【週末は女子プロレス♯65】スターダム舞華、5★STAR GPで“朱里超え”誓う「次は私しかいないですよ!」

スターダムのシングルナンバーワン決定リーグ戦5★STAR GP(ファイブスターグランプリ)が開催中だ。旗揚げ翌年の2012年からスタートした恒例のシリーズは年々規模が拡大、今年は史上最多の26選手がエントリーされ、各地で熱戦を繰り広げている。まさに女子版G1クライマックスである。

舞華【写真:新井宏】
舞華【写真:新井宏】

女子版G1クライマックス・5★STAR GPが開催中

 スターダムのシングルナンバーワン決定リーグ戦5★STAR GP(ファイブスターグランプリ)が開催中だ。旗揚げ翌年の2012年からスタートした恒例のシリーズは年々規模が拡大、今年は史上最多の26選手がエントリーされ、各地で熱戦を繰り広げている。まさに女子版G1クライマックスである。

 昨年は“モノが違う女”朱里の初優勝で幕を閉じ、初制覇の勢いがそのまま年末の最高峰王座ワールド・オブ・スターダム奪取に直結した。朱里は現王者でもあり、一昨年も“ビッグダディ三女”林下詩美が初制覇を遂げ同王座、赤いベルト獲得への足掛かりをつかんでいる。よって、5★STAR GP優勝こそが赤いベルト奪取、トップへの最短距離と言っても過言ではないだろう。

 では、今年はどうか? もちろん、朱里、詩美ともエントリー。さらにこの2人との縁が深い舞華も初優勝を虎視眈々と狙っている。まだキャリア3年3か月の舞華ではあるが、初出場時からいつ優勝してもおかしくないほどの実力の持ち主。彼女の躍進を支えるのは、持って生まれた体力と柔道のバックボーンだ。

「生まれたときから大きくて力のある元気な子だったんですよ。幼稚園のときには駐車場のブロックを投げて壊して遊んでました。力が有り余ってたんですよね(苦笑)」

 そんな彼女の“大暴れ”を心配した両親は、力を活かした習い事をさせようと考えた。小学生になった舞華に、いくつかの格闘技を提示。そこで選んだのが、柔道だった。

「特に理由があったわけではないんです。なぜか分からないけど、これがいいと言って選んだのがたまたま柔道だったんですが、そこからハマりましたね。ただ、練習がとても厳しくて、女の子はどんどんやめていくし、練習中に吐く子もいました。子どもの柔道なのにスパルタで。ただ、オンとオフはハッキリしてましたね。オフではアイス買ってもらったりとか。ただ、オンとなるとメチャクチャで、かなり特殊だったと思います。しだいに紅一点になってしまい、女の子感がなくなり、根っからの男の子タイプになってしまいました(笑)」

 天性のパワーとスパルタ教育のおかげで、舞華はメキメキと実力をつけていった。中学高校、さらに実業団でも実績を作った。プロレスとの出会いは、中学生時代にさかのぼる。

「妹の友だちがプロレスにハマってて、まず妹が誘われて、家族ぐるみで観に行くことになったんですよ。ドラゴンゲートでした。それが私が初めて触れたプロレスで、メチャクチャ面白かったんです。選手がバチバチやり合って汗が飛び散って、気持ちよさそうだなっていうのが最初の感想でした。あと、カッコよかったですし(笑)」

 新日本プロレスも好きになった。が、プロレスをやろうとの考えを持ったことはない。しかし、柔道を続けていくうちにやがて将来の進路で悩むようになる。実際、TAKAみちのくからDMでプロレスラーにならないかとの誘いも受けた。

「ずっと柔道をやってきて闘うことに生きる意味を見出していたので、柔道をやめたとしてもプロレスラーになれるんじゃないかという考えにもちょっとなりました。でも、そのときはいろいろ悩んでて、答えを先延ばしにしていたんです」

 そんな頃、スターダムで林下詩美がデビュー。直接面識があるわけではないものの、ビッグダディを通じて存在を知っていた彼女は、柔道経験という共通点にライバル意識を抱いていたようで、このニュースに衝撃を受けた。

「ヤバい、先を越されたと思ったんです。これはもうやらなきゃ、行かなきゃと思ってTAKAさんに連絡を取りました。『あのときいただいたお話、まだ生きてますか?』と聞いて、東京に行く日を決めたんです」

スターダム所属の思いを語る【写真:新井宏】
スターダム所属の思いを語る【写真:新井宏】

「もっといろんな選手と試合がしたい」という思いからスターダム所属に

 舞華が入団したのはTAKA主宰のJUST TAP OUT。男女混合の団体だ。子どもの頃から男子と一緒に練習してきた舞華にとって違和感はなかった。その後、トントン拍子に事が運び、19年5月にデビュー。一度はケガで流れたものの、詩美との遭遇まで実現する。団体が別、しかもともに他団体との交流を控えていただけに、ある意味奇跡的と言っていい。

