全日本プロレス団体発行のパンフレット 観戦に必須のアイテムは刺激発言だらけの1冊
かつてプロレス観戦に欠かせなかったのが、団体発行のパンフレット。会場で購入すると、その日の対戦カードをスタンプで押してくれる。当時はタイトルマッチや公式リーグ戦などビッグマッチを除くと、各大会での試合の組み合わせは、事前に公表されず、会場でリングアナウンサーが発表するのが一般的だった。
かつてプロレス観戦に欠かせなかったのが、団体発行のパンフレット。会場で購入すると、その日の対戦カードをスタンプで押してくれる。当時はタイトルマッチや公式リーグ戦などビッグマッチを除くと、各大会での試合の組み合わせは、事前に公表されず、会場でリングアナウンサーが発表するのが一般的だった。
シリーズごとに発売されるパンフレットは大切な情報源で、他にも、先のビッグマッチの総括、当シリーズの見どころ、選手のプロフィールなどが紹介されていた。ところが「平田淳二」が「淳三」になっていたり「原園」が「原菌」になっているなど名前の間違いもあったり、今のような豪華なつくりはまれで、ペラペラの薄いものもあった。その日の対戦カードも、細かい字がハッキリ押印されず、何だか読み取れないなど、今では考えられない。
国際プロレスは「小中学生無料招待」とうたっていたが「300円のパンフレットを買わなければいけない」という暗黙のルールも存在していた。当時は保護者同伴ではなく、子どもだけの来場でもOKで「同じのを買うのは、嫌だよ。お小遣いがなくなっちゃうよ」と泣き出すちびっ子ファンに、いつも困り顔だった吉原功代表が、ほほを緩めて「あ、じゃあ買わなくていいよ。入って」とパンフレットの購入をコッソリ“免除”していた。
最近のパンフレットはカラフルで華やかなものも多いが、今ではスマホなどで対戦カードも確認でき、パンフレットを手にするファンも以前ほどではなくなった気がする。ただし、見逃すのはもったいない。中でも全日本プロレスのパンフレットは熱い。ほぼ毎回、何らかの衝撃インタビューが掲載されている。選手も、オフィシャルなので安心して本音を話すのか? それともリップサービスなのか? 2度見するほど刺激的な発言が多い。
例えば、年に何度も特集された青柳優馬。今では何故か封印してしまった「陰湿」を全開にした内容で、文中に何度も登場する「ざまーみろ!」が見出しとなり「レスラーはみんな陰湿で腹黒い。僕なんかきれいなもん」とキッパリ。さらに3人の個人名を挙げ「腹黒い」と断言。「心から僕を嫌ってくれてもいいですよ」と驚きの開き直り。
今年デビュー30周年のベテラン・大森隆男は先の王道トーナメント特集で、1回戦の青柳VS野村直矢に「野村は青柳にはかなわないだろう」と断定。これまでも青柳を絶賛していたが、結果はその青柳に勝った野村に大森自身も負けてしまった。
決戦前とはいえ「野村が外に出て苦労したと言っても、何の苦労だかよくわからない」と冷淡で辛辣(しんらつ)。「若いやつらが活躍するこの状況は非常に不愉快」と言い放っていた。いつもの紳士然とした大森からは想像もつかない厳しい言葉の数々だった。
50周年記念大会(9・18日本武道館)パンフレットの巻頭特集には諏訪魔が登場し「宮原、ファン、全日本プロレス、みんなまとめて地獄へ堕ちろ!!」という煽情的な見出しがおどっていた。
プッシュアップバーで後輩の田村男児を殴ることには「悪い? 怪我してないだろ。殴ったあとも消えているだろ」と大爆発。6ページに渡って極悪を説いている。
この日、3冠王者の諏訪魔に挑戦して、見事に栄光のベルトを腰に巻いた宮原健斗は、この大会のパンフレットで「(新日本プロレスの)棚橋(弘至)より僕の方が上。そう感じる。これはもう俺の時代だな、と。レスラーにしかわからない感覚かも知れないけど。明るく照らす太陽というジャンルは棚橋を越えている。ネームバリューに頼るのは簡単だけど、そういう時代は終わった」と豪語。かなり激辛で刺激的だ。全日本の新時代を担う男・宮原だけに思い切った発言を期待されているのも事実だろう。
いずれもパンフレット発売時点での発言で、状況は刻々と変わっている。その時点での思いだが、活字は残り、改めて見直すファンも多いはず。
「面白い! いいぞ! もっと言え!」という肯定的なファンもいれば「正直ちょっと引く」と否定的な保守派のファンもいる。
賛否両論だが、人気商売なのだから、話題になってナンボだ。ただ、せっかくの内容なのに全日ファン、しかもパンフレット購入者以外に知られていないのが非常に残念だ。
今は、スマホでも簡単に対戦カードをチェックできる。ひと昔前のようにパンフレットを手に入れる人は少ないかも知れないが、衝撃発言満載の全日本のパンフレットを読まないのは本当にもったいない。