中山秀征が「テレビタレント」にこだわる理由 トーク引き出すMC術、生放送中の“必殺技”

14歳でデビューして以来、「DAISUKI!」「THE 夜もヒッパレ」(いずれも日本テレビ系)などで人気を博し、現在も情報番組「シューイチ」(同)で抜群の司会者ぶりを発揮する中山秀征が、「週刊新潮」で新連載をスタートさせた。タイトルは「テレビタレント、やってます。」。芸能界の第一線を走り続ける55歳は、テレビへの熱い思いを残そうと、なんと自ら新潮社にオファーしたという。肩書に込めるプライド、そしてMC術の極意を聞いた。

中山秀征は週刊新潮の連載で「テレビタレント」としての熱き思いを明かしている【写真:(C)新潮社】
中山秀征は週刊新潮の連載で「テレビタレント」としての熱き思いを明かしている【写真:(C)新潮社】

自らオファーで「週刊新潮」連載 14歳でデビュー芸能生活41年、司会者として確立

 14歳でデビューして以来、「DAISUKI!」「THE 夜もヒッパレ」(いずれも日本テレビ系)などで人気を博し、現在も情報番組「シューイチ」(同)で抜群の司会者ぶりを発揮する中山秀征が、「週刊新潮」で新連載をスタートさせた。タイトルは「テレビタレント、やってます。」。芸能界の第一線を走り続ける55歳は、テレビへの熱い思いを残そうと、なんと自ら新潮社にオファーしたという。肩書に込めるプライド、そしてMC術の極意を聞いた。(取材・文=吉原知也)

 連載は8月4日発売号からスタート。中山と飯島直子、松本明子のトリオで90年代に絶大な人気を誇り、先日22年ぶりに限定復活でBS日テレで放送された「DAISUKI!」を初回から取り上げるなど、中山の“テレビ人生”をアツく語っていく内容だ。連載は「今だからこそ」自ら企画したという。

「今、YouTubeや配信サービスがどんどん増えて、もうテレビだけではない時代になってきました。あえてこの時代に、自分がお世話になってきたテレビというものを振り返って、そうすることで未来が見えるんじゃないか。そんな思いを持っていました。去年の冬に、ビートたけしさんの『浅草キッド』がNetflixでやりましたよね。改めて映像を通して見ると、すごいドラマがあって夢のある話だなと。70年代から80年代初頭ぐらいまでの話はこうして表に出ていますが、なかなか80年代以降のテレビのことを語る人はそんなにいない。『いつか話ができれば』なんて思っていましたが、あまり若くしてやってもどうなのか、それでいて年がいき過ぎると時代にマッチできない。今年の春先に、どこかでまとめたいなという思いを新潮社さんに相談させてもらったら、快くお返事をいただきました」

 連載タイトルは直球勝負。そこには、肩書に対する並々ならぬ思いがあるという。

「僕はテレビで生まれたタレントであり、テレビの商いで今日まできました。テレビへの敬意を持っています。ただ、一般のイメージとして、テレビタレントはライトで軽い印象になってしまいます。何でもできるからと器用貧乏みたいな扱いになっちゃったりもします。僕は、軽いなんて思っていません。先輩方を含めてテレビタレントは、テレビの中で何ができるかを一生懸命に模索しながらやってきたと思うんです。こだわり続けてきました。

 肩書というものについて思うことがあります。志村けんさんは『俺は芸人じゃない。コメディアンだ、喜劇人なんだよ』とおっしゃっていました。かと思えば、たけしさんは『俺ら芸人はさ』という枕詞から話をされますよね。高倉健さんは映画スター、映画俳優。それは決してどれがいい悪いではなくて、皆さん、はたから見る以上に自分の肩書にこだわりを持っていらっしゃるんだなという印象があります。

 僕の世代はテレビで育ちました。まだビデオ録画もない時代です。ブラウン管のテレビ番組を見るために走って帰ってきて、後で録画を見ることができないから、その場で見ながら記憶する。そうやってテレビを一番見てきました。そんな僕の人生は、ドラマ、バラエティーから始まり、そこで覚えたことが人生の大半です。テレビの中で人生を学んできました。だからこそ、テレビタレントというものを追求したいんです。自分の芯になる部分がどこにあるのかと考えた時に、やっぱりテレビなんだな。そう強く思っています」

 41年間芸能界で活躍する中山と言えば、司会者・MCのイメージが強い。番組づくりのプロの流儀を教えてもらった。

「MC論といった大上段の話ではないのですが、僕がMCをやった場合、まずその現場に来ることが楽しみになってもらいたいです。ゲストや出演者の皆さんが伸び伸びできる環境づくり。トークの場面で、何か考えちゃうなということではなく、思ったことを全部話せるような雰囲気にしたいと思っています。どんな方であっても、トークで間を悪くしないようにすることを心がけています。そのポイントは事前の会話、世間話なんです。

「MCとしてのバランスを意識。まず、人としてどうあるかが中心」

 例えば、(ゲストの地元をロケで訪ねて思い出トークを展開する)『ウチくる!?』(フジテレビ系)はロケバスが勝負。大体のゲストは初めて会う方で、皆さん緊張されています。実は座席にはある決まりがあって、僕が一番後ろに座って隣に演出が座って、(MCを務めた)中川翔子が1つ前に座って、僕の斜め横にゲストに必ず座ってもらう。決まりというよりそこしか空いていない状態を作るのですが(笑)、なんとなく世間話をして、最初に和ませちゃうんです。『トークはこんなぐらいでいいんですよ』と。女優さんや俳優さんの中には変な風にいじられるのが嫌な方もいるので、『ダメだったら言ってください、あとは全部編集するので』と伝えます。収録は一軒目、二軒目と移動します。その間のロケバスで、ちょっと必要だなと思うことをゲストに聞いておくんです。僕の頭の中には、ある程度の全体の本があります。起承転結を描いて、その次はこの話だなと。もちろんそれに無理に合わせることはしませんが、トークの場面で、『子どもの時はこうだったんですよね』と2割ぐらいトスを上げれば、あとは返答次第。答えが、『やめてくださいよ、その話』。それでもいいんです。こちらが『いい話だから聞かせてあげてよ』『大丈夫、こっちの責任にするから』とさらに振ると、今まで出ていない、いい話が撮れるんです。もちろんゲストが『こういうの言いたいんだよね』とくれば、『じゃあ言っちゃいましょうよ』。事前に声かけをしてしっかり話をしたうえで本番をやれば、ゲストは『ああ面白かった』で終わるんですよ。MCがゴリゴリ攻めた、切れ味のいいツッコミを入れたとか、こっちのことはどうでもいい。ゲストが気持ちよければ、番組として成功なんですよ」

 より収録の難しさが増す生放送中の“必殺技”があるという。その仕切り術も見事だ。

「生放送だったらCM中。その1分半とか2分の間でいいんです。『シューイチ』だと、CM中にゲストやコメンテーターとニュースに関する話をして、『この話いいですね。次、言ってもらっていいですか?』となります。例えば、河野太郎さんがワクチン担当大臣をされていた当時のことです。事前に打ち合わせする時間がなかったので、CM中に大臣と話をしました。新型コロナウイルスのワクチン接種がまだ始まったばかりで、ワクチン接種に対して世間が心配や不安を感じ、いろいろな意見がある中でしたから、『安心ということは、それは声を大にして言えるのですか。本当に言い切れるんですか?』といったことを聞きました。そうしたら大臣が『言い切れます』と。僕の方から『それを言ってもらっていいですか?』と確認しました。もしそこで『それはちょっと…』となればオンエアで突っ込むことはしません。このやりとりは印象深いです。

 もちろん、他の方とのやりとりもそうですが、何か発言を引き出して陥れる意図はありません。今みんなが聞きたいことはどこなのだろうということを考えながら聞いています。専門家との日常会話では、政治・経済・スポーツ、その方の専門分野の話が出ることが多いです。打ち合わせの時に、専門家が『本当はね…』となるんですよ。そうしたら僕は『じゃあ、その本当はね、を言ってもらっていいですか?』とお願いするんです」

 時に、議論呼ぶ繊細なテーマを扱うこともある。大事にしているのは「バランス」だ。

「MCとしてのバランスは意識しています。まず、人としてどうあるかが中心です。そのうえで、一律にどっちかではなく、Aに関してはこうしましょう、Bに関してはこれがいいですねという考え方、伝え方をしています。『普通だったらこれはないよね、ここまではできるよね』という感覚を大事にしています。もちろん、普通というものはそれぞれ感覚があるので、誤差の多少はあると思います。一般論としての線引きをできるようにしておくこと。それがいつも正解とも限らないですが、そうあるように心がけています」

 そんな“テレビの申し子”が、力を込める今回の連載で何を伝えていきたいのか。

「自分も55歳になって、この世界を志して、実際に入って40年以上の時間がたったのですが、自分の見てきたテレビ界のことを正直にお話できればと思っています。この連載を通して1度いろいろと整理することによって、これからのテレビ、これからの自分というものを、もう1度見つめ直せればとも思っています。テレビは捨てたもんじゃない。皆さんにそう思っていただきたいなと。そう考えています」

□中山秀征(なかやま・ひでゆき)、1967年7月31日、群馬県出まれ。テレビタレント。14歳でデビューして以来40年以上にわたり、バラエティー番組や情報番組の司会、俳優、歌手として活躍している。地元愛も強く、ぐんま大使、藤岡市観光大使を務めている。

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