500万→3500万に高騰したハコスカも 総額6億円の「GT-Rクラブ」はマニア垂涎の最強軍団

関東近郊の旧車イベントで、ファンから熱い視線を集める軍団がある。スカイラインGT-Rの持ち主が所属する「GT-Rクラブ」だ。いったいどんなクラブで、メンバーは何人いて、加入条件はあるのか。会長の小杉庄司さんに聞いた。

スカイラインGT-R【写真:ENCOUNT編集部】
スカイラインGT-R【写真:ENCOUNT編集部】

「車は44、45、46、47、ケンメリ全部あります」

 関東近郊の旧車イベントで、ファンから熱い視線を集める軍団がある。スカイラインGT-Rの持ち主が所属する「GT-Rクラブ」だ。いったいどんなクラブで、メンバーは何人いて、加入条件はあるのか。会長の小杉庄司さんに聞いた。(取材・文=水沼一夫)

 小杉さんによると、GT-Rクラブは立ち上がって10年になる。

 きっかけはある旧車イベントで、「たまたまハコスカ関係に乗っている方と話をしていて、じゃあみんなで一緒に立ち上げようと。45のGT-Rに乗っている方で、その人がメインで7、8台車を集めて、クラブという形で始まりました。その方が初代会長の村上力さんで、3年前に亡くなってしまって、代わりに私が運営をやっています」。

 現在メンバーは9人。全員がGT-R持ちで、複数台持ちも多いという。

 スカイラインは1969年(昭和44年)に初代が登場するや、3代目(ハコスカ)、4代目(ケンメリ)と続いた。

「車は44、45、46、47、ケンメリ全部あります。全部集めると、15台くらいになる」。GT-Rは中古価格が高騰し、市場ではケンメリが8000万円から1億円の値段がつけられている。生産台数が少なく、映画の影響もあり、特に米国での人気が高い。

 15台すべての総額は、推定で「5億以上になるね。6億ぐらいじゃない、全部で」という。もちろん、購入時はここまで高騰するとは思わず、ただ憧れの車を手に入れたいという思いがすべてだった。価格の急上昇ぶりはオーナーでさえ現実離れしていると感じるほどで、「ちょっとまだ感覚的におかしいよね。億っていう感覚がね。え、そんなにするのかなって」と、驚きを隠さない。

 小杉さん自身もハコスカ(72年式)、ケンメリ、R32型と3台のGT-Rを所有している。

「免許を取って一番最初がハコスカ。次がまたハコスカ。次がヨンメリ。その後がケンメリ。その後、ジャパン。5台乗り継いだ」。しかし、GT-Rは手が出なかった。憧れの車を買えるようになったのは、社会人になってキャリアを重ねて、ある程度余裕を持てるようになってからだ。

「当時ハコスカGT-Rって買えなかったんです。我々が買えたのはGTまでなんですよ。Rは高すぎて買えなくて、結局、定年間際になってそこそこ余裕もできたし、『ここで思い出のRを買わないと、一生乗れなくなる。じゃあもう買おう』ということで、探し始めました」

2代目会長の小杉庄司さん【写真:ENCOUNT編集部】
2代目会長の小杉庄司さん【写真:ENCOUNT編集部】

購入時500万→3500万に高騰したハコスカGT-R

 例えばハコスカGT-Rを買ったのは15年前だった。当時、中古相場では800万ほどだったが、個人売買で500万ほどで手に入れた。

「だから当時500万で買ったっていうのは安かったよね。しかも、なんと走行距離が1万8000キロしか乗っていなかった。その車をひと目見て、『この車を買わなかったら、もう二度とこんな程度のいいものは出てこないな』と思って、その場で決めました。金額もその場で決めて『買います』と。向こうも『分かりました、それでいきます』ということになって、車が私のところに来ました。それから約15年、ずっと乗っています。現在5万8000キロかな」

 愛着のある車だけに、余計なアレンジは加えていない。

「カスタムはしていないです。全くのノーマル。どこ見てもオリジナル。しかも新しい