プロプレイヤー・じぇいそるが語る世界のポーカー 聖地ラスベガスは「両極端」

6月、サミーはポーカープレイヤーとして活躍するじぇいそるとのプロ契約締結を発表した。若くして海外に飛び出し、確かなポーカーの実力とともにこれまでマカオ、フィリピン、ラスベガスで活動している。最近ではYouTubeでの発信を精力的に行うじぇいそるに、各国のポーカー事情の違いや、ポーカーで生計を立てる上での考え方などを聞いた。

米国のポーカールームは日本でいう雀荘だという【写真:ENCOUNT編集部】
米国のポーカールームは日本でいう雀荘だという【写真:ENCOUNT編集部】

アメリカにおけるポーカーは「国民みんながやるゲーム」

 6月、サミーはポーカープレイヤーとして活躍するじぇいそるとのプロ契約締結を発表した。若くして海外に飛び出し、確かなポーカーの実力とともにこれまでマカオ、フィリピン、ラスベガスで活動している。最近ではYouTubeでの発信を精力的に行うじぇいそるに、各国のポーカー事情の違いや、ポーカーで生計を立てる上での考え方などを聞いた。(取材・文=片村光博)

 ポーカーの世界に憧れを抱き、想定外の事態に見舞われながらもマカオでポーカープレイヤーとしてキャリアをスタートしたじぇいそる。今はカジノの聖地・ラスベガスを拠点としているが、未経験者の視点から気になるのは、各国のポーカーのレベルや生計の立て方だ。

 意外なことに、誰しもがカジノと聞いてイメージするであろうラスベガスが全てにおいてトップというわけではなく、レベルの高低は「両極端です」と明かす。その理由は、アメリカにおけるポーカーの浸透度が関係しているという。

「もちろんレートの高いゲームだとレベルも高いです。ただ、レートの高いゲームはごく一部の人しかおらず、95%は低いレートでやっています。その95%の人がやるレートは、おそらく世界で一番レベルが低いです。

 ポーカーはアメリカで生まれたゲームですし、日本で言うババ抜きのようなもの。国民みんながやるゲームなので、競技者人口が多い分、上手くない人も多いし、ギャンブルというよりも単純にゲームとしてポーカーを楽しんでいる人が多いです」

 そして、この傾向はラスベガスに限らない。

「確かにラスベガスのカジノはすごく目立ちますが、アメリカはほぼすべての州に、カジノはなくてもポーカールームがあるんです。日本で言う雀荘のような感じですね。法律上、スロットやバカラがなければ、客同士の対人ゲームであればOKなんです。そうした背景もあり、ポーカーは“アメリカ全土でみんながやっているゲーム”ですね」

 では、ラスベガスの前に拠点としていたマカオやフィリピンの方がレベルは高いのか。じぇいそるは「それもあると思います」としつつ、ポーカープレイヤーとして辿ってきた“変化”にも言及している。

「僕自身、マカオ時代の方が今よりもレートの高いゲームをやっていたんです。レートの低いゲームは簡単でも、レートの高いゲームでは厳しい日もありました。年齢を重ねるにつれて、徐々にあまり冒険しなくなりました。結婚もしていますからね(笑)。

 昔は無茶したこともありますし、20代前半の頃は『スタープレイヤーのようになりたい』とも思いました。でも、そのためには実力に運も重ならないと難しいと気付いたんです。30歳までにスタープレイヤーになれていれば考え方も違ったかもしれませんが、今はそこを目指しているわけではありません。ポーカーは好きなので続けますが、やり切ったと言えるくらいまでやってきました。今はポーカーの第一人者として広めていけたらなという思いでやっています」

プロになった瞬間の変化も明かした【写真:ENCOUNT編集部】
プロになった瞬間の変化も明かした【写真:ENCOUNT編集部】

トーナメントは「運の要素が大き過ぎる」 そこに潜む“危うさ”も指摘

 スタープレイヤーを目標に置かず、堅実にプレイするという方針は、一般的なポーカープレイヤーのイメージからすると意外かもしれない。トーナメントの高額賞金など、一部の華やかさゆえに外野は勘違いしがちだが、決して常に冒険しなければならない世界ではない。実はじぇいそるも、一獲千金のトーナメントへの出場回数は多くないという。

