「ママ殺されちゃう!」モラハラDV離婚、逃亡生活も 共同親権は「恐怖しか感じない」

離婚後も父母の双方に親権を認める「共同親権」制度について、自民党法務部会はさらなる議論が必要と判断、法制審議会の中間試案決定は先送りされる見通しとなった。当事者からは反対の声も根強い同制度だが、離婚したひとり親家庭の実態とはどのようなものなのか。元夫のモラハラやDVに苦しみ6年前に離婚、東北地方で高校生の長女と中学生の次女を育てるシングルマザーのAさんに当事者のリアルを聞く。【後編】

2人の子どもを育てるシングルマザーがひとり親家庭の実態を語る(写真はイメージ)【写真:写真AC】
2人の子どもを育てるシングルマザーがひとり親家庭の実態を語る(写真はイメージ)【写真:写真AC】

元夫のモラハラやDVに苦しみ6年前に離婚、二女を育てるシングルマザーのAさん

 離婚後も父母の双方に親権を認める「共同親権」制度について、自民党法務部会はさらなる議論が必要と判断、法制審議会の中間試案決定は先送りされる見通しとなった。当事者からは反対の声も根強い同制度だが、離婚したひとり親家庭の実態とはどのようなものなのか。元夫のモラハラやDVに苦しみ6年前に離婚、東北地方で高校生の長女と中学生の次女を育てるシングルマザーのAさんに当事者のリアルを聞く。【後編】(取材・文=佐藤佑輔)

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 離婚後、元夫側の都合で養育費の振り込みは滞っていたが、ようやく関係が切れ安堵(あんど)の日々を送っていたAさん。しかし、長女が中学3年生のとき「もう一度お父さんに会いたい」と言い出し、再びトラブルに巻き込まれていく。

「できるだけ子どもの希望はかなえてあげたいと思い、承諾しました。長女が元夫の本名をフェイスブックで検索して連絡を取り、絶対に住所を伝えない、メッセージのやり取りは私にも見せるという条件で会わせることにしました」

 元夫は離婚後にスノーボードのインストラクター資格を取得しており、2人は元夫の運転で何度かゲレンデに遊びに行ったという。次女が中学生になると、初めて娘2人と元夫の3人で会うことに。そこで元夫の飲酒運転の事実が明らかとなる。

「長女はいつも飲酒運転をしていたことを知っていながら、私に言ったらお父さんと会えなくなる、もし言ったことがお父さんにバレたら責められると思い言えなかったそうです。次女が私に話したことで、長女は次女を激しく責めましたが、それは違う。怒った私が元夫に連絡を取ろうとしたら、長女からは『ママやめて。ママすごく恨まれてるから、殺されちゃう!』と止められて。結局、長女が『もう今まで通りの会い方はできません』とメッセージを送ってブロック。それきり連絡は取っていません」

介護職の国家資格を取り、約300万円ほどの年収で娘2人を育てている

 Aさんは現在、介護職の国家資格を取り、約300万円ほどの年収で高校3年生と中学2年生になった娘2人を育てている。児童扶養手当や学資保険、実家の家族の協力もあり、何とか2人が成人するまでの見通しはついているが、自身の老後については不安が残るという。モラハラやDV被害を受け離婚した当事者として、共同親権制度には強い懸念を抱いている。

「共同親権では、別れた双方の親に住居決定権や進学先、働き先の権限まで認めている。DV被害者は除外されるというけれど、DVと認定されるケースはなかなかないんです。私の場合はたまたま元夫が暴力を認める内容のメールが残っていたけど、過去にさかのぼって証拠を提出することなんてできない。今の制度でも円満に離婚した夫婦であればできていることで、それができていない人たちが訴えているのが共同親権。逃げるしかない状況の中で、その逃げ道をふさいでしまうような制度には恐怖しか感じません」

 生まれ育った地元を離れながらも「もしも元夫が現れたら……」と恐怖に怯えながら生活しているというAさん。共同親権制度には当事者の声も拾いながら、よりいっそうの議論が必要なようだ。

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