Toshl「僕の音楽史を変えた1曲」 渡米した20代で聴いた「美女と野獣」で受けた感銘
圧倒的な歌唱力を誇るToshlがディズニーの名曲や、昭和や平成の歌姫のラブソングなどをカバーしたアルバム「IM A SINGER VOL.3」を9月28日にリリースする。「乙女心を発動させた」と語るレコーディングについて、また抱いている野望について聞いた。
新アルバムでディズニー楽曲をカバー
圧倒的な歌唱力を誇るToshlがディズニーの名曲や、昭和や平成の歌姫のラブソングなどをカバーしたアルバム「IM A SINGER VOL.3」を9月28日にリリースする。「乙女心を発動させた」と語るレコーディングについて、また抱いている野望について聞いた。(取材・文=西村綾乃)
「IM A SINGER」はToshlが初のカバーアルバムとして2018年に立ち上げたシリーズ。唯一無二の歌声で、中島みゆきの「糸」、尾崎豊の「I LOVE YOU」などを歌い話題を集めた。19年に続く第3弾では「ディズニーの曲を歌いたい」と自ら提案したという。
「僕が好きな曲を歌った作品をたくさんの人に愛していただき、ありがたいことだなと感謝しています。昨年の11月に、第3弾についての話が持ち上がった際に、すぐに『大好きなディズニーの曲を歌いたい』とスタッフにお伝えしました」
中でもToshlの心をとらえて離さなかったのが、数々のディズニー映画を彩ったアラン・メンケンが制作した「美女と野獣」だった。
「20代のときにアメリカのロサンゼルスに渡り活動をしていたのですが、レコーディングなどの合間をぬってミュージカルを観に行ったことがありました。そのときに上演されていたのが『美女と野獣』。美しい楽曲に感銘を受け、すぐに音楽ショップで『美女と野獣』のサウンド・トラックを買いました。サントラを聴いて、それを理解できるようになりたいと英語を一生懸命勉強して。僕の音楽の1ページを塗り替えた出来事でした」
美しいハープが魔法の世界へのページをめくるように始まる「美女と野獣」は、歌手で俳優の石丸幹二にデュエットを依頼。美しいハーモニーを響かせている。
「石丸さんとは、2019年にNHKの番組でご一緒させていただいて以来、同郷、同世代、共にシンガーと、共通点も多く、話もとても合うことから、いまでは『幹二くん』、『としくん』と呼び合う仲良しさんになることができて、本当にうれしいです。僕は愛情深くて賢く、芯が強いベル(美女と野獣の主人公)が大好き。僕がベルになり切って歌うためには、石丸さんの柔らかくもしっかりとした太い声が欠かせないと思い、共演をお願いしました。レコーディングでは『姫、どうぞ』とエスコートをして下さるような包容力ある歌声で安心感があり、僕の中の『乙女心』がキュンと発動しちゃいました(笑)。歩まれてきた人生が声に現れている。温かい歌声を間近で聴き、何度も心が震えました。尊敬する歌い手の方と作品を生み出すことができたことは、大きな刺激になりました」
中森明菜の「難破船」はジャズ風に、高橋真梨子の「桃色吐息」は中東風にアレンジ。安室奈美恵の「Hero」、絢香の「三日月」は迫力ある歌声で聴き手を圧倒する。女性の曲を歌うことで、女性の心情を理解できるようになったなど変化はあるのだろうか。
「僕は子どもの頃から声が高かったので、お家でギターやピアノの弾きながら歌うときは(松田)聖子さんなどの女性ボーカルの曲を歌うことが多かったんです。幼少期は声が高いことを劣等感に思うような時期もありました。ボーカリストとなったいま、憧れの明菜さんの歌を、今回はオリジナルキーで歌わせていただき、夢のようだなと感じます。楽曲に向かい合う際、その歌詞やメロディーの中に自分を溶け込ませるように、歌の練習を重ねていくので、歌の中の女性的心情は、自分なりに自然に理解した状態で、歌として表現をしているとは思います」
アルバム発売後、10月8~10日には、「オテル・ドゥ・ミクニ」で収録曲などを披露するコンサートを予定。最終日の10月10日に誕生日を迎える。新しい年の目標は。
「歌ったり、音楽を制作したり、絵画を描くこと、そのほか、自分が何か創造するというクリエイティブな活動は、『これでいい』ということはない終わりのない世界だと思います。今後も自分の殻を少しでも破っていく挑戦をし続けたいです。今回のアルバムもそうなのですが、僕が大好きで楽しいと思って表現することを、観て、聴いて、感じて、喜んでくださるファンの皆さんと共に楽しめることはかけがえのない幸せなこと。これからもそんな皆さんと『喜ばせ合戦』をしながら日々を重ねて行けたらいいなと思っています」
□Toshl(とし)龍玄(りゅげん)としの別名義も持つ。ボーカリストとしてだけではなく、画家としての活動も「音の世界を描く」という独自のアート表現で、観る者の心に深い感動を与える作風が大きな反響を呼んでいる。