“監督”斎藤工、伊藤沙莉主演で伝えたかったコンプラ一辺倒 エンタメ業界の過剰な世界
短編映画企画のフィナーレを飾る「MIRRORLIAR FILMS Season4」(9月2日公開)で、監督として参加したのがマルチな活躍を見せる斎藤工(監督名義は齊藤工)だ(41)。「女優iの憂鬱/ COMPLY+-ANCE」はコンプラ一辺倒の世の中を皮肉る内容。フロントランナー斎藤が世の中やエンタメ業界に感じていることは?
伊藤沙莉主演の監督作「女優iの憂鬱/ COMPLY+-ANCE」が2日公開
短編映画企画のフィナーレを飾る「MIRRORLIAR FILMS Season4」(9月2日公開)で、監督として参加したのがマルチな活躍を見せる斎藤工(監督名義は齊藤工)だ(41)。「女優iの憂鬱/ COMPLY+-ANCE」はコンプラ一辺倒の世の中を皮肉る内容。フロントランナー斎藤が世の中やエンタメ業界に感じていることは?(取材・文=平辻哲也)
「MIRRORLIAR FILMS」シリーズは、“変化”をテーマに、俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなど総勢36人の短編を集めたオムニバスシリーズだ。
「これまでのMIRRORLIAR FILMS シリーズを拝見したのですが、残るものと残らないものが、結構残酷にあるなと感じました。作品にはそれぞれのフィロソフィー(哲学)みたいなものが詰まっていると思うんですけど、見る側はもっと脱力しながら見ているものなんです。観客側は、僕らが丁寧に作った弁当を、悲しいかな、雑に食べる。僕はそんなことを知っているので、ちゃんと残るものを作りたかったんです」
齊藤監督の「女優iの憂鬱/ COMPLY+-ANCE」は女優・伊藤沙莉が、コンプライアンスを気にしすぎるスタッフたちから取材を受ける風刺コメディー。売れっ子女優の伊藤は映画のプロモーションのため、カフェで取材を受けるが、取材者側(斎藤ら)はコロナ禍でのルールやマナーを過剰に反応。伊藤の発言も「別の意味で受け取る人もいるから」と意味不明な言い直しを要求したり、過剰なモザイクを入れようとして、伊藤は戸惑う…。
「8年前に、10人の監督が短編を撮るというプロジェクトがあって、これは形になっていないんですが、本自体はもともと伊藤さんで当て書きをしていたものです。伊藤さんと事務所の方にお見せしたら、『これはいい』と言ってくださったんですが、当時からお忙しくて、実現しなかった。今回、この企画を頂いて、今、セルフリメイクするしかないと思ったんです」。
「カメラを止めるな!」の新進女優・秋山ゆずきを起用したオリジナル「COMPLY+-ANCE コンプライアンス」(2020年)はコロナ禍前に製作しているが、オリジナルよりメッセージ性が強くなった感じを受ける。
撮影はわずか12時間 ほぼ一発撮り「結構なパワープレーではあったんです」
「コロナ禍になって、余計にコンプライアンスの意味がしっかりと存在していないというのを感じたんです。物語はほぼ僕の実体験を基にして、バージョンアップしました。過剰なコンプライアンスのルールも、多くの人が形として、ポーズとして見ていて、意味を理解しようとしない。今は、良くも悪くも表裏一体な部分が透けて見える部分があると思うんです。例えば、見ている人も『バーター』(※有名タレントの出演と引き換えに同じ事務所のタレントが出演する)なんて言葉も理解していますから」
撮影はわずか12時間で、ほぼ一発撮り。「前作にも出ていただいた平子祐希(アルコ&ピース)さんが忙しくて、午前中集まって、お昼には出るという慌ただしいスケジュールだったんです。僕は(取材者役をやりながら、実際の)カメラも撮っていたので、結構なパワープレーではあったんです。実は、もう1回撮り直したところもあるんです」と反省の言葉も口にするが、時間のない切迫感から、妙なライブ感が出ている。
□斎藤工(さいとう・たくみ)1981年8月22日、東京都出身。長編初監督作「blank13」は国内外の映画祭にて8冠受賞。HBO asiaのプロジェクトで日本代表監督を務めたFOODLORE「Life in a box」が、Asian Academy Creative Award2020にて、日本人初の最優秀監督賞を受賞。今年は主演映画「シン・ウルトラマン」が大ヒット。出演映画「グッバイ・クルエル・ワールド」(9月9日)の公開も控える。
・スタイリスト:yoppy(juice)
・ヘアメイク:KAZUOMI(メーキャップルーム)