放送日を決めず、終点が見えないまま始める場合もあります」

「ガイアの夜明け」の番組ロゴ【写真:(C)テレビ東京】
「ガイアの夜明け」の番組ロゴ【写真:(C)テレビ東京】

案内役・松下奈緒は「みんなを明るくしてくれます」

 大変な中、心掛けていることも聞いてみた。

「過去の傾向を見ると、比較的高い年齢層の男性がヘビーユーザーとして見てくれていました。これが最近では、女性層に広がってきています。主婦層や現役で働いている人に、いかに訴求するかが大事になっています。入り口を広く柔らかく、最後に満足感を得られる作りを目指しています」

 視聴者獲得のため、どんな工夫をしているのだろう。

「どういう企業に興味があるかリサーチして放送につなげています。20年前と比べて間口を広くしています。たとえば無印良品やコストコ、業務スーパーを『ガイアの夜明け』ならどう描くのか。バラエティー番組にも登場するような注目企業について、他では見られないものをやろうと考え、企業の本質に入り込み、経営の裏側にいろんな秘密があったり、普通の人は知らない努力や工夫があるところを見つけて放送するシリーズもやっています」

 番組の案内役の松下奈緒の魅力も聞いた。

「老若男女に好かれる方。実際に仕事をしていると素晴らしい人柄が伝わってきます。みんなを明るくしてくれます。たとえばスタジオ収録でミスがあっても『はい。もう1回』と明るく言ってくれますし、スタッフともフランクに会話し、取材先の人も松下さんの取材で『自然に話を引き出されたよ』と言う方も多くいます。インタビューアーとしても素晴らしいです」

 テレビ東京で「ガイアの夜明け」と並んで視聴者の人気と信頼を得ているもう1つの経済番組が「カンブリア宮殿」。差別化をどう意識しているのだろうか。

「『カンブリア宮殿』は企業のトップをクローズアップするのが魅力。『ガイアの夜明け』は社長でも一般社員でも、どんな方でも主役になれる番組で、その人から学び共感を得られる番組です」

 最後に番組が目指すことを聞いた。

「一般の方から経営者まで番組を見て勇気やヒント、指針をもらえたと言ってもらえ続ける唯一無二の番組であれたらと思います」

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