高嶋政伸は大のホラーファン 朗読劇でイタコ話「死後の世界はどんなものか父に聞きたい」

NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」での好演も話題の俳優・高嶋政伸(55)が、3年ぶりに「リーディングセッション」を主催する。1995年からスタートし、今年で16回目。ゲストとともに、感銘を受けた文学作品や自身のオリジナル詩を朗読する。ライフワークとなった朗読にどんな思いが?

3年ぶりの朗読劇に挑む高嶋政伸【写真:小黒冴夏】
3年ぶりの朗読劇に挑む高嶋政伸【写真:小黒冴夏】

28日に「リーディングセッションVol.16」開催 異色作「頓田町の聞奇館」を朗読

 NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」での好演も話題の俳優・高嶋政伸(55)が、3年ぶりに「リーディングセッション」を主催する。1995年からスタートし、今年で16回目。ゲストとともに、感銘を受けた文学作品や自身のオリジナル詩を朗読する。ライフワークとなった朗読にどんな思いが?(取材・文=平辻哲也)

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「リーディングセッションVol.16」(8月28日夜、午後6時30分と午後9時15分からの2公演、BODY&SOUL 新渋谷公園通り店)は直木賞作家・木内昇(きうち・のぼり)氏による異色作「頓田町の聞奇館」を、アングラ界の鬼才・ばらちづこを始め、山崎佳美、MARISAを迎え、坂本弘道のチェロ演奏にあわせて朗読するもの。

 昨年から文芸雑誌「波」でエッセー連載をスタートした政伸。今や、文学はライフワークにもなっている。「もともと、本はそんなに読む方ではなかったんですが、数年前から突然、詩や短編小説を書き始めまして、書いた短編小説を仲の良い芥川賞作家の川上未映子さんにずっと送り続けていたら、川上さんから新潮社さんを紹介していただいて、『波』でエッセーを書かせていただく事になりました。最近は、その担当者の方が送ってくださる本をよく読んでいます」。

 この「リーディングセッション」はプロ・アマチュアを問わず、自身が気になる表現者たちを迎え、演出も手掛けている。きっかけは、1993年4月に故・青井陽治さん演出の朗読劇「LOVE LETTERS」(パルコ劇場)に出演したことだった。

「物語の後半に、涙が流れて感情が制御できないような状態になったんですね。これは何だったんだろうとずっと気になっていて、熱血漢で優しいホテルマンを演じた『HOTEL』(1990~2002年)がご好評をいただいた時期だったんですが、もっと違う役柄をやってみたい、とも思っていたんです。ちょうどその頃、ニューヨークに住んでいた友人から、欧米ではリーディングが映画や演劇の世界ですごくパワーがあって、映画化や舞台の上映権にもつながる事もあるという話を伺って、僕がやりたかったのは、これだ! と思ったんですね」

 第1回は26歳の青年が奇妙な音に悩まされる「トカトントン」(太宰治)。以降、内田百閒「件」、坂口安吾「桜の森の満開の下」、樋口一葉「十三夜」、岡本かの子「老妓抄」、チェーホフ「桜の園」など多彩な作家を取り上げ、山田五十鈴や神田うの、市村正親が出演した回もあった。「デビューしてからずっとアウトプットを続けてきたんですが、自分で選んだ作品を、自分のやりたい人とやりたいようにやることでインプットする場を持ったという感じがします」。

 中には観客からの持ち込みの作品をその作者と共に朗読したことも。「作者の方がご自分で書いたものを自分で朗読するのはすごい説得力があって、朗読は技術じゃないんだと思いました。プロの方もいれば、アマチュアの方もいる。そういう場をつくることによって、いろんな思いを持ったいろんなタイプの表現者の人たちが集まってくるので、勉強会でもあり、実験の場にもなっています」。

占いは“考えるヒント” 「どう自分の人生に生かすのか、自分自身で考えることが大事」

「頓田町の聞奇館」は短編集「占(うら)」に収録された1本で、結婚に悩む女性がたまたま出会った、イタコの「口寄せ」に魅せられていく姿を描く。会話が多いことから、5人のメンバーによるかけ合いが聞きどころになる。

「僕は占いが好きで、悪魔払いとか、奇怪な世界が大好きなホラーファンでもあるんです。死ぬ前に一度でいいから、本物のイタコさんに会って、父(高島忠夫さん)を呼び出してもらって、死後の世界があるなら、どんなものなのかを聞いてみたい」

 占いは“考えるヒント”だという。「占いをしてもらったら、それをどう自分の人生に生かすのか、自分自身でしっかり考えることが大事なんだと思います」。また、政伸によれば、木内さんが描いているのは、手を伸ばせば、届く幸せ。「次男が3月に生まれましたが、子供たちと一緒に散歩している時や、一緒に缶ジュース飲んだりする、そういう何気ない時に幸せを感じるんです」。

 今回、お披露目となる政伸オリジナルの詩「ムシムシ」も、今年5歳になる長男とのふれあいの中で生まれたものだ。「息子が、ある時から『ムシムシという得体の知れない存在がいる』って言い始めたんですよ。ふとした瞬間に『ムシムシが来る』『ムシムシの音がした』というんです。ムシムシは狙われたら最後らしくて、机も椅子も加湿器も何から何まで全部食べちゃうらしいです。しかも色は黒や青と自在に色を変えながら。僕らには見えないんだけど、人間をはるかに超えた存在が息子には見えているのかも、と思って書いた散文詩なんです。『頓田町の聞奇館』とカップリングしたら、面白そうだと思ったんです」。朗読ライブは政伸の集大成であり、実験の場。いつもとは違った顔を見せてくれそうだ。

□高嶋政伸(たかしま・まさのぶ)1966年10月27日、東京都出身。NHK連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」(88)でデビュー。90年に放送開始したTVドラマ「HOTEL」は、2002年まで続く人気シリーズとなった。NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」に出演中。近年の出演映画として「臨場-劇場版-」(12)、「暗殺教室」(15)、「エイプリルフールズ」(15)、「ラプラスの魔女」(18)、「響-HIBIKI-」(18)、主演作「アパレルデザイナー」(20)、「犬鳴村」(20)、「仮面病棟」(20)、「ボクたちはみんな大人になれなかった」(21)など。8月28日には「リーディングセッションVol.16」(夜2公演、BODY&SOUL 新渋谷公園通り店)を主催する。

※高嶋政伸の「高」の正式表記ははしごだか

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