eスポーツ選手の生きる道 サッカーを志した遅咲きが見つけたもう一つの「プロの世界」
国内で普及が加速するeスポーツ界で、続々とプロ選手が誕生している。高校卒業後にプロの道を歩むことを決断した気鋭や、30歳を過ぎて身を投じた遅咲きも。人気サッカーゲーム「ウイニングイレブン」(ウイイレ)のプロプレーヤーとして活躍するまーさん選手(32)とレバ選手(19)に、プロ選手としての生き方について聞いた。前編は、まーさん選手のeスポーツ人生に迫った。
「ウイニングイレブン」プロプレーヤー・インタビュー(前編) まーさん選手
人気サッカーゲーム「ウイニングイレブン」(ウイイレ)のプロプレーヤーとして活躍するまーさん選手(32)とレバ選手(19)に、プロ選手としての生き方について聞いた。前編は、まーさん選手のeスポーツ人生に迫った。
――まーさん選手は、過去にサッカーでプロを目指したサッカー経験者です。eスポーツ界に入ったきっかけは
「2017年に出場した大会で、初めてオフラインの大会の素晴らしさを知りました。こうした中でオンラインで対戦したユーザーからプロライセンスの取得をかけた大会があるから一緒に出てみないかと誘われたのがきっかけです。自分はサッカーのプロ選手を目指していましたが、年齢的なところもあって趣味に切り替えていました。ウイイレはずっとやり続けてきたので、こっちにもプロの道があると分かった時には夢があるなと思いました」
――昨年4月の大会で優勝し、eスポーツのプロライセンスを獲得しました。
「まさかなれるとは思っていませんでした。僕はチームに所属していて、ありがたいことに個人のスポンサーさんにも付いてもらっています」
――普段の生活や練習スタイルは。
「基本的に自宅で練習しています。オンラインで対戦をしたり、それこそレバ選手だったり、ほかのプロプレーヤーと戦いながら切磋琢磨してお互いのレベルを上げられるようにやっています。時間にして、1日3~5時間ぐらいです」
――フィジカルトレーニングは
「定期的にフットサルを。ずっとサッカーをやっていたので、ボールを触りたくなる。なんか『蹴りたいな』と感じちゃうときがあって、体を動かしています」
――大会への調整はどのように。
「大会によってですが、予選の試合数をこなさなければいけないです。先日にレバ選手とペアを組んで出場した大会は1日4試合でした。大会によってモードが変わるので、モードに合わせた練習をする必要もあります。それに、僕らプロは解説として大会に呼ばれることも多いです。一般ユーザーを募った大会に解説で参加し、大会優勝者とエキシビジョンマッチで対戦するという形もあります」
「eスポーツもれっきとしたスポーツなんだな」 悔し涙で成長
――現在の国内のeスポーツの盛り上がりをどう感じていますか。
「いろいろな世代の方々に興味を持ってもらえるのはうれしいです。リアルのサッカーを見ているように観戦してくれる方もいる。盛り上がりが広くなっていると感じています」
――eスポーツを通した経験で印象的だったことは。
「今年4月に出場した大会(PES League 2019)で、アジア地域決勝からワールドファイナルに進むことができませんでした。3位で終わりました。2位以内だったらロンドン行きでしたが、世界切符には届きませんでした。悔しくて散々泣きました。来年は絶対にその借りを返しに戻ってくるぞと思っています」
――感情がむき出しになる。リアルのスポーツと同じですね。
「ありがたいことに『感動した』と言ってもらえる方が多かったです。リアルのスポーツに近い悔しさがありました。eスポーツもれっきとしたスポーツなんだな、と自分でも実感しました」
――これからの目標は。
「まだ駆け出して1年ですが、eスポーツがだんだん注目され、世間の見る目というのが変わってきていると感じています。今年は日本代表になれたので、今後も日本代表として世界大会にどんどん出て知名度を上げていきたいです。日本がプレーヤーとして一番強いんだということを世界に知らしめたい。それが一番の目標です。僕らのプレーを見て、かっこいいと思った下の世代の子たちがプロ選手を目指すようになって、どんどん這い上がってきて欲しいと思っています」
□まーさん(山川雅都=やまかわ・まさと)1987年4月6日、埼玉県生まれ。32歳。高校までサッカーに打ち込み、社会人サッカーも経験。1999年から「ウイニングイレブン」を始め、昨年4月に日本eスポーツ連合(JeSU)公認プロライセンスを取得。eスポーツチーム「TEAM HYDE」に所属。
□レバ(相原翼=あいはら・つばさ)2000年7月31日、東京都生まれ。19歳。昨夏の「第18回アジア競技大会 ジャカルタ・パレンバン」でデモンストレーション競技として行われた「ウイニングイレブン 2018」で日本代表チームとして出場し、優勝を果たした。今春にインターネットの通信制高校を卒業後はプロの道へ。現在は、プロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming」(デトネーションゲーミング)に所属。
〇…「ウイニングイレブン」シリーズ
1995年に家庭用サッカーゲームとして誕生し、世界累計販売が1億本を超える人気タイトル。2001年からeスポーツに取り組み、現在はeスポーツ世界選手権「PES LEAGUE」を展開。今秋に開催される第74回国民体育大会「いきいき茨城ゆめ国体」文化プログラムの採用が決まっている。最新版の「eFootball ウイニングイレブン2020」が今年9月12日にPlayStation4向けに発売される。元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(J1神戸)をアドバイザーに迎え、よりリアルな世界観を実現。狭いエリアを突破する「フィネスドリブル」などの新操作が加わり、スタジアムや選手の動きなど映像美も追求。世界の代表戦やダービーなど試合日程に合わせてeスポーツを体感できる新モード「Matchday」を搭載する。日本eスポーツ連合(JeSU)公認プロライセンスの保有者は現在、「ウイニングイレブン 2019」のタイトルで16人。
(ENCOUNT編集部・吉原知也/Tomoya Yoshihara)