朝ドラで注目“料理男子”俳優・池田航、食を通じた社会プロジェクトに情熱を注ぐ理由
朝ドラで注目の若手俳優は、フォロワー120万人を抱えるTikTokerで、オムライス作りが得意な料理人――。NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」出演で話題の池田航(27)だ。「リラックマ」のキャラを模したオムライスを「こども食堂」で子どもたちに無料で提供する、食を通じた社会プロジェクトにも力を注いでいる。
TikTok120万フォロワー・池田航 リラックマ×オムライス×こども食堂の社会プロジェクトに尽力
朝ドラで注目の若手俳優は、フォロワー120万人を抱えるTikTokerで、オムライス作りが得意な料理人――。NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」出演で話題の池田航(27)だ。「リラックマ」のキャラを模したオムライスを「こども食堂」で子どもたちに無料で提供する、食を通じた社会プロジェクトにも力を注いでいる。
そもそも上京した当時の夢は、「シェフになる」ことだった。高校時代にイタリア料理店のキッチン担当で3年間バイトし、高校の調理科で学び卒業と同時に調理師免許を取得した。そこから東京に出てきて、フランス料理店の門をたたいた。
5年間正社員として働き、メイン料理を任されるほど、その店のシェフに評価された。一方で、「自分が今作っている料理がすべてなのか」と料理人としてのさらなる経験と知見を求めて、悩んだ末に店を卒業した。ここで転機が。「次の店をどうしようと考える中で、料理人の生き方は、厨房でご飯を作るだけじゃないと感じるようになったんです。そこで、表現、芸術的感性という意味で通じていて、自分の可能性を広められると思った役者の道を選びました」。
2019年4月、TOKYO MX2のドラマ「鎧勇騎 月兎」主人公・暁月勇輝役で主演デビュー。ツイッター応募の約400人の中から勝ち取った。監督の計らいで料理人を目指すヒーロー役を書いてもらい、試行錯誤しながらシリーズ出演で演技を磨いた。
そして、「ちむどんどん」ではヒロイン・暢子(黒島結菜)と共に働く料理人・桃木雄三役で“朝ドラデビュー”を果たした。オーディションでは、キャベツの千切り、ジャガイモの皮むき、タマネギのみじん切りを含めた選考をクリア。撮影現場では、料理長・二ツ橋光二を演じる高嶋政伸とのほっこりエピソードもあるそうで、「撮影中にちょうど僕の料理本が出版になりました。皆さんにプレゼントさせていただいたのですが、高嶋さんから『オム王子』と呼んでいただいて、『これどうやって作るの?』と聞いていただくこともありました。黒島さんも皆さん気さくで、すごくありがたいと感じています」と語る。
今回、「こども食堂」のプロジェクトは、リラックマを手がける「サンエックス株式会社」とコラボ。全国を回るべく、現在クラウドファンディングで支援金を募集している。「『こども食堂』のことをより多くの人に知ってもらい、自分の得意な料理で少しでも社会に貢献できれば」。そもそものきっかけは、自身のTikTokだった。約3年前にアップした「リラックマオムライス」の調理動画が「想像以上の反響」で4500万回再生を超えてバズった。「ある時、エンタメとのコラボで社会問題を可視化して広める『GIFT』事業に取り組んでいる方から、『こども食堂でリラックマオムライスを作ってみませんか』とお声がけをいただきました。こども食堂が貧困対策だけではなく、食育や地域の居場所を提供することに力を入れていることを、その後の学びで初めて知り、食育インストラクターの資格も持っていたので、食育の知識も役立てることができると思いました」。
そこから行動を実践。GIFTがこども食堂を選び、今年6月に地元・富山で初めてのこども食堂の企画を開催。3年前から月に1~2回出演している富山テレビの生中継も入った。7月には、札幌市で地元の高校生と大学生のボランティアの協力を得て第2回の開催に成功した。
「表舞台で活動をしている以上は、自分の意見をちゃんと持ち、社会について知っておく必要がある」
社会事業を継続させる大変さを実感する中で、活動への思いを強めている。「僕はこれまで、俳優として作品に出させていただいたり、SNSをやったり、こうした活動も社会貢献につながると思っています。さらに、自分がやってきた経験を生かしてできることがあるんじゃないかと強く感じるようになりました。それがこども食堂のプロジェクトです。たまたま自分が好きで得意だった料理、オムライス、SNS、すべてがつながりました。準備に2年かかりましたが、いい形で進めることができています。こういった表舞台で活動をしている以上は、自分の意見をちゃんと持ち、社会について知っておく必要があって、社会を良くしたいという思いを率先して行動に移すことも大事だと思っています。知名度を生かした社会貢献活動を続けていきたいです」と力強く語る。TikTokについても、「数字は大事ではありますが、僕も見てくれる人も楽しめて、結び付くための何かになれば。僕のTikTokを見たことで、こども食堂のことを知ってもらえたらうれしいです」と意気込みを示す。
俳優を始めて4年目。料理人時代の経験を踏まえて、「人のつながり、信頼を大事に俳優業に取り組んでいます」。目指しているのは、「『これはやっぱり池田航に演じてもらいたい作品だ』『池田航だからこの役をやってもらいたい』と言われる存在です」。人の縁を大切にしながら、研さんを積んでいく覚悟だ。
料理人と役者で共通するところはあるのか。「コース料理と、ドラマ・映画撮影は近いところがあると思っています。コース料理は、すべての料理・サービスを完成させないといけません。コースには前菜、スープ、肉、魚、デザート、すべてに担当の料理人がいて、接客を含めて全部がつながっています。その上で、お客様をもてなして、感動していただく。これが理想です。演技の世界では、ワンシーンに必ず意味があって伝えたいことが含まれています。そこだけうまくいっても、他のシーンで目標を達成しないと、何も伝わらなくなってしまいます。照明さん、音響さん、大道具さん、小道具さん、メイクさん、脚本・演出の方がいて、全員で1つの作品ができるわけです。コミュニケーションが大事で、団結して成し遂げる。そこが共通点なのかなと思っています」。興味深いことを教えてくれた。
さらに、「店の料理人を統括するシェフが求める味への理解がないと、お客さんに出せる料理は作れません。監督の思いを演者が理解できなかったらいい作品にならないと思います。それに、役者がどれだけせりふの言い回しを勉強して納得の演技をしても、作品を見る人が感じることはさまざまです。料理も同じで、どれだけ考えて自信のレシピを出しても、『おいしくない』と感じる人もいます。正解がなくて難しいけど、楽しい世界。だから、料理も演技も、これからも続けていきたいです」と声を弾ませた。
□池田航(いけだ・こう)、1995年5月1日、富山県生まれ。2019年4月、ドラマ「鎧勇騎 月兎」で主演デビュー。同年10月、ドラマ「グランメゾン東京」(TBS系)にレギュラー出演したほか、22年4月公開の映画「やがて海へと届く」で映画初出演するなど出演多数。“料理男子”として今年3月には料理本「たまごだらけの癒しレシピ」を出版した。