「17年間ポーカーをやっていて、トーナメントに出た回数は40回ほど。最高賞金も700万円くらいだったと思います。しかも、出るとしたら基本的に高額なトーナメントにしか出ていません。キャッシュゲームで日銭を稼いでいた時期があったこともあり、そもそも最初はトーナメントにお金を使うことにすごく抵抗があったんです」

 その理由は、トーナメントが含む“危うさ”にあると語る。

「今、日本で流行っているのはトーナメントです。でもトーナメントは分散が大きすぎて、収束するまでに多大な時間が必要です。日本のトーナメントで活躍されている方々も、もちろん実力もありますが、運の要素が大き過ぎるんです。

 だから僕はどちらかというと、自分へのご褒美として出たり、キャッシュゲームをやって余裕のある部分で出たり、という感じです。それが理由でなかなかトーナメントに出られなくて、大きな活躍もできなかったという面もあります。でも、逆にお金を無視してやってしまうと、人生を棒に振ってしまうこともある。僕の周りにもそんな人はいましたからね」

 職業としてポーカーをプレイし、これからも続けていく決意があるからこそ、無謀な冒険で全てを失うようなことはないように自制してきた。一方、日本では結果として“勝ち”と“負け”しかないトーナメントの人気が高いこともあり、そのスタンスが理解されないこともあると吐露する。

「今の日本はトーナメントで勝つこと=強いという認識での流行り方なので、トーナメントで負けると“弱い人”になってしまうんです。僕もサミーさんと契約させていただいて、プロになった瞬間からYouTubeのコメント欄がすごく厳しくなったんです。もちろん変なコメントは気にしていませんが、WSOP(ワールドシリーズオブポーカー=ラスベガス開催のポーカーの世界的トーナメント)で負けて『それでもプロかよ』『サミーが外れくじ引いたな』というコメントが100件くらい来ました。

 でも、WSOPは参加人数的にも生涯かけて優勝できるかできないか、というイベント。負けたことに関して言い訳はしませんし、分かってほしいとも言いませんが、複雑な気持ちであることは確かです。トーナメントは勝ちと負けしかないから、『負けた方が弱い』となってしまうのはある意味、仕方ないこと。僕としてはYouTubeの活動なども通して、見てくれている人に『下手だな』と言われるよりも、『次頑張ってね』と言ってもらえるようなプレイヤーになれるのが一番いいかなと思っています」

 派手な実績を追いかけて自分を見失うことなく、ライフワークとしてポーカーと真摯に向き合い、日本の第一人者キャリアを積み重ねてきた。だからこそ、ポーカーに興味を持っている人々に伝えたいのは、一獲千金のロマンではなく、仲間たちとゲームに取り組むことの楽しさだ。

「ポーカーはお金をかけなくても面白いですし、サミーのアプリ『m HOLD’EM』を使って楽しむこともできます。家でコタツの上でもできるゲームです。今までの日本だと花札やUNOでしたが、そこに混ざって家族で楽しんでもらってもいいと思います。自分でコミュニティーを形成したり、友達を作ったりするのにすごく向いていますね。

 海外でポーカーをやってきて、17年間でいろいろな国で友達がめちゃくちゃ増えました。日本国内でも同じことが言えると思いますし、いろいろな人との出会いもつかめるのが、ポーカーのいいところだと思っています。好きなものが同じ人と話すのは楽しいですからね」

 ポーカーがより身近な存在になっていくために、これからも精力的な発信を続けてくれるはずだ。

□じぇいそる 1983年11月26日、三重県出身。ラスベガス在住のポーカープレイヤー。22歳でマカオへ旅立ち、以降15年間の間ポーカープレイヤーとして活動。また、2020年からはYoutuberとしてテキサスホールデムポーカーの情報を発信している。22年6月にサミーとプロ契約を締結した。

ツイッター:https://twitter.com/jaysol_brothers

YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCOceo5841EN6rv8mCknaFeQ

□テキサスホールデムポーカーが遊べるアプリ
m HOLD’EM(エムホールデム):https://mpj-portal.jp/game/

□撮影場所
m HOLD’EM目黒:https://mpj-portal.jp/official/meguro/
日本最大級のPOKER HOUSE&BAR

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