「同じ撮り鉄として恥ずかしい」近鉄電車で撮り鉄が迷惑行為 撮影のため車内通報ボタン押す
撮り鉄のマナーがたびたび問題視される中、インターネット上で新たな迷惑動画が拡散された。撮影のため車内通報ボタンを押した乗客に、車掌が厳しい口調でボタンの意味を説明しているもの。近鉄電車を運営する近畿日本鉄道は16日、取材に動画が事実であると認めた。
車掌が懸命の説得「写真を撮るために使うようなものではない」
撮り鉄のマナーがたびたび問題視される中、インターネット上で新たな迷惑動画が拡散された。撮影のため車内通報ボタンを押した乗客に、車掌が厳しい口調でボタンの意味を説明しているもの。近鉄電車を運営する近畿日本鉄道は16日、取材に動画が事実であると認めた。(取材・文=水沼一夫)
動画は車内の一場面からスタートする。
車両の片方のドアが開き、車内通報ボタンの前で車掌と撮り鉄と見られる男性が1対1の状態だった。
車掌が「もし写真を撮りたいんだったらもういっぺん(電車から)出て、自分で撮ってください。この電車に乗りたいんだったら乗ってください」と話しかける。
さらにボタンを指さし「これは緊急用のものです。もしこれを押してほかのところで何かあった場合、あなたはどうするんですか。あなたがこれを押して私が処理している関係で、その対応ができなくなるんですよ。どうするんですか、そういう場合」と問いただした。
撮り鉄が「困りますね」とぼそっと言うと、再度、「これは緊急用のものです。写真を撮るために使うようなものではない」と念を押して、その場から離れた。
ネット上には、「同じ撮り鉄として恥ずかしい」「非常識」といった非難のほか、「怒鳴らず敬語で接する事出来るの凄い尊敬するわ」と、感情を殺して必死に説得する車掌を称賛する声も上がった。
近鉄の広報担当者は、取材に「8月12日、金曜日、21時ごろの動画です」と動画の内容は事実であると認めた。
電車は近鉄名古屋駅に停車中で、午後9時4分発、津新町行きの急行だった。
状況ついては、「お客様が車内通報装置を押されたので、乗務予定だった車掌が現場に赴いて確認をさせていただきました。運転手が乗務する前でしたので、先頭車両の前のところに前照灯というライトがついてまして、それがついていない状態だったんですね。そのライトをつけた状態で、お客様が撮影をされたいということで、そのライトをつけるようにご依頼いただきました。また、左右に乗車専用ホームと降車用ホームがありまして、扉が開いていたのは乗車用ホームの側だったんですけど、ライトをつけた状態の車両を降車側から撮られたいということで、降車側の扉を開けてほしいとご申告をいただきました。個別の要望にはお応えしないので、それについてはお断りさせていただいて、車内通報装置は車内で異常が発生した際、緊急時に押していただくことで乗務員に異常の発生を知らせていただくものですので、車内通報装置の使用目的と、それ以外での使用をお控えいただくようにお客様にご説明させていただいたということです」と説明した。
車内通報装置は「例えば走行中に車内でこのボタンが押されたらすみやかに停車します。何が起こったか確認する必要がありますので」という乗客の命にかかわる大事なボタン。それを個人的な撮影のために押されたというわけだ。
この騒動で、電車は「1分20秒遅れで出発しています」と予定時刻に発車できず、他の乗客にも影響が出た。
担当者は「車内通報装置というのは、お客様が異常を発見された際にお知らせいただく装置ですので、異常が発生された際にはお知らせいただきたい」と訴えた。