深刻化する少子化で定員割れ私大が増加 麗澤大学学長が危機感「迅速な取り組みが必要」

少子化が深刻化する中、大学教育の現場では優秀な学生の獲得のためさまざまな取り組みが行われている。千葉県の私立麗澤大学(柏市)はグローバル教育や国際性の向上のほか、共通テスト利用型入試の無料化、課題プレゼン型入試の導入、さらには工学部新設による総合大学化など多彩でユニークな取り組みを次々と進めている。徳永澄憲学長に改革の理由と手ごたえを聞いた。3回連載で今回は第1回。

麗澤大学の徳永澄憲学長【写真:ENCOUNT編集部】
麗澤大学の徳永澄憲学長【写真:ENCOUNT編集部】

小規模と国際性にこだわり、外国人教員比率は24.1%

 少子化が深刻化する中、大学教育の現場では優秀な学生の獲得のためさまざまな取り組みが行われている。千葉県の私立麗澤大学(柏市)はグローバル教育や国際性の向上のほか、共通テスト利用型入試の無料化、課題プレゼン型入試の導入、さらには工学部新設による総合大学化など多彩でユニークな取り組みを次々と進めている。徳永澄憲学長に改革の理由と手ごたえを聞いた。3回連載で今回は第1回。(取材・文=鄭孝俊)

――2019年4月1日付で学長に就任以来、3年たちました。18歳人口の減少で全国に約600校ある私立大学の半分近くが定員割れともいいます。

「(プロジェクターで資料をホワイトボードに映しながら)18歳人口は1992年の205万人をピークに長期的減少傾向にあり、ここ数年は120万人前後でしたが、2030年代に入ると100万人を割り2035年には98万人にまで落ち込むという予想が出ています。大学進学率が今と同じとすると、60万人の大学入学者数は52万にまで減少するので大学にとっては長期的ビジョンを掲げつつも迅速な取り組みが必要です」

――学長としてどのようなプロジェクトに取り組みましたか。

「私が学長に就任した19年以降、学生支援のためグローバル教育施設設備のリニューアルに取り掛かりました。キャンパス内にあるあすなろ校舎2階をラーニングコモンズ『iFloor』に全面改装、生涯教育プラザの1階ホールも多目的ホールに改装し英語劇を上演できるようにしました。また、コロナ禍により海外渡航が難しくなったのでオンラインの活用を促進しました。具体的にはオンライン留学、COIL(海外教育機関との交流学習)、マンツーマン型オンライン学習DMM英会話などの導入です。こうした取り組みにより『THE 世界大学ランキング(日本版)』の国際性の全国順位は20年度17位、21年度18位でしたが、22年度は12位と飛躍し、千葉県内では3年連続ランキング1位をキープしています。これは外国人教員比率を基準にしていて麗澤大は24.1%とかなり多いためです。教員の4人に1人が公募採用による外国人教員です。小規模であることと国際性豊かであること、これが麗澤大学にしかできない学び。国際学部の1年生の定員は160人、経済学部は220人、59年に開設され60年以上の歴史を持つ外国語学部は220人。英語ネイティブによる英語オンリーの授業もありますから学生の英語力向上に貢献しています」(※1)

――グローバル化はどこの大学にとっても大きな課題ですが、麗澤大の取り組みを教えてください。

「小さな大学ですから教員と学生の距離が近く中身の濃い学びが実現できます。麗澤大は留学生の受け入れを積極的に行っております。キャンパスには世界約30の国と地域から留学生が集まりさまざまな言語が飛び交っています。国際学部の日本学・国際コミュニケーション(JIC)専攻の学生は3人に1人が外国人留学生です。日本人学生と外国人学生が積極的に議論することで異文化理解が促進されます。ベトナム・ハノイにある日本国際学校との国際連携基本協定の調印式も8月に行いました。麗澤大学推薦入学制度の適用による留学生の受け入れを来年秋から開始する予定です。一方、麗澤大の学生が海外に出ていく留学制度も充実させています。語学留学、海外の大学の学部に留学する専門留学のほか、第2外国語として学んでいる言語を母語とする地域に留学し専攻語と第二外国語の2つの言語を同時に習得するクロス留学という取り組みもあります。例えば第2外国語が中国語の学生は台湾の淡江大学で英語と中国語を学ぶ、といったことも可能です。麗澤大では14週にわたるセメスター制授業と週2回授業を行う7週完結のクォーター制を併用しています。この2か月のクォーター期間を夏休みや春休みと合わせてうまく活用すれば、その分海外留学期間を長くすることが可能となります」

(※1)外国人教員比率は早稲田大14.3%、慶応大6.9%、上智大19.3%。「蛍雪時代2022大学の真の実力情報公開BOOK」(旺文社)

□徳永澄憲(とくなが すみのり)1952年(昭和27年)1月5日、愛媛県出身。東京教育大学農学部農村経済学科卒業(農学士)。筑波大学大学院博士課程社会科学研究科単位取得満期退学(経済学修士)。ペンシルベニア大学大学院博士課程地域科学研究科修了(Ph.D.)。麗澤大学外国語学部助手・専任講師、ペンシルベニア大学経済学部客員研究員併任。麗澤大学国際経済学部助教授・教授、インドネシア共和国・国家開発企画庁経済開発専門家(JICA併任)、名古屋市立大学経済学部教授、筑波大学大学院生命環境科学研究科教授、麗澤大学経済学部教授、麗澤大学経済学部学部長を経て現職。専門はマクロ経済学、応用計量経済学、都市・地域経済学、開発経済学。

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