朝井リョウ小説「正欲」、稲垣吾郎&新垣結衣で映画化決定 2023年全国ロードショー

作家の朝井リョウによる小説「正欲」が、出演に稲垣吾郎と新垣結衣を迎えて映画化されることが決定した。制作決定に伴い、各キャスト、監督、原作者のコメントが解禁となった。

稲垣吾郎(左)と新垣結衣が映画「正欲」に出演する
稲垣吾郎(左)と新垣結衣が映画「正欲」に出演する

現在撮影中、10月下旬にクランクアップ予定

 作家の朝井リョウによる小説「正欲」が、出演に稲垣吾郎と新垣結衣を迎えて映画化されることが決定した。制作決定に伴い、各キャスト、監督、原作者のコメントが解禁となった。

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 原作小説は、2009年「桐島、部活やめるってよ」で第22回小説すばる新人賞を受賞、13年「何者」では直木賞を受賞した朝井が、作家生活10周年で書き上げた渾身(こんしん)の一作。

 家庭環境、性的指向、容姿とさまざまに異なった“選べない”背景を持つ人たちを同じ地平で描写しながら、人が生きていくための推進力になるのは何なのかというテーマをあぶり出していく衝撃的なストーリーを、ある種のラブストーリーとして映画化する。監督は、「あゝ、荒野」、「前科者」などを経てその手腕にさらに期待が高まる演出家の岸善幸が務める。脚本家の港岳彦が、原作を大胆に再構築しながら監督の演出の可能性を拡げていく。生きていくための原動力が、「当たり前」とは違う形である人たちの人生を大胆な演出表現をもって映像として浮かび上がらせていく。

 横浜検察庁に務める検察官であり、自分の力でマイホームを持ち、妻と子を養う寺井啓喜(てらい・ひろき)役に稲垣が挑む。出演にあたり稲垣は「脚本を読み終えたとき、この作品に関われることを嬉しく思いました。難しい題材にチャレンジする、監督、スタッフの皆様と共に丁寧に演じていきたいと思います」と意気込んだ。

 そして、広島のショッピングモールで契約社員として働く桐生夏月(きりゅう・なつき)役を新垣結衣が演じる。特殊性癖を持つことを隠して生きる夏月という難役に挑む。新垣は本作について、「原作を読んで、何かを問われたような気持ちになりました。それは、『何が正しいか』とかそういう単純なものではないような、でも実はとてもシンプルなことのような気もしました」と感想を語った。

 また、新垣は撮影にあたり「考え続けること、他を想像し続けることをいつも以上に大切にしながら、制作に臨めたらと思っています。岸監督とは初めてご一緒しますが、初顔合わせから親身に役についての相談などを聞いてくださり、とても心強く、感謝しています。撮影では、自分なりに、夏月達が生きる世界を必死に生きたいと思います」とコメントした。

 小学校不登校の息子が世間から断絶されてしまう可能性を恐れる寺井と、自ら世間との断絶を望む夏月が、いつ、どこで、どのように交わっていくのか。生きることと死ぬことが目の前に並んでいるとき、生きることを選ぶきっかけになり得るものをひとつでも多く見つけ出したい――映画に込める想いをどう昇華させていくのかが見どころになる。映画は現在撮影中で10月下旬にクランクアップを予定し、23年に全国ロードショーされる。

 監督の岸は、「原作の衝撃と感動がずっと消えません。朝井さんの“視点”が生み出した登場人物たち、その感情をどう表現するべきか、模索が続いています。稲垣吾郎さん、新垣結衣さんをはじめとするキャストの皆さんとの対話を重ねて、少しずつ輪郭が浮かび上がってきたところです。人と人のつながりを描こうと思います。大切なのに、難しい、つながり。世界から『普通ではない』と片づけられてしまう人たちの、歪みのないつながりを描こうと思います」と手応えを語った。

 原作者の朝井は映画化に向けて、「言葉にするとは線を引くということです。明確に名付けがたい感情や現象に無理やり輪郭を与えてしまうのが、言葉です。映画には、表情、声色、沈黙など、言葉以外のものがたくさん映ります。それらが、私が書きながら取りこぼしていったものたちを一つでも多く拾い上げてくれることを願っています。そして、この物語の核が、いい映画を創るという意思以外の部分で歪められることのないよう、緊張感とともに祈っています」と期待を込めた。

次のページへ (2/2) 【写真】15万部超の大反響…朝井リョウ小説「正欲」の書影
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