谷川りさこ、SNSの普及に苦慮 イメージ優先も「素を出すこと」が人気の秘けつに
SNSの普及がモデルの在り方に変化を起こしている。ブランドや企業の広告塔になるモデルは、私生活をなるべく出さず、高潔なイメージを保つことが慣例とされていた。しかし、近年はYouTubeやTikToKでどれだけ素を出したり、ぶっちゃけられるかがモデル人気のバロメーターになりつつある。時代に適応できるモデルもいれば、そうでないモデルもおり、全体が移行期に。今、モデル業界に何が起こっているのか。モデル歴11年のベテランで、女性誌「GINGER」(幻冬舎)のレギュラーモデルを務める谷川りさこ(32)に聞いた。
モデル業界の変化「若い子たちは雑誌を見なくなりました」
SNSの普及がモデルの在り方に変化を起こしている。ブランドや企業の広告塔になるモデルは、私生活をなるべく出さず、高潔なイメージを保つことが慣例とされていた。しかし、近年はYouTubeやTikToKでどれだけ素を出したり、ぶっちゃけられるかがモデル人気のバロメーターになりつつある。時代に適応できるモデルもいれば、そうでないモデルもおり、全体が移行期に。今、モデル業界に何が起こっているのか。モデル歴11年のベテランで、女性誌「GINGER」(幻冬舎)のレギュラーモデルを務める谷川りさこ(32)に聞いた。(取材・構成=水沼一夫)
モデルは21歳のときからなので今年で11年目ですね。きっかけはオーディションで、書類選考では落ちたんですけど、当時のマネジャーが拾ってくれて、ギャル誌だったんですけど、新しい雑誌ができるということで、そこのレギュラーモデルになりました。
最初は大変なことのほうが多かったです。現場に行けばカメラマンさんやメイクさんがいることも知らなかったですし、自分が何をすればいいのかも分からなかった。ただ単に撮られるのではなく、ポージングだったり、表情だったり、表現力がすごく試されたのでスタイリストさんにも怒られました。
家で毎日鏡を見て、猛特訓しましたね。あらゆる雑誌の切り抜きをブックに収めて、表情の練習やポージングの練習をしました。モデルの中で私はデビューが遅かったです。みんな10代からやっているから追いつくのに必死でした。ライバルもいっぱいいたので、とにかく企画も多くもらえるように頑張ろうっていう気持ちが強かったですね。
ずっとギャル誌をやって、25歳のとき、大人雑誌から声がかかって、5年6年、モデルをさせてもらいました。その間雑誌以外にも広告やカタログ、CMに出演しました。一番大きかったのはJALのCMですね。石垣、北海道、広島、台湾、ハワイと3か月スパンで1年ちょっとぐらいかけて回りました。最初はプレッシャーが大きかったですけど、スタッフの方たちがいい人たちで、監督も普段どちらかと言えば私は明るいイメージなんですけど、そのまま出してくれたのですごくやりやすかったです。
自分じゃない女の子になれるというのはモデルとしてすごく楽しくてやりがいがあるところだなと思います。例えば、ガーリーな服を着させられたときはちょっとかわいい女の子を演じたり、「クールな表情をしてください」と言われたらクールな表情を演じる。プライベートの自分じゃないところがあります。
そんなモデル業界も今、SNSの影響を受けて変わりつつあります。まず若い子たちは雑誌を見なくなりました。私は雑誌世代だったので寂しい部分もあるんですけど、聞くとみんな好きなモデルのインスタや好きなタレントのYouTubeやTikTokを見ていて、ファッションやメイクを勉強しています。
雑誌は文章もしっかりしていて、クレジットも書いてくれているんですけど、SNSは今服を1個タップするだけで、もう買えるところまで行くからそういった面では便利ですよね。自分自身も「あ、このモデルさんが着てるこの服かわいい!どこなんだろう?」と調べるのは全部SNSなので、時代の流れなのかなあと思います。紙媒体がどんどんなくなっているので、仕事もウェブ媒体が多くなっています。
「着飾っているりさこ面白くない」 イメージ商売も周囲の本音
