苦境のローカル線、車両を手作業で清掃「これも超零細鉄道会社の実態です」 社長ツイートが注目

社員が手作業で電車を清掃する画像を投稿し「これも超零細鉄道会社の実態です」とローカル線の苦境をつづった野岩(やがん)鉄道社長のツイートが反響を呼んでいる。いったい、何があったのだろうか。担当者に聞いた。

野岩鉄道「6050型」の車両
野岩鉄道「6050型」の車両

社員がブラシやホースを持って車両を清掃 画像投稿が反響

 社員が手作業で電車を清掃する画像を投稿し「これも超零細鉄道会社の実態です」とローカル線の苦境をつづった野岩(やがん)鉄道社長のツイートが反響を呼んでいる。いったい、何があったのだろうか。担当者に聞いた。(取材・文=水沼一夫)

「東武鉄道との共通運用がなくなり、東武の自動洗車機を通すこともできなくなりました。これも超零細鉄道会社の実態です」。23日に野岩鉄道の二瓶正浩社長がローカル線が置かれた厳しい現状をツイートした。添えられた写真は、4人の社員が柄のついたブラシやホースを持って手作業で車両を清掃しているもの。2両編成で、かなりの時間がかかりそうだ。

 鉄道ファンからは「暑い中ご苦労様です」「頑張って下さい。応援します」「洗車機通さなくても、社員で洗えば洗車機よりきれいになります」といった激励の声が上がる。「ボランティアで洗車体験募集と言う内容で洗車人員を確保されてみては如何でしょうか!?」との反応もあった。

 野岩鉄道は1986年に開業。運営する会津鬼怒川線は、栃木県日光市の「新藤原駅」から福島県南会津町の「会津高原尾瀬口駅」まで30.7キロの区間を運行し、駅数は9駅(有人駅は5駅)のローカル線だ。

 洗車しているのは「6050型」の車両で、もともとは東武が開発。長年、東武と会津鉄道の3社で運用していた。

 しかし、今年3月のダイヤ改正で、東武と会津鉄道が同車両の使用を取りやめ、野岩鉄道だけが継続して運用することになった。そのため、運行ルート上、東武の自動洗車機を使うことができなくなった。

「6050型の電車は現在のダイヤですと、東武線の鬼怒川温泉駅までしか運行しておりません。洗車設備がないところまでしか走らないようになったので、現在手洗いの洗車をしているといういきさつになります。ダイヤ改正前は東武鉄道様とそれぞれお互いの車両を使い合って電車を運行していました。東武鉄道様の車両基地のある駅まで行くことがありましたので、洗車はそのときに実施していました」(野岩鉄道担当者)

 手作業での洗車について「6050型がデビューして36年。私の知る限りは弊社内で実施するのは、初めてだと思います」と続けた。

レトロなボックスタイプの「6050型」車内
レトロなボックスタイプの「6050型」車内

乗客数はピークの6分の1 これまでにない厳しい経営状況

 コロナ禍で地方のローカル線は苦境が続く。観光などの「定期外収入が98%」という野岩鉄道も例外ではない。もともと、乗客数は1991年の117万人をピークに、過疎化や少子化などの影響を受け、コロナ前に3分の1程度まで落ち込んでいた。

 コロナで追い打ちをかけられ、2021年度の乗客数は17万6000人まで減少。ピークの6分の1程度となり、これまでにない厳しい経営状況まで追い込まれた。「今現在は、2019年をコロナ禍前としますと、お客様の乗降者数で約50%程度、収入面で70%程度までは回復していますが、依然厳しい状況」という。

「6050型」は製造から36年が経過した歴史ある車両だ。“野岩鉄道の顔”というべき存在で、今後も観光資源の1つとして運行を続ける予定を立てている。

 故障しても部品の調達が困難になっているが、愛着のあるファンも多い。「私たちには6050型を生き残らせる、という使命があります」とテーマを掲げ、観光列車化に向けた改修をする費用を集めるためのクラウドファンディングを10月7日まで行っている。

 沿線には龍王峡と呼ばれる渓谷や、湯西川温泉を始めとする温泉地のほか、男鹿高原駅は秘境駅としても知られる。「乗降客数が平均すると1日1人に満たない年もありますので、関東の秘境駅としての魅力もあります」。情緒ある路線を残し、盛り上げていくためにも、車両のメンテナンスは欠かせない。手作業であろうと、地道な努力を続けている。

「ファンの方からは『応援しています』という言葉をいただいている。6050型は沿線以外でも東武沿線のお客様も思い入れがある車両と思っています」と担当者は力を込めた。

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