太陽光パネル、現在はほぼ埋め立て処理 東京都が強力推進も廃棄問題はどうする?

東京都が新築物件の屋根に太陽光パネルの設置を義務づける方針を表明した。目的は温室効果ガスの削減で、2025年4月からの実施を目指している。今後は各家庭にパネルの導入が進むことが予想されるが、一方で、パネルの廃棄が課題として浮上。パネルの寿命は20~30年とされ、現在はほとんどが埋め立てられている現状がある。40年には年間4000万枚ものパネルが廃棄されるという。リサイクルの現状と問題点を新見ソーラーカンパニーの佐久本秀行社長に聞いた。

2040年には太陽光パネルの廃棄は年間4000万枚に上る(写真はイメージ)【写真:写真AC】
2040年には太陽光パネルの廃棄は年間4000万枚に上る(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「東京の町田市、大阪の岸和田市ぐらいが毎年ソーラーパネルで埋まってしまう」

 東京都が新築物件の屋根に太陽光パネルの設置を義務づける方針を表明した。目的は温室効果ガスの削減で、2025年4月からの実施を目指している。今後は各家庭にパネルの導入が進むことが予想されるが、一方で、パネルの廃棄が課題として浮上。パネルの寿命は20~30年とされ、現在はほとんどが埋め立てられている現状がある。40年には年間4000万枚ものパネルが廃棄されるという。リサイクルの現状と問題点を新見ソーラーカンパニーの佐久本秀行社長に聞いた。(取材・文=水沼一夫)

 佐久本社長は「佐久本式ソーラーパネル熱分解装置」という世界初のリサイクル技術を開発し、昨年特許を取得。環境省や経産省の支援を受け、来春の実用化を目指している業界注目のリーダーだ。

 そんな佐久本社長が、太陽光パネルの処理にあたり、最も苦労したのが、使用済パネルからリサイクル材料を取り分ける方法だった。

 パネルは、表面の強化ガラスや大量電池セル、銅線などで構成されている。パネルを適切に廃棄するためには材料別に分解する必要があるが、「リサイクルをこれっぽっちも考えていない構造」のため、リサイクル技術の開発は難航した。試行錯誤の末に、二酸化炭素を排出せずに有機物を分解し、再利用可能な材料を取り出せる世界初の装置を作ることに成功した。

 国内電力量の約1割を占める太陽光発電は、地球環境に優しい自然エネルギーとして関心を急速に集めている。SDGs(持続可能な開発目標)のコンセプトにも合致し、都の設置義務化は普及を全面的に推進するものだ。ただ、佐久本社長は「抜本的なリサイクルの体制が整っていないことが問題」と指摘する。

 現状では、パネルはほぼ埋め立てにより、廃棄されている。環境によくないことは明らかだが、そうせざるを得ない事情がある。燃やせば「当然、二酸化炭素や有機ガスを大量に発生させますし、環境汚染になります」。さらに年式の古い一部の中国製パネルはヒ素を含んでおり、処理のハードルはさらに高い。

 パネルの設置量が増えれば、それに比例して、パネルの廃棄も増える。40年には年間約80万トンに上り、250ワットパネルを標準とした場合、約4000万枚のパネルが廃棄される試算になる。すべての産業廃棄物の6%を占めると予想され、埋め立て処分場の残余量力や処理能力の不足などが懸念される。

「2040年から数年続く廃棄量と想定されています。東京の町田市、大阪の岸和田市ぐらいが毎年ソーラーパネルで埋まってしまう」

 膨大な量だけに、適切に処理しなければ、不法投棄などによる新たな環境汚染の原因となりかねない。

太陽光パネルの構造【写真:新見ソーラーカンパニー提供】
太陽光パネルの構造【写真:新見ソーラーカンパニー提供】

「環境に良いと思って作った太陽光パネルが大量の廃棄物に…耐えられない」

「佐久本式ソーラーパネル熱分解装置」はパネルのほぼ100%をリサイクルするという画期的なもの。それでも、実験炉で処理できるパネルの枚数は、20~30分につき1枚だという。

 佐久本社長は「4000万枚の処理には十分機能しない」と話し、処理能力の高い装置を開発中だ。来年春には1号機が実用化する予定。24時間操業で200枚、年間7万枚のパネルをリサイクルできるという。

 パネルを取りつければ、一般家庭では年間電気量の約8割をまかなえるとされ、導入による恩恵はある。だからこそ、「環境に良いと思って作った太陽光パネルが大量の廃棄物になってしまうことは耐えられない」との思いで、開発に注力してきた。

 いずれにせよ、まだまだクリアすべき壁が高いパネルの廃棄問題。子どもたちの未来にも影響するだけに、しっかりと考える必要がありそうだ。

次のページへ (2/2) 【写真】太陽光パネルリサイクルの仕組み
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