SNSの中でもインスタは雑誌に近いですが、YouTubeやTikTokは見せ方が違いますよね。
私も7月にYouTubeのアカウントを開設しました。モデルはブランディングが大事って言われています。最初はそのブランディングで、きれいなままの自分を雑誌とかインスタとかに載せたんですけど、YouTubeは素を見せるじゃないけど、結構本質を見せているじゃないすか。みんなさらけ出している。最初は抵抗あったんですけど、自分もいつまでもきれいなままで、何も出さずにいると、たぶんファンの方たちもついてこないのかなとか、いろいろ考えてやるしかないと思いました。インスタとか雑誌とかではきれいな自分でいて、YouTubeでは自分のライフスタイルを見せるように使い分けたら、ファンがつくのかなと思ったりしています。
もともとモデルは素を出すことが嫌がられる世界でした。若いときは関西弁を使っちゃダメとか、あんまり飲みに行っちゃいけないよとか、週刊誌に撮られることもそうですし、どこにいても見られている意識を強く持ってくださいと教えられました。もちろん恋愛系もNGです。取材では恋愛系は一切話したことがなかったかもしれないです。事前に記者に「聞かないでくれ」ってお達しが出ていたのかもしれません。それだけイメージは大切にされていました。
一方で、その当時はそれが当たり前だと思っていたんですけど、だんだん苦しくなってきてという思いもありました。自分の本質はきれいなだけの私じゃないし、普段プライベートでは関西弁だし、普通のこともします。“作っている自分”がしんどくなってきた部分もありました。それに気づいたのはテラスハウスに出演したときです。やっぱり自分の素が出るじゃないですか。こうやって出していけば、もっと自分がメンタル的にも楽だなって思ったきっかけになりました。
もともと周りからは「もう、着飾っているりさこ面白くないよ」みたいなことをずっと言われていたんですよ。でも、出せないじゃないですか。インスタでライブ配信もしますけど、うまくしゃべれない。気取っちゃう自分がいたんですけど、それもあって、じゃあYouTubeではちょっとさらけ出してもいいんじゃないかなという感じです。
今の時代は結局、本当に素が見たいんだな、本質が見たいんだなと思っているので、もう気取らずに、ありのままの自分をさらけ出すことが一番視聴者とかファンには受けるんじゃないかなと思います。たぶんイメージがすごいあるので、どんどん変えていこうかなと思っていますが、そこの切り替えはまだうまくいっていないですね。たぶん、その中でもみんなブランディングはちゃんとしているんだろうなと思いますけど、そこが難しい。私も勉強中です。
平成と異なる「令和のモデル」像 発信力必要も最後は「人間力」か
モデルとしてこれからの目標は細く長く、本当に今いただいている仕事もずっと継続してやっていきたいですね。いつかもしママになったときでも、ママモデルとしても活躍できるようになりたいです。モデルという仕事がずっと好きなので。その中で令和のモデルの形は昔と違って、もっと発信力のあるモデルだと思っているので、私も追求していきたいです。
生き残っていく条件ですか? どの業界でもそうですけど、やっぱり人じゃないかと思います。うわさで「あの子、性格悪いよ」と聞いていた方たちは、いなくなっちゃっていることが多いです。誰に聞いてもスタッフ受けするような人間性がある人って、今でもすごい残っていますね。雑誌も1人じゃ撮影できないですし、スタッフたちがいて、モデルは輝かせてもらえます。だから現場でもあいさつは若いときから必ず心がけていますし、コミュニケーションも取るようにしてます。
□谷川りさこ(たにがわ・りさこ) 1990年5月29日、大阪生まれ。21歳からモデルを始める。2018年、恋愛バラエティー「テラスハウス」OPENING NEW DOORS(軽井沢編)に出演。女性誌「GINGER」(幻冬舎)のレギュラーモデルとして活躍中。昨年ピラティスの資格を取得。今年5月、個人の会社を設立。都内で温活サロンを年内オープン予定。