和楽器バンド、メンバー自ら「ボカロ三昧2」を徹底解説 アレンジャーが最も苦戦した曲は?

津軽三味線担当の蜷川べに【写真:山口比佐夫】
津軽三味線担当の蜷川べに【写真:山口比佐夫】

「ド屑」…おどろおどろしい三味線の演奏に注目

蜷川「どれも良いので悩みますけど『ド屑』(配信盤のみ収録)を取り上げます。リモート会議で選曲しあいながら、この曲は和楽器バンドにすごくハマるぞって思っていました。レコーディングは和楽器のフリー演技みたいな個所があって『好きなように演奏してください』という注文だったので、三味線では普段出さない一番低い音まで調弦(=チューニング)して、デロンデロンに伸びた低い音を出しました。おどろおどろしい感じの怪しさを出すことができたので個人的に気に入ってます」

町屋「三味線ってバチで『パンッ!』と弦を弾く音がとても強いので、打楽器の役割と旋律を奏でる役割の両方を持っている楽器なんです。『ド屑』は調弦することで琵琶に近いような響きを出しているんです」

蜷川「2曲目の『エゴロック』も同じように低い音を出してリズムを刻んでいます。特に津軽三味線は叩くと強い音になるので曲によって調弦が必要になります。だからライブは大変なんですよ(笑)。今回は1曲の中で転調が激しい曲が多いので、普段のライブではだいたい1曲につき三味線は一丁で演奏するんですが、今回は1曲の間に三味線を持ち替える場面がたくさんあります。通常だと1回のライブで6丁の三味線を持ち替えながら進めていくんですが、今回は新たにもう一丁仕立ててもらい、全部で7丁で挑みます」

町屋「エレキ三味線というのもあるんですが、現代風に改良されているのでもともと持っている楽器の良さが失われて音色が崩れてしまうんです。だから日本の和楽器って途中で進化が止まっているんですよね」

蜷川「以前、三味線を改良したこともあったんですよ」

山葵「エレキギターのフライングVみたいな形とかね?」

蜷川「そう。1回だけライブで演奏してみましたが、全然音が悪くて三味線じゃなかったです(笑)」

鈴華「ちなみに『ド屑』の歌い方も新しいチャレンジをしていて、感情を出したいんだけど出しきれなくてずっと“うじうじ”している若い子を演じながら歌ってみました。主人公の二面性みたいなところは詩吟で表現して、わざと音程を外して語っている感じを出してみたり、感情を出したいんだけど出し切れないみたいな淡々としたところにちょっとしたアクセントを数か所入れてみました」

ドラム担当の山葵【写真:山口比佐夫】
ドラム担当の山葵【写真:山口比佐夫】

「ベノム」…原曲とは違った和楽器のグルーヴ感に注目

山葵「僕は6曲目の『ベノム』です。割とアルバム全体として原曲のグルーヴ感に忠実な楽曲が多い中でこの楽曲はリズムアレンジをガラッと変えているので原曲を知っている人には『おおっ!』ってなってくれると思います。もともと『ボカロ三昧』は先ほども話があったように良く言えば“初期衝動”、悪く言えば“行き当たりばったり”でそれが面白かったんです。

 でも今回は和楽器バンドの本来持っているロックサウンドの強い楽曲でも和楽器でグルーヴ感を出せるという、そこの得意な部分がしっかり出せていて特に『ベノム』で原曲とは違う魅力みたいなものを加えることができたら良いなと思いながら作った曲なんです。今まで『千本桜』とか割とハードロックっぽいグルーヴの曲が多かったですが、今回はエレクトロニカとかダンスミュージックがベースになった曲も多くて黒流さんの和太鼓とドラムのグルーヴ感にも注目して欲しいですね」

ギター・ボーカル担当の町屋【写真:山口比佐夫】
ギター・ボーカル担当の町屋【写真:山口比佐夫】

「Surges」…原曲のイメージを保ったEDMと和楽器の音の違いに注目

町屋「僕は編曲者として今回のアルバムの中で最も苦戦した4曲目の『Surges』を上げたいと思います。原曲はEDMなんですが、EDMって言葉でリズムを表すと『ブワッ!ブワッ!』って後ろの音が伸びるサウンドが特徴なんです。それに対して我々の楽器は弦を弾く楽器が多いので、弾いた瞬間の先頭の音が強くて、そこから音が減衰していくので真逆なんです。そんな楽器を使って原曲のイメージを保ちつつ、我々のサウンドでどのようにアレンジしていったのか、ぜひ聴いてみてください。一方で和楽器バンドが持っている得意なところと原曲の個性がそのまま一致した曲は11曲目の『いーあるふぁんくらぶ』です。楽曲との相性が非常に良かったです」

5人の「マイブーム」

 まさにプロフェッショナルな演奏家たちが集まったミュージシャンとしての素顔を紹介してもらったが最後に「マイブーム」というゆるいテーマで5人のもう1つの素顔に迫ってみた。

鈴華「私はドライブが大好きなんですが、最近は忙しくてなかなか時間が作れないんですが、疲れたときの癒しはやっぱり可愛い私のワンちゃんですね(笑)」

蜷川「私がバンドを始めてから8年間1日も休まずに続けていることがあって、それは毎日1、2時間、湯船に浸かってストレッチをしながら体を緩めて無になることなんです。心と体の安定を保つためにそこで全部リセットするんです。どんな日でもちゃんとそういう時間を作るようにしています。

 もう1つが今更なんですけど三味線を弾くのが楽しいなって最近また思えるようになってきました。今回のレコーディングがきっかけで三味線という楽器の新たな可能性が見えてきたので三味線を弾いている瞬間がすごく楽しいんです」

鈴華「私も似ているかも。原点に返ってクラシックピアノを弾いてみたり」

蜷川「そうだよね。よりベーシックな感じに戻っていったりすることってあるんですよ」

山葵「僕は一昨年、去年と『SASUKE』(TBS系)にも出演させていただきましたが、今も変わらず“筋肉ライフ”を満喫しています(笑)。トレーニングは1週間に4日で食事と栄養補給と休息をちゃんと取るという毎日ですね。食事にも気をつけていてボディビル大会の前になるとお酒を飲まないようにしたり、そんな日課です」

黒流「実は僕も鍛えてるんですけど……横にこんな奴(山葵)がいるので全部彼に持って行かれちゃうんですよ。でも実は運動大嫌いなんですよね(笑)。毎回仕事のための体作りとストレス発散で鍛えています」

町屋「僕は非常に多趣味で3か月おきぐらいにマイブームが変わるんです。悪く言えば飽きっぽいんですけどね(笑)。昔から本を読むのが大好きですし、半年前までは麻雀に夢中でしたし、キックボクシングもやってました。でも今年に入ってからはこのアルバム制作に全力で集中して自分が今までため込んだ知識をすべて出して作ったので、すごく音楽に向き合っていました」

□和楽器バンド 詩吟、和楽器とロックバンドを融合させた新感覚ロックエンタテインメントバンド。2014年4月にアルバム「ボカロ三昧」でデビュー。15年に発売したセカンドアルバム「八奏絵巻」はオリコン週間ランキング初登場1位を獲得し、第57回「輝く! 日本レコード大賞 企画賞」を受賞。16年、デビュー1年9か月にして初の日本武道館公演を開催。海外においては北米単独ツアーを開催しワールドワイドに展開。18年には5thアルバム「オトノエ」が第60回「輝く! 日本レコード大賞 アルバム賞」を受賞。20年2月、大阪城ホールで行われたオーケストラとの共演ライブである「Premium Symphonic Night Vol.2」で、グラミー受賞アーティストEVANESCENCEのAmy Leeと共演し、ワールドクラスのパフォーマンスを披露。22年8月17日「ボカロ三昧2」をリリース。8月27日より全国ツアー「和楽器バンド ボカロ三昧2 大演奏会」を開催中。

和楽器バンド公式HP:
https://wagakkiband.com/

公式YouTubeチャンネル:
https://www.youtube.com/c/wagakkiband

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