 デビューから8か月後の20年1・14JTO後楽園に詩美が参戦。舞華が詩美の保持するフューチャー・オブ・スターダム王座に挑んだ。敗れた舞華だが、5日後にはスターダムの後楽園大会に出現、ジュリアが結成した新ユニット、ドンナ・デル・モンドのメンバーとして、朱里とともにレギュラー参戦するようになったのである。

 ジュリア&朱里&舞華のトリオは一発でアーティスト・オブ・スターダム(6人タッグ)王座を奪取。舞華は詩美を継ぐようにフューチャー王者にもなった。これはキャリアの浅い若手のためのタイトルだが、詩美が新人としては反則レベルにまで高めた価値を舞華は落とすことなく受け継いでみせた。このとき、このベルトを懸けて何度も対戦していたのが、現ワンダー・オブ・スターダム王者の上谷沙弥である。

 やがて舞華はJTOを退団、スターダム所属選手となった。詩美はもちろん、「もっといろんな選手と試合がしたい」と思ったのが最大の理由。TAKAは快く送り出してくれた。試合数の多い女子団体でこそ、力を発揮できると考えたのかもしれない。

 順風満帆に見えたスターダムでの活動だが、最初がすごすぎたこともあって、正直、このところ目立った活躍を見せていない。とくにシングル戦線ではフューチャー王座以降、赤白ともベルトに届かず、リーグ戦やトーナメントでも成果を挙げていないのだ。ライバルの詩美、上谷には完全に水をあけられた形である。

 だからこそ、今年の5★STAR GPにかける意気込みはいままで以上に大きい。スタートこそつまずいたものの、8・28浜松終了時点で4勝2敗。連敗から4連勝で、特に8・27後楽園、詩美からの勝利で完全に波に乗った感がある。この勢いをキープすれば、初の決勝戦出場、初優勝も決して夢ではないだろう。

 残り公式戦はあと6試合。次回は本稿掲載日9・3高松の朱里戦で、10・1武蔵野の森での最終戦では、ひめかとのタッグパートナー対決も控えている。

「一昨年(優勝)が詩美、昨年が朱里ときたら、次は私しかいないですよ! ただ、朱里にはまだ一度も勝ったことがないんですよね。JTOのときにもシングルをしているし、スターダムでも(5★STAR GP公式戦で)2回闘ってる。いまは別のユニットですけどDDMに一緒に来て厳しいトレーニングをしてきた仲だし、絶対に超えなきゃいけない相手。いままでと同じレベルの私ではないですし、いろいろ乗り越えてきて技もタフさも知恵も増えました。朱里だっていろんな経験を積んでますけど、今年こそ勝ちたいです。それに、私はまだ赤いベルトをあきらめたわけではないので、現王者の朱里に勝てば挑戦権が得られるんじゃないかと思います。朱里に勝って優勝もすれば、文句ないと思うんですよ!」

 このような自信に満ちた発言を聞けたのも、7度目の詩美戦で白星を得たことが大きい。詩美との一騎打ちはこれで3勝3敗1引き分けの五分になった。宿命の対決はまだまだ続く。

「昨年(11・27代々木で)詩美の赤いベルトに挑戦するときに完全決着をつけて、なんなら終わらせようとまで考えていたんですけど、戦績も五分五分になりましたし、結局、これからも闘っていく運命なんだと思います。プロレスラーになる前から私の中心に詩美がいるんですよ。私の根本、根っこの奥深くの部分にアイツの存在が常にあるし、消そうと思っても消えない。こういう運命のもとに生きてるんだなって思います(笑)」

詩美への対抗意識から生まれた技も

 詩美には負けたくない。そんな思いから生まれた技もある。必殺の炎華落としを切り返されて詩美に負けた後、舞華はかつての師匠TAKAにみちのくドライバーIIを伝授してほしいと直訴した。JTOを退団したはいえ、TAKAは送り出したときと同様に快く伝授。そのみちドラIIでアレンジを加えた3連発が、8・27後楽園での試合を決めた。舞華の決意が見えたフィニッシュだった。

 また、舞華と言えば雪崩式ブレーンバスターは、一見の価値がある大きな見せ場だ。体幹の強さがいかんなく発揮されるこの大技は、スターダムに上がるようになってから生まれたという。

「DDMに入って、ジュリアが突っ走ってる、朱里にはプロレス格闘技の実績がある。私だけ恥をさらしちゃダメな状況で、とにかく死に物狂いでした。スターダムで揉まれて揉まれて、なんとかあの2人についていこうと、必死にもがいていた時期でしたね。そんな頃に、ジャングル叫女とやった試合(20年9・12福岡)でとっさに出たのが、雪崩式ブレーンバスターだったんです。それまで練習もしてなかったんですけど、とにかく負けたくなくて全部をさらけ出したというか、がむしゃらに出したのが雪崩式ブレーンバスター。あのときたまたま初めて出したんですけど、自分の中にフィットしたというか、スッと入ってきた。以来、ずっと使ってますね」

 みちドラIIと雪崩式ブレーンバスター。高低差の大きいこれらの技が、舞華のプロレスをよりスペクタクルなものに昇華させている。今年の5★STAR GP、スケールの大きいプロレスで、初の栄冠をもぎ取ってみせる。

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