ドランクドラゴン鈴木拓が明かす、同級生・さかなクンの中学時代「化け物だと思った」

東京海洋大学客員教授、さかなクンとお笑いコンビ「ドランクドラゴン」の鈴木拓は神奈川県綾瀬市の中学、高校の同級生だ。さかなクンの自伝を、女優・のん主演で映画化した「さかなのこ」(公開中、沖田修一監督)では、映画初共演。そんな2人が10代の思い出を語り合った。

公開中「さかなのこ」で映画初共演の鈴木拓とさかなクン(右)【写真:ENCOUNT編集部】
公開中「さかなのこ」で映画初共演の鈴木拓とさかなクン(右)【写真:ENCOUNT編集部】

のん主演、公開中「さかなのこ」で映画初共演 「ミー坊」「拓くん」の同級生対談

 東京海洋大学客員教授、さかなクンとお笑いコンビ「ドランクドラゴン」の鈴木拓は神奈川県綾瀬市の中学、高校の同級生だ。さかなクンの自伝を、女優・のん主演で映画化した「さかなのこ」(公開中、沖田修一監督)では、映画初共演。そんな2人が10代の思い出を語り合った。(取材・文=平辻哲也)

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 2人は「ミー坊」「拓くん」と呼び合う仲。その交友は学生時代にさかのぼる。中学時代、さかなクンは吹奏楽部、鈴木はサッカー部だった。第一印象はどうだったのか。

 鈴木は「わぁ化け物だ! と思いましたよ」と笑いながら話す。「中1の臨海学校で、女の子たちが騒いでいるんですよ。なんだろうと思って見たら、岩場の上にミー坊が立って、タコの墨を浴びながら、『タコを取った!』って言っているんです。『ほらほら、かわいいよ』」と言うと、さかなクンは「浜に浮いていたハコフグをバスに持ち込んだから、先生に怒られました」と振り返る。

 さかなクンは小さい頃からの魚好き。鈴木は「授業中は先生の話を聞かないで、ずっと魚の絵を書いていましたよ。あの頃、たくさん絵をもらったけど、捨てちゃった。取っておいたら、すごいことになっていましたね。高校のときは同じクラスで前後の席になったこともあって、机の下でゴソゴソやっているなと思ったら、魚の剥製を作っていた」と笑い。さかなクンは「今だから言えるけど、作りたてだったので、整えていたんです!」と平然と答える。

 一方、鈴木の印象について、さかなクンは「スポーツ万能なイメージだったので、自分にないものを持っていて、かっこいいなと思っていました。さわやかでした」と言うと、鈴木は「オレのエピソード、薄くない?」と笑い。さかなクンは「同じクラスのときも違うクラスもあったけど、体操着を借りたりいろいろなことが頼みやすかったんです」と明かす。

 映画「さかなのこ」は女優のんが性別を越えて、ミー坊こと“さかなクン”を演じる異色作。さかなクンはお魚好きの“ギョギョおじさん”を演じ、鈴木拓は中学時代の恩師(映画では高校教師の設定)、鈴木先生を演じる。鈴木先生はさかなクンが所属の吹奏楽部の顧問で、拓の担任。その起用はさかなクンたっての希望だった。

「自分が描いたお魚の絵を全部取っておいてくれたのが鈴木先生です。監督さまがいるところで、拓くんに電話したら、すぐに出てくれて快く引き受けてくれました。撮影では、似たようなメガネを用意してくれて、鈴木先生を忠実に再現してくれたことがうれしかった」(さかなクン)。「こんな仕事の決まり方は初めてです。同窓会のお誘いみたいなノリで決まったよね。2人の母校だった中学での撮影で、鈴木先生を演じられるなんて、奇跡のようでした」(鈴木)。

 さかなクンは高校時代にテレビ東京「TVチャンピオン」での企画で有名人になるが、中3のときには、天然記念物カブトガニのふ化に成功し、一躍脚光を浴びた。それを見守ってくれたのが、鈴木先生だった。

主演・のんの演技に「度肝を抜かれた」鈴木拓(左)【写真:ENCOUNT編集部】
主演・のんの演技に「度肝を抜かれた」鈴木拓(左)【写真:ENCOUNT編集部】

のんがさかなクン役 鈴木「度肝を抜かれました。のんさん、すごい」

 鈴木は「この人(さかなクン)はあんまり(自慢するようなことを)言わないんで、これを機に言っちゃいますけど、水槽が狭くて、かわいそうだからと言って、水槽から出しちゃったんです。天然記念物が理科室を走り回っていたんです(笑)。そんなことが多分、潮の満ち引きと一緒だったと思うんですよ。絶対そうは言わないですけど、狙っていたんだと思うんです」と明かす。

 2人は、完成された作品をどう見たのか。

「のんさんがさかなクンをやる。これには度肝を抜かれましたね。のんさん、すごい。『2人に共通点があるとしたら、1つのことにのめりこんだときの純粋さだ』と監督がおっしゃっていたので、これを俺の意見として言いますね(笑)。性別が違うことがまったく気にならない。ほっこりしましたし、ジーンとくるところもありました。オレたちが仲のよかった同級生役を柳楽優弥君が演じているのも面白かったです」(鈴木)

「一つ一つのシーンにジーンときて、涙がダーッと。ものすっギョ~く感動しました。映画好きなんですけれども、こんなにギョー泣(号泣)したのは初めてでギョざいます。先に脚本も読ませていただいたのに、ワクワク感がありました。キャストのみなさまもそうですが、製作チームのみなさまの愛情をとても感じました。お魚の絵やはく製も自分のものにソックリ。いろんなことを思い出しましたし、みんなが幸せになってくる感じが素晴らしいですね! 最後の方で、子供たちと一緒のシーンはあるべき、さかなクンの姿だな、って」(さかなクン)

 筆者が一番感動したのは、ミー坊を見守る母(井川遥)の優しさがにじみ出ているところだ。鈴木は「ミー坊のお母さんは本当に優しい。オレも思い出すと、ぐっとくる。30年ぶりにお会いしたら、お母さんが腕を組んできて『拓くん、よく頑張っているね』とポロポロ泣いてくれたんです。オレのことも心配してくれているんだろうけど、オレを通して、ミー坊を投影していたんだな。お母さんは周囲の心配の声には耳を貸さず、『あの子がしたいようにさせます』とタンカを切ったこともあったんです。あのお母さんじゃなかったら、ミー坊の感じは違っていたと思います」としみじみ。

 さかなクンも「母はいつも優しくて、応援してくれています。お魚の前はトラックやゴミ収集車が大好きで、よく見に連れて行ってくれました。今は千葉の館山で一緒に暮らしていますが、自分がしょっちゅうは家に帰れないので、いっぱいのお魚を見てくれています。水換えは大変なのに、おまかせしちゃって申し訳ないと思っています」と話す。さかなクンの成功のウラには、偉大な母の存在があった。

□さかなクン(さかなくん)東京都出身。千葉県館山市在住。2010年には絶滅種とされていたクニマスの生息確認に貢献。12年に内閣総理大臣賞を受賞した。15年には東京海洋大学名誉博士を授与されており、22年4月には同大学の客員准教授から客員教授となった。アニメ・ドラマ・映画にも数々関わっており、主な作品として、映画「ファインディング・ニモ」(03)、「ファインディング・ドリー」(16)、連続テレビ小説「あまちゃん」(13)などがある。執筆活動では、「朝日小学生新聞」にて毎週土曜日に「おしえて!さかなクン」が連載中。

□鈴木拓(すずき・たく)神奈川県出身。1996年に塚地武雅と共にお笑いコンビ「ドランクドラゴン」を結成。2001年から放送されたフジテレビ系列バラエティー番組「はねるのトびら」で、コンビとしてレギュラー出演を果たし一躍人気に。主な出演作に映画「間宮兄弟」(06)、「ハンサムスーツ」(08)、「真夏のオリオン」(09)、「クローバー」(14)、「サマーソング」(16)、「コンフィデンスマンJP-ロマンス編-」(19)、「前田建設ファンタジー営業部」(20)、ドラマ「HERO特別編」(06)、「地獄先生ぬ~べ~」(14)、連続テレビ小説「まれ」(15)、「重要参考人探偵」(17)、「西郷どん」(18)、「どんぶり委員長」(20)など。

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