ワンピース考察、なぜ盛ん? 緻密な伏線、ネットの発達、長期連載で一大ジャンルに

映画「ONE PIECE FILM RED」が公開10日間で観客動員数500万人、興行収入70億円を突破し、シリーズ最高記録を更新するなど大ヒットを続けている。原作漫画も完結に向け最終章に突入するなど盛り上がりを見せているが、ファンの間で盛んに行われているのが今後の展開を予想する伏線考察だ。ブログやYouTubeの他、関連書籍が多数出版されるなど一大ジャンルとなっている“ワンピ考察”だが、なぜ同作はここまで考察が盛んなのか。フジテレビ系列「ほこ×たて」や「99人の壁」などメディアにも多数出演しているワンピースファンの神木健児氏に聞いた。

「ほこ×たて」や「99人の壁」などメディアにも多数出演している神木健児氏【写真:本人提供】
「ほこ×たて」や「99人の壁」などメディアにも多数出演している神木健児氏【写真:本人提供】

映画「ONE PIECE FILM RED」がシリーズ最高記録を更新するなど大ヒット

 映画「ONE PIECE FILM RED」が公開10日間で観客動員数500万人、興行収入70億円を突破し、シリーズ最高記録を更新するなど大ヒットを続けている。原作漫画も完結に向け最終章に突入するなど盛り上がりを見せているが、ファンの間で盛んに行われているのが今後の展開を予想する伏線考察だ。ブログやYouTubeの他、関連書籍が多数出版されるなど一大ジャンルとなっている“ワンピ考察”だが、なぜ同作はここまで考察が盛んなのか。フジテレビ系列「ほこ×たて」や「99人の壁」などメディアにも多数出演しているワンピースファンの神木健児氏に聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

「ONE PIECE(ワンピース)」は、尾田栄一郎氏による週刊少年ジャンプ連載中の少年漫画。連載開始は1997年、2015年には「最も多く発行された単一作家によるコミックシリーズ」としてギネス世界記録に認定されるなど、日本を代表する長編連載漫画となっている。

 海賊王を夢見る少年モンキー・D・ルフィが仲間たちとともに「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」をめぐり繰り広げる海洋冒険ロマンという王道の少年漫画だが、一方で作中には多数の伏線や暗示が散りばめられており、長年のファンによる考察も一大ジャンルとなっている。

 ワンピースの考察は一体いつ頃から行われるようになったのか。ワンピースには「アラバスタ編」「空島編」「頂上戦争編」など、ルフィたちが訪れる島やエピソードごとに大まかな区分けがあるが、神木氏は「本格的な考察がされるようになったのはアラバスタ編の始まった2000年頃からではないか」と推察する。

「それまではルフィと仲間たちをめぐる冒険が物語のメインだったんですが、アラバスタ編から『古代兵器』や『“D”』、『空白の100年』など、謎めいた単語が登場するようになり、世界最高権力の『五老星』や800年前に世界政府を作った20人の王の末裔『天竜人』など、壮大な世界観の全体像が見えてきたんです。ストーリーが複雑になり、何度も読み返すことで新たな発見がある。ちょうどネットの黎明期とも重なり、ファンの間で考察スレッドが立ち、議論が交わされるようになりました」

 ネット上で週刊連載の感想を語り合うという文化と、謎めいた伏線の要素がマッチ。そうして生まれた考察がさらに大きく盛り上がるようになったのは、長期連載という要素も絡んでいると神木氏は言う。

「伏線回収というものは他の漫画でもよくあることですが、ワンピースがすごいのは、10年、20年以上前のエピソードやほんの些細な一言が後々大きな伏線となってくること。それはこれだけの長期連載でなければできないことですし、連載が長いぶん、数多あるエピソードの中のどれが重要な伏線になっているのか容易には想像できない。それがこれだけ考察が盛んになった理由ではないでしょうか」

公開中の映画のメインキャラ「赤髪のシャンクス」も格好の考察対象

 連載25年を迎えるなかで生まれた考察の数々。中でも今回の映画でメインキャラクターを務める「赤髪のシャンクス」は、連載第1話目から登場するルフィ憧れの大海賊だが、その存在は多くが謎に包まれており、ファンからの格好の考察対象となっている。

「有名なものが、実は悪い人物で裏の顔がある『黒幕説』と、世界を作った20人の王の末裔である『天竜人説』でしょうか。映画公開前のバラエティー番組で『シャンクスはいいやつ? 悪いやつ?』と単刀直入に聞かれた尾田先生は『映画を見れば分かります』と答えていましたが、僕が映画を見た感想としては少なくとも黒幕説は否定されたかなと。ただ、依然として謎が多いキャラクターで、天竜人説を補強するような根拠や、五老星よりはるかに高い地位を持つ謎の人物『イム様』との関連を裏付けるようなものも……。一つ謎が解けたと思えば、さらに別の謎が深まるばかりです」

 日本が誇る名作漫画であることは疑いようがない一方、単行本100巻を超える長期連載のため、読みたいけどなかなか手が出せないという人や、続きは気になるけど途中で読むのをやめてしまった人という人もいる。神木氏は意外にも、これからワンピースを読もうとする人に向けて「とりあえず伏線など気にせずに読んで」とアドバイスを送る。

「あまりに伏線や考察が盛ん過ぎて、読んだことのない人が『なんだか難しそう……』と手が出しづらくなってしまっている側面もあるのかもしれません。ワンピースの本質はあくまで少年漫画。難しいことを考えなくても、ストーリー自体がずば抜けて面白いですし、サブキャラ一人一人にもさまざまな過去や魅力があります。完結してからまとめて読むのもいいですが、週刊誌で毎週読むのが一番楽しいということは25年読んでいる僕が保証します。読み始めて遅すぎるということはない、一人でも多くの方とワンピースの最後を一緒に走り抜けたいですね」

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