師匠・長与千種に教え込まれた「プロレスラーとしての哲学」を背負う彩羽匠インタビュー【後編】

「今の女子プロレスをどう伝えていくか」と語る彩羽【写真:新井宏】
「今の女子プロレスをどう伝えていくか」と語る彩羽【写真:新井宏】

一夜限りの復活大会 そのメインに抜擢された使命

――彩羽選手はランニングスリーをはじめ、長与選手の技を使います。橋本戦では今まで以上に長与さんの技を意識しますか。

「そんなに意識はしないかもしれないです。実は意識するほど余裕が無いのが本当かも。でもランニングスリーは大事に使っているフィニッシュなので、出しどころはもの凄く考えますね。この技は自分が何年も掛かって継承されたので、簡単に出せばいいという感覚ではないです。もし返された場合は自分の選択ミスになりますから、そこは慎重にそこまで行き着くまでにどれだけ相手にダメージを与えられるかが重要だと思ってます」

――橋本選手には「オブライト」というジャーマンスープレックスホールドがあります。やはりこの技は警戒しますよね。

「その技は受けた事がないんです。他の選手のジャーマンは散々受けてきましたけど、橋本のジャーマンはまた全然違うと思うので、その切り返し方は考えます。一度締まったら中々抜けられないイメージがあるので、ロックされないように気をつけます」

――この対戦は彩羽選手個人の戦いなのか、団体を代表して戦うのか、それとも世代闘争でしょうか。

「リアルタイムでGAEA JAPANを見ていた人たちに、今の女子プロレスをどう伝えるか、という課題を与えられている気がします。その人たちの心をどう動かすのか。ある意味団体も背負ってるし、個人としてのプライドもあるし、今の女子プロレスをどう伝えていくか、それが課題であり使命と考えています。それがメインになった理由だと思います」

――極端な話、このメインの試合次第ではGAEA自体の色を消すことも可能じゃないか思います。

「GAEA JAPANは好きですけど、実際には体験してない、だからこそ、失敗はできないです。自分たちが今までやってきたプロレスをただ見せるわけにはいかないと思うんですね。どうやってお客さんにインパクトを与えるか。GAEAがあれだけ人気を誇った理由は、たぶん今も昔も変わらないと思うんです。『昔だから人気があった』は言い訳にしか過ぎなくて。だから自分は“今の自分に足りないもの”、“GAEAにあって自分にないもの”、“当時のGAEAにあって、今の自分に無いもの”を探してます。それを加えて、今の女子プロレスを存分に見せたい気持ちがあります。いつも新たな自分を探してます」

――彩羽選手にGAEAイズムは流れていると思いますか。

「もちろんあります。自分は、長与さんにプロレス観を変えられましたのでGAEAイズムとさらに長与千種イズムをしっかりと受け継いでる意識はありますね」

――長与さんは最近よく「仕掛けをしていく」と話しています。今回のGAEA復活もその仕掛けの一環のようですが、彩羽選手はこの発言をどう受け止めていますか。

「正直自分も長与さんが何をやるのか全く分からないんですけど、その仕掛けを楽しみたいし、いつでも乗る準備は
しています。自分の芯がブレてたら乗り切れないので、自分の芯はしっかり持ちつつ、『いつでもかかってこい』という部分はあります」

――新型コロナウイルスの影響で開催自体が心配な部分もある4月15日ですが、前日には彩羽選手の古巣スターダムの後楽園ホール大会があります。彩羽選手は2月のスターダムに参戦し、王者・岩谷麻優選手とシングルマッチで戦って勝利していますが、前日のスターダムは意識されますか。

「いま女子プロレスの中ではスターダムは凄く話題になるし、動員数も含めて常に意識しています。でも自分の中ではGAEAは伝説で、本当に凄い団体なので、意識というよりも負ける気がしないですね」

□彩羽匠(いろは・たくみ)1993年1月4日生まれ。福岡県福岡市出身。12年11月16日プロテスト合格。13年4月、リングネーム「彩羽匠」としてスターダム両国国技館大会でデビュー。15年2月22日、長与千種が設立した女子プロレス団体「Marvelous」に移籍し、現在活躍中。

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