“世界の不沈艦”スタン・ハンセンの人気は不滅 連日のイベントでも多くのファンと交流

“世界の不沈艦”スタン・ハンセンの人気はまさに不滅。全日本プロレス50周年記念大会(9・18日本武道館)に、立会人として来日し、大きな拍手を浴びたハンセン。プロ野球の始球式はじめ多くのイベントに登場しファンとの触れ合いを楽しんでいる。

大いに語る“不沈艦”スタン・ハンセン
大いに語る“不沈艦”スタン・ハンセン

毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.113】

“世界の不沈艦”スタン・ハンセンの人気はまさに不滅。全日本プロレス50周年記念大会(9・18日本武道館)に、立会人として来日し、大きな拍手を浴びたハンセン。プロ野球の始球式はじめ多くのイベントに登場しファンとの触れ合いを楽しんでいる。

 新日本と全日本、両団体が激しい興行戦争を展開していたころ、アントニオ猪木、ジャイアント馬場の両巨頭らと手に汗握る抗争を繰り広げており、日本マット史を彩ってきたあまたの強豪外国人レスラーの中でも一、二を争う実力、人気を誇っている。

 ハンセンはいつ何時でも強かった。試合でも入場式の乱闘でも大暴れ。パワフルで豪快な技、雰囲気、オーラもある。登場するとパッと明るく華やかになる。もちろんそれぞれ好きなレスラー、嫌いなレスラーはあるだろうが「一番好きな外国人レスラーはハンセン」というファンも多いし、また「ハンセンが嫌い」という人はまずいない。

 サイン入りポートレートのお渡し会での質問コーナーで、猪木と馬場について聞かれると「猪木は常に新しいことに積極的にチャレンジしていた印象。レスリングのムーブだけにとどまらず興行、企画など多岐にわたってアグレッシブだった。一方の馬場は型を大事にしていたタイプ」と分析したうえで「自分はどちらにも似ていない。自分のファイトスタイル、スタン・ハンセンを生涯貫いた」とキッパリ。ファンをうなずかせていた。

 全日マットの同世代のライバルだったジャンボ鶴田と天龍源一郎には「天龍との戦いは常に激しかった。鶴田は体格にも恵まれており手強かった。特にジャンピングニーは効いた」と振り返る。

 天龍といえば、ハンセンが天龍、阿修羅・原組の猛攻を受け、試合中に意識を失ってしまったことがある。その後のバトルは大荒れとなり、試合後も天龍の控室を探し回った。天龍がコメントを取りに集まっていた取材陣に「早く逃げろ。今のハンセンは誰にもどうにもできないぞ」と忠告。一緒になって会場を後にしたことがあった。

 ハンセンは「そんなことは忘れた」と高笑い。今となっては良き思い出のようだ。そういえば普段は度の強い眼鏡をかけている。外すとハッキリとは相手の顔も見えないようだが「コンタクトを試したこともある。でも、客席のファンと目が合って『オ~!』となってしまって、すぐにやめた。ぼんやりとしていた方が、私には合っていたようだ」とウインクだ。

 鶴龍に続いて、激突した四天王には「一番印象深いのはやはり三沢光晴。エルボーが強烈だった。田上明は相撲という自身のバックグラウンドをうまく活かしていた。川田利明、小橋建太は、2人に比べ若かったので当初は何度もたたきのめしたが、手強い相手へと立派に成長していった」と、どこかうれしそう。

 日本マットだけでなく、米マットでも大暴れしているが、印象深いのは、公私に渡って親交のあった“超獣”ブルーザー・ブロディだという。「組んでも戦っても超一流のレスラーだった」とさまざまな思い出がよみがえった様子。

 テリー・ゴディと組んでブロディ、ジミー・スヌーカ組と闘った世界最強タッグでの一戦が「生涯で最も印象に残る試合のひとつだが、ブロディはやはり闘うのではなく一緒にタッグを組むべき相手。シングルで闘ったことはないが、それで良かったと思っている。あんなことがなければずっと一緒にタッグを組んでいただろう。レスラーとしても友人としても素晴らしい人間だった」と天を見上げた。

 出世のきっかけとなった“人間発電所”ブルーノ・サンマルチノを「彼と戦った時、私はまだ新人で彼はニューヨークのスーパースター。私がボディスラムで誤って彼の首を折ってしまった。それでも彼は私のことを恨みもせず、その数年後には仲良い友人にもなれた」と偲んだ。

 奥様が日本人でもあり、親日家で知られている。日本中をサーキットしているが「北海道から九州まで日本の全ての都市が好きで、どことは決められない。神奈川県の大和市には2年住んでいたので愛着がある」と底抜けの笑みを浮かべる。

 日本以外では「出身地のテキサス州ノックスシティが落ち着く。人口わずか2000人の小さな街だ。今住んでいるコロラド州グランドジャンクションもロッキー山脈にある美しい街で、住みやすく景色もすばらしい」と自然を愛する男らしい答えだった。

 お渡し会では一人ひとりと会話をかわし、長年のファンには「おお、ありがとう」と感謝の言葉。ファンも「また会えてうれしい」と感激しきり。日本を、日本人を愛するハンセンと「ウィー!」と合唱して破顔一笑。実は「ユース!(若い)」とさけんでいるのだが「今はオールドだよ」とささやいて、またまたウインクだった。

 不滅の不沈艦。いつまでもお元気でいてほしい。

 何度も交わされたハンセンの「see you」とファンの「see you」。きっとまた会える。(文中敬称略)

次のページへ (2/2) 【写真】ファンと言葉を交わすスタン・ハンセン
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