【電波生活】桑子真帆アナが感じる「クロ現」の立ち位置 「しっかり両足がついている感覚」

注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はNHKの「クローズアップ現代」(月~水曜、午後7時30分)。桑子真帆アナウンサーが4月にキャスターに就任して半年になる。扱うテーマはアイドルや移住など視聴者が身近に感じる分野も増え、幅広い世代に受け入れやすく進化したように感じる。桑子アナとチーフ・プロデューサーの松本卓臣氏、飯田健治氏に番組の魅力や硬い印象から変わってきた舞台裏を聞いた。

「クローズアップ現代」でキャスターを務める桑子真帆アナ【写真:(C)NHK】
「クローズアップ現代」でキャスターを務める桑子真帆アナ【写真:(C)NHK】

意識しているのは自分の考えが「必ずしも正解ではないかもしれないという引いた目線」

 注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はNHKの「クローズアップ現代」(月~水曜、午後7時30分)。桑子真帆アナウンサーが4月にキャスターに就任して半年になる。扱うテーマはアイドルや移住など視聴者が身近に感じる分野も増え、幅広い世代に受け入れやすく進化したように感じる。桑子アナとチーフ・プロデューサーの松本卓臣氏、飯田健治氏に番組の魅力や硬い印象から変わってきた舞台裏を聞いた。(取材・文=中野由喜)

 桑子アナは「3月までの午後10時開始と違い、さまざまな視聴者層が見るようになるため、『クロ現』の取材力や深め方という根本理念を大事にしつつ、多くの人に見てほしいという思いを込めて作っています。テーマや演出のカラフルさを大切に、時には午後7時30分にしては重過ぎるテーマも扱いますし、これ『クロ現』でやるんだ、という意外性も追求していきたいです。いい意味で視聴者が『クロ現』にもつイメージを打破していきたいとも思っています」と語った。

 桑子アナ自身は具体的にどんな思いで番組に臨んでいるのか。

「私は柔らかさというか、皆さんにあまり力を入れずにテレビを見てほしいという思いがすごくあるんです。私も力を入れすぎないように臨むようにしていて、難しいテーマであっても入り口を優しくしたり工夫したりして、見てみようかな、聞いてみようかな、と皆さんに思ってもらえるように努力しています。」

「ニュースウオッチ9」などNHKの多くの報道番組でキャスター経験がある。ニュースを届けてきた立場から見て、他の番組と「クロ現」はどう違うのか。

「ニュース番組は、今、世の中で何が起きているかを知りたいという欲求に対し、さまざまなメニューを提示する番組。一方で『クロ現』は1つのテーマを27分かけて扱うという大きな違いがあります。ニュース番組では扱う話題によって自分のテンションも変わるし、伝え方も声も表情も変わっていた気がします。『クロ現』はテーマが1つなので、根っこがドーンと張られていて幹も太く、番組を通して少し枝が出ていくイメージ。自分の立ち位置にしっかり両足がついている感覚です」

「クロ現」で最も心掛けていることは何だろう。

「一面的にならないことをすごく意識しています。番組のキャスターは私一人なので私がどう伝えるかによって一定の角度のようなものはついてしまうかもしれません。私もしっかり自分の考えをもちつつ、それが必ずしも正解ではないかもしれないという、引いた目線を意識しています。想像力も常に支えとしてもっておきたいし、それを番組の中にしっかり向けていきたいと思っています」

「クローズアップ現代」の番組ロゴ【写真:(C)NHK】
「クローズアップ現代」の番組ロゴ【写真:(C)NHK】

全国の取材者が提案できる稀有な全員参加の番組 多い女性視聴者

 扱うテーマがどう選ばれているのかが気になり、松本氏と飯田氏にたずねた。

 松本氏は「『クロ現』は1つの部署が作っているのではなく、全国の取材者が提案できる稀有な全員参加の番組。あらゆるセクションから『今これをやるべき』という提案が届きます。世の中の人の関心に応える内容か、番組を見て良かったと思ってもらえる切り口か、どこよりも深い情報があるか、などにこだわって選んでいます」。飯田氏は「19時半の視聴者がどんな人かを常に意識してテーマを考えています。調査では女性がすごく多い。19時半の視聴者が何に関心を持っているか意識しています」と紹介した。

 NHKのほぼ全部署の各現場の熱い思いが詰まった取材内容が届く。番組の形にする作業は大変なはず。

 松本氏は「濃縮されたエキスの最後の1滴みたいなものがVTRで紹介されますが、どれを残すか、どこを深めるか、相当な綱引きが裏ではあります。番組にとって大切なところはどこか、視聴者が納得するのはどこかと激論の繰り返しです。最終的にこれが最高というものを桑子さんに預けます。提案は随時受け付けますが、先日の定期募集には140本も提案がきました。今まで関わってこなかったジャンルの人も参加するようになり活性化しています」とした。

 職員の仕事への情熱を感じる。桑子アナはどう感じているのか。

「『クロ現』はそういう場だと思います。『クロ現』でやりたい、『クロ現』で作りたいという人たちは熱意が相当高い人たち。『熱』の一言。ものすごい熱量で提案し、制作過程もハードなはずですが弱音を吐かず、最後まで届け切ろうしています。その覚悟を毎回、すごく感じています。私もそれにこたえないといけないし、しっかり受け止めたいし、全力で届けきろうと毎回、努めています」

 桑子アナはどんな準備をして番組に臨んでいるのか。

「毎回、チームの皆さんが用意してくれるテーマの基礎情報や取材メモをまとめたキャスター資料を読み込むことが基本的な準備。あと、そのテーマに対する自分の考えやイメージは必ずしも正しいわけではないと、予断を持って臨まないようにしています。さまざまな見方があることや、その理由を理解しようと常に意識しています。また気になることや分からないことは全部クリアしたいので皆さんに聞いて自分の中で納得させる作業も行っています。基本的な質問をして、こんなことも知らないのか、と思われているかもしれませんが、『いや、視聴者も疑問に思うかもしれない、不明な点を残したままスタジオに立ちたくない』という姿勢を守っています」

 謙虚でニュートラル。最後に桑子アナに今後の「クロ現」への思いを聞いた。

「日々ニュースで取り上げられている熱いホットな話題はもちろん、今、こんなことが起きているんだという新しい視点、話題もどんどん提供していけたらと思います。カラフルさもどんどんいろんな色をつけていきたいです」

 松本氏も「進化しなければと思っています。『クロ現』が大切にしてきたジャーナルな視点を守りつつ幅を広げていく。桑子さんは、それが可能なキャスター。器が大きいので、どんなネタも受け止めてくれます。今はスタジオにいる桑子さんが、もっと外に出て行ってもいい。伝え方もカラフルにしたい」。飯田氏は「桑子さんのプレゼン力はすごい。桑子さんのプレゼンで視聴者が腑に落ちるみたいな状態です。今後は桑子さんによる大物インタビューもやりたい」と語った。

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