野村直矢の全日本制圧プランが再開 コロナで5キロ減も復活、かつての同志との闘いへ意欲
“HARD ON FIGHT” 野村直矢が自身初の日本武道館のリングで完全復活のノロシを上げる。
毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.111】
“HARD ON FIGHT” 野村直矢が自身初の日本武道館のリングで完全復活のノロシを上げる。
全日本プロレス50周年記念大会(18日、東京・日本武道館)でジェイク・リーとの一騎打ちに臨む「REAL BLOOD」野村。実は先の王道トーナメント準決勝(8・20、東京・後楽園ホール)での激突が決まっていたが、新型コロナウィルスに感染し無念の欠場。いったんは、流れてしまったカードである。
ところが、9・18日本武道館大会でジェイクの対戦相手だったジョー・ドーリングが脳腫瘍の疑いで来日不能となった。ジェイクが「野村、もう闘えるんだろ。ケンカしようぜ!」と呼びかけ、野村も「断る理由はない!」と快諾。ジェイクVS野村が、4週間遅れで実現することになった。
欠場明けとなるが、野村は「もう、完璧」と胸を張る。8月17日の深夜に発熱し、10日間の自宅療養となったものの、ほどなくして熱も下がり、自宅でもできるトレーニングに取り組む日々だった。それでも5キロ、体重が落ちたが、療養明けからの復帰メニューをこなすと、体重も増え体力、スタミナもみるみる戻ってきた。
「ジェイクには申し訳なかった。ジェイクを突破し、優勝するつもりだったので悔しい限り。こんなに早くジェイクとやれることになって嬉しい」と、素直な思いをぶちまける。
野村の古巣・全日本制圧プランは順調に進んでいた。かつてのタッグパートナー・青柳優馬の執拗な挑発を受け、殴り込み、噛みついてきた大森北斗を一蹴。その勢いのまま王道トーナメントに参戦し、1回戦では青柳優馬、2回戦では先輩の大森隆男に勝利した。
準決勝でのジェイク戦に注目が集まっていた。かつてユニット「陣」で共闘した同志であり、大型選手同士の激突は、いかにも全日本らしい闘いになるはずだった。4週間という時間が2人の闘志をさらに高めたことは間違いない。
「幻の準決勝」は日本武道館大会。「プロレス以外でも、行ったことがない。北の丸公園に近づいたこともない」と、野村にとって初の会場となる。「両国国技館は経験している。デカイ会場は楽しみ」と、高ぶる思いを押さえきれない様子だ。
「人間万事、塞翁が馬」を思い出した。昔、中国で塞翁という老人の飼っていた馬が名馬で、みんなに褒められ喜んでいたが、逃げてしまいガッカリしていた。だが、後に立派な馬をつれて帰って来たので喜んだ。ところが老人の息子がその馬から落ちて脚を折ってしまい悲しんでいたが、そのために戦争に行かずに済んだ、その部隊は壊滅状態だったという話だ。
人生、何があるのかわからない。人間の幸不幸はわからないということ。「禍福は(吉凶は)あざなえる縄の如し」。幸せと不幸せは表裏で、交互にやって来るという諺にも通じる。
「めぐって来たチャンス。これをしっかりものにして次へ進みたい」と先を見据える
一時的なアクシデントや不幸に惑わされるなということだが、今回の野村を見ているとまさにそれだ。山あり谷あり、野村あり。
チャンスは何度もやっては来ない。チャンスはアッと言う間に通り過ぎてしまうものだ。後から「しまった」と後悔しても時間は戻らない。
「めぐって来たチャンス。これをしっかりものにして次へ進みたい」と、強いまなざしで真っすぐに前を見つめる野村。「まずはジェイク。そして王道トーナメントの優勝者・宮原健斗。参戦する以上は当然、上を目指す」とキッパリ。もちろん、ベルトも視野に入れている。
10月3日にはREAL BLOOD興行が神奈川・川崎市POST DI AMISTADで開催される。因縁の優馬、亮生の青柳兄弟を「剛力仮面」スーパークラフターUと組んで迎撃する。何とも頼もしく心強いパートナーに「青柳兄弟はスーパークラフターUのような蹴りを喰らったことはないだろうから、どうなるものか。もちろん俺もそれ以上に攻め込んでやる」と、ホームリングで負ける訳には行かない。
コロナの後遺症もなく、元気一杯。王道トーナメント欠場の悔しさ、もどかしさを全てリングでぶつける。
文字通り、実りの秋を迎えた野村直矢の「収穫」が始まる。