日本もついに“開国”へ 背景に円安阻止の狙い? インバウンド消費に一縷の望み
厳しい水際対策を続けてきた日本が、外国人観光客の受け入れに向けて一気に動き出した。木原誠二官房副長官が11日に放送されたフジテレビの番組で「世界が交流を再開しており後れを取ってはいけない」と指摘。入国者数の上限撤廃や個人旅行解禁、ビザ免除措置などに一体的に取り組み「そう遠からずやる」と“断行”を強調した。事実上の“開国”宣言に等しいが、政府の決断を促したのが歯止めのきかない円安だ。
チケットショップでは両替目的の客が急増 空前の円安で外貨売り
厳しい水際対策を続けてきた日本が、外国人観光客の受け入れに向けて一気に動き出した。木原誠二官房副長官が11日に放送されたフジテレビの番組で「世界が交流を再開しており後れを取ってはいけない」と指摘。入国者数の上限撤廃や個人旅行解禁、ビザ免除措置などに一体的に取り組み「そう遠からずやる」と“断行”を強調した。事実上の“開国”宣言に等しいが、政府の決断を促したのが歯止めのきかない円安だ。
今年3月から円安が一気に進み1ドル115円から140円と6か月で22%も下落。金融緩和を続ける政府・日銀は打つ手がなく、それを見越した投機筋が円売りを続けた。その結果、迎えているのが現在の歴史的円安というわけだ。政府は6月、海外団体ツアー客の受け入れを再開しビジネス客や留学生と合わせ1日あたり計2万人を上限に設定したが、7月の訪日客はわずか14万4500人。新型コロナが拡大する前の2019年7月に比べわずか5%という目も当てられない数字だ。今月7日からは1日5万人に上限を引き上げたが、面倒なビザ取得や事前の情報登録は必須で個人の自由旅行は不可。入国制限の緩和といってもこれでは観光客数が伸びるはずもなく、「そもそも上限を設けていること自体が意味不明」(海外在住日本人)という声も出ている。
では、観光客受け入れがなぜ円安の歯止めになるのか。それは外国人観光客が日本に来ると巨額のインバウンド消費が発生するからだ。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、11年のインバウンド消費は7086億円だったが、19年には前年に比べ6.5%増の4兆8135億円にまで激増した。それがコロナ以降の2年はほぼゼロ状態になっている。外国人観光客が日本で買い物をするとき、多くは日本のお金を使うだろう。カードで支払う外国人も多いだろうが、日本はキャッシュレス決済が遅れていることもあって円買い需要は高く、空港や街の両替所ではドルやユーロを売って円を買う外国人観光客が行列をなした。
「急激に進行している円安をストップさせるためには外国人観光客をたくさん日本に呼び込んで円を買ってもらうことが必要です。政府が“開国”を急いでいるのはこれ以上の円安阻止に一縷(いちる)の望みをかけている、という側面もあるでしょう。円安対策として政府がとれる対策は今のところこれしか見当たりません」(エコノミスト)
ビザ免除、個人旅行解禁、入国者上限撤廃が実施されれば日本への観光客は一気に増える見込みだ。7日に発表された日本の水際対策の緩和では、ワクチンのブースター接種を条件に日本入国時の陰性証明書提出が不要となった。ジェトロ(日本貿易振興機構)によると、ベトナムはすでに入国時のPCR検査や新型コロナウイルスの陰性証明書の提出などの要件が不要となっており、5月15日の事前検査撤廃以降、出張者や観光客が戻り始め、今後さらなる訪問者の増加が期待されているという。現状、入国者の上限設定やビザ免除措置の停止はG7で日本だけ。今後、日本が“完全開国”に向けてさらなる緩和に動くのか。円安の動きと合わせて注視したい。