「めだかやドットコム」代表・青木崇浩氏が大胆“宇宙プラン”に込めた思いとは? 「めだか×福祉」就労支援にも尽力
ブームが過熱する飼育・改良メダカの第一人者で、メダカの総合情報サイト「めだかやドットコム」代表を務める青木崇浩氏(46)は、「めだか×福祉」をテーマに社会貢献にも力を注いでいる。精神障害や発達障害の若者、引きこもりなどの悩みを抱える人たちの就労支援に取り組んでいるのだ。自ら開発した「めだか盆栽」を、“宇宙”に打ち上げる大胆プランも始動させ、今年10月の実現を目指している。情熱にあふれる人生の裏側に迫った。
“宇宙計画”気球の打ち上げは10月16日を予定 コロナ禍でも新店舗をチャレンジ
ブームが過熱する飼育・改良メダカの第一人者で、メダカの総合情報サイト「めだかやドットコム」代表を務める青木崇浩氏(46)は、「めだか×福祉」をテーマに社会貢献にも力を注いでいる。精神障害や発達障害の若者、引きこもりなどの悩みを抱える人たちの就労支援に取り組んでいるのだ。自ら開発した「めだか盆栽」を、“宇宙”に打ち上げる大胆プランも始動させ、今年10月の実現を目指している。情熱にあふれる人生の裏側に迫った。(取材・文=吉原知也)
メダカに興味を持ったのは、1998年に野生の黒メダカを購入し、飼育で繁殖させたことがきっかけです。2004年にサイトを立ち上げて、改良品種や飼育方法の情報発信を始めたのですが、一気にメダカ人気が全国に拡大し、高騰化、市場規模が膨らんでいきました。現在はメダカや関連商品の店舗販売に加えて、専門書の執筆や講演活動を行っています。
新しいアクアリウムの形としてめだか盆栽を開発しました。ガラス水槽の中に水草などを仕立てた現代風の盆栽です。水草の盆栽として鑑賞を楽しめますし、「水さえあれば、いい環境でメダカを泳がせられる」をコンセプトに、水を入れてメダカを飼うこともできます。専用の土とともにバクテリアを着生させる仕組みを取り入れているので、水質浄化ができて、うまく運用できれば、水替えも要りません。水質汚染などの環境問題も学べるように、という思いも込めています。
コロナ禍でもチャレンジしました。緊急事態宣言中の昨年2月にあえて、八王子の駅近くのビルに新店舗をオープンさせました。まだまだ40代、失敗してもやり直せると思ったからです。不特定多数の人ではなく、メダカに興味があって好きな人向けに、丁寧に売っていこうと。実際に黒字になりました。
福祉事業を始めたのは、自分自身の闘病生活が背景にあります。24、25歳の時に、体調不良に陥りました。脳血管と脳神経に関連する病気で、26歳の時に開頭手術を受けました。思うように動けず、うつ病にもなり、「生産性のない人間は価値がない」、「早く死にたい」と落ち込んだ時期もありました。メダカブームによってメディアに出演する裏側で、30歳まで働けなかったという事情もあったんです。
モットーは「作業から思考へ」「ここは自分たちが頑張れる会社だ、と胸を張れる」
ある時、自分のリカバリーの意図もあって、児童養護施設のボランティアに行きました。そこで「こんな僕でも行けば喜んでくれる人がいるんだ」と実感し、福祉のことを知り、実情を目の当たりにしました。まずは実体験を通して学ばないといけないと思い、最初は老人ホームでアルバイトを始めました。デイサービスや夜勤など、5年間働きました。おじいちゃん、おばあちゃんにメダカで喜んでもらおうと、1つ1つの個室に水槽を置いて、施設をメダカだらけにしたこともあります。その後に、知り合いの福祉施設から声をかけてもらって、理事として5年間活動して勉強を重ねました。40歳で退任して、2016年に「株式会社あやめ会」を設立しました。ここで、私が描く「めだかと福祉」という就労支援事業に取り組んでいます。
モットーにしているのは、「作業から思考へ」「ここは自分たちが頑張れる会社だ、と胸を張れる」ということです。精神障害や発達障害を持つ若い子たちを将来的に社会につなげられるように、自分たちで考えて行動できるようになってほしいと思っています。仕事としてめだか盆栽の製造、店頭販売・売り場づくり、メダカの世話・育成などの業務にあたってもらい、戦略会議の場で売り方を考えてもらっています。売れない経験をすることも大事なんです。それに、あえて株式会社として運営しています。事業として収益を高めて、売り上げは全額を分配しています。力を付けることで、雇用につながれば。3事業所で20~30代を中心に70~80人が登録しています。現に、最初は事業所の利用者だった2人が、店舗アルバイトとしてステップアップして頑張ってくれています。社会課題の解決のため、背中を押す活動を続けていきたいです。
そのめだか盆栽を、メダカ文化を、日本から世界に広げて、もっと多くの人に知ってもらうために、“宇宙計画”を進めているんです。実際には、特殊な気球を成層圏まで打ち上げるプランです。
メダカの生体は難しいのですが、盆栽のアクアリウムを飛ばして、空の上から、地球とめだか盆栽の写真を撮影できれば。気球は成層圏で破裂しますが、中身はパラシュートで降下します。福島・南相馬の沖に着水することになっています。それと、僕はメダカの歌を歌っているのですが、今回、新曲を成層圏で流してそれを録音します。地上で録音した音と比べてみたいです。何でも実験することが好きなんですよ。
打ち上げは10月16日を予定していて、クラウドファンディングを活用する予定です。ぜひ実現させたいと思っています。
□青木崇浩(あおき・たかひろ)。1976年、東京・八王子生まれ。2004年に立ち上がったメダカ情報サイト「めだかやドットコム」創設者。メディア出演、著書多数。