元テレ東アナ・八塩圭子さんの生き方「新しいことをやろう」 きっかけは松尾貴史の言葉

テレビ東京系「出没!アド街ック天国」の初代秘書を務め同局の看板アナとして活躍したフリーアナウンサーの八塩圭子さん。2003年に同局退職後、フジテレビ系「めざましどようび」の初代総合司会などで活躍し、現在は東洋学園大学現代経営学部の教授として大学で教鞭をとっている。テレビなどの仕事もコメンテーターという立場が多い。なぜ大学教授になったのか。気になる近況を取材した。

東洋学園大学現代経営学部教授やコメンテーターとして活躍する八塩圭子さん
東洋学園大学現代経営学部教授やコメンテーターとして活躍する八塩圭子さん

大学で教鞭をとり15年超、専門はサービスマーケティングやメディアコンテンツ

 テレビ東京系「出没!アド街ック天国」の初代秘書を務め同局の看板アナとして活躍したフリーアナウンサーの八塩圭子さん。2003年に同局退職後、フジテレビ系「めざましどようび」の初代総合司会などで活躍し、現在は東洋学園大学現代経営学部の教授として大学で教鞭をとっている。テレビなどの仕事もコメンテーターという立場が多い。なぜ大学教授になったのか。気になる近況を取材した。(取材・文=中野由喜)

「教員歴は15年以上になり、一貫してマーケティングを教えています。専門はサービスマーケティングやメディアコンテンツ。最近はホラーコンテンツのプロデュースをしている会社からホラー全体の市場を把握したいと相談があり、調査設計から分析まで行いました」

 どんな結果だったのか。

「1200人の15~29歳までの関東在住の男女に聞いた結果ですが、ホラーエンターテインメントに興味のある人は全体の約34%。ホラー動画を視聴する人は全体の51.5%と、ニッチ市場ですが動画は結構、視聴していました。面白いのは15~19歳の女性の4割がホラーに興味があったこと。各世代の中で一番多く、自分は怖がりと思っている割合も7割と最多。怖がりだけど興味がある。今後、市場を掘るならその世代の女性がターゲットというサジェスチョンになると思います」

 面白そうな仕事だ。

「今までやってきたメディアとの関わりや私がやる意味のある研究、メディアや社会との接点が多い授業とか、私のキャリアを生かせるような形で教えています。そこが一番、重要」

 テレ東では入社してすぐ報道局経済部の記者に。1年後アナウンサーに異動となった。

「アナウンサーになって担当した経済番組で、ゲストとして来たブランド戦略の先生の話に刺激を受け、面白いと思い、その先生の大学院に通い始めました。大学院に行くと客観的に自分を見直すことができ、新しい道を踏みだそうと考え、大学院に通っている間に結婚してフリーになりました。せっかく勉強したことを発展させたかったし、社員ではできないことも多く実感し、社員でできることは十分やったと、そのときは思ったので」

 フリーアナウンサーより今は大学教授のイメージが強い。

「進路変更しているつもりはなく、ニーズに沿っているだけです(笑)。アナウンサーは若さ、フレッシュさが求められる職業。もし私がプロデューサーならフレッシュな存在を求めると思います。私はアナウンサーを辞めてはいないし、ニーズがあればやりますが、年齢とともにニーズが減り、一方で先生のニーズは増えています。フリーは自分がやりたいと思っても仕事があるわけではない世界。そこではニーズがすべて。ニーズがある方向に行った結果です(笑)。これも一つのリスクヘッジで、不安定なフリーアナウンサーの仕事と安定した教員の仕事の両方を持つ戦略という面もあります。でもマーケティングに関する仕事をアナウンサーとしてもやりたいですね」

 子育てしながら主婦と大学教授は大変。大学で教える魅力をどこに感じるのだろう。

「学生を成長させる役回りなので、ある意味、社会貢献的なことができるということ。ゼミなどでプレゼンがうまくなったり、多角的な視点を持てるようになったりと、学生がどんどん成長する姿も見ることができます。成長してくれてありがとうという母親目線です」

 若い世代のテレビ離れをどうとらえているのか。

「TOKYO MXとコラボして昨年、Z世代がその局の番組をどうしたら視聴するかをうちのゼミの学生が提案しました。多くの学生から出てきた声は、テレビにこだわる必要があるのかということ。テレビ局はコンテンツメーカーになった方がいいと言うんです。スマホで見るコンテンツを作ればいいと。Z世代はテレビという装置に興味はありません。制作力はあるからスマホのような入りやすいメディアからテレビ局が制作したコンテンツに入ってもらい、それをいかにコンテンツビジネスとして拡大していけるかだと思います」

プライベートでは子ども中心の生活「夏休みはフルで付き合っていました」

 次にプライベートを聞いてみた。小4男児と夫の前では、どんな母でどんな妻なのか。

「夏休みは宿題を終わらせるべく大変でした。男の子の頭の中はいまだに分かりません。考え方が全然、違うので面白い生き物だなと思います。発想と行動が全く想像がつかないので、何でそうなるのかと、常に刺激を受けています。夏休みはフルで付き合っていました。家に帰ると子ども中心の生活です。大学でも学生の成長を促し、帰宅してからも子どもの成長を促し、何なら夫の成長も促さないと。言われなくても家事をやろうねと(笑)。きれいに言うと成長を促す役割。現実的にはお尻たたきです(笑)」

 人生の目標を聞いてみた。

「今、バランスを変える時期、立て直さないといけない部分がある気がしています。ここまでは教えることとメディアとバランスよくやってきましたが、もう一段、専門的な要素を持たないと先は難しいと感じています。子どもから『ママの夢は何?』とよく聞かれますが、私はアーティストになりたいと言っています。クラシック音楽も油絵などのアートも好きですが、なかなか時間がなかったので、子育てに自分の時間を費やした分を取り戻すべく、何かやり、それを仕事にもフィードバックしたい。メディアの仕事と大学、プライベートの循環。コロナ禍で滞ったので循環させたい。何か新しいことを始めるとか、何か踏ん張って頑張るとか、そろそろ循環を回す努力をしないとならないですね」

 言葉の端々から自分を客観的に見つめる姿勢を感じる。

「私、昔からかわいくないんです。小学生の頃から水泳、ピアノ、習字などいろんな習い事をやっていましたが、そこで何かの専門家にはなれないと悟ったんです。なので、いろんな経験を生かせる職業に就きたいと、小学生の頃からマスコミ志望でした。自分を客観的に見つめられるかわいくない子ども。それがずっと続いています。自分はこの程度の人間だから食いっぱぐれないように勉強しようとか、今、考えないといけないときだ、みたいな。メタ認知と言いますが、自分を俯瞰でみる能力を常に意識しています」

 そんな生き方の八塩さんの座右の銘は「欲と二人連れ」。テレ東時代、情報番組で共演した松尾貴史に、常にやりたいことがあることから「君は本当に人生、欲と二人連れだね」と言われていた。八塩さんは、そのとき「何か新しいことをやろう」という欲を常に持つ人間でいようと思ったという。

□八塩圭子(やしお・けいこ)1969年9月12日、東京都生まれ。上智大卒業後、93年にテレビ東京に入社。報道局経済部で記者を務め、その後アナウンス室に異動。 2002年から法政大学大学院社会科学研究科で経営学マーケティングコースを専攻し、04年に修了(MBA取得)。テレビ東京時代は「出没!アド街ック天国」の秘書、フリー転身後はフジテレビ系「めざましどようび」の初代総合司会を務めるなど多くのテレビ、ラジオなどでMCとして活躍。現在は名古屋テレビ放送「アップ!」毎週水曜日コメンテーターをはじめ報道、情報番組のコメンテーターとしても活躍中。06年から関西学院大学商学部准教授、その後、学習院大学経済学部特別客員教授を歴任。現在は東洋学園大学現代経営学部の教授として活動中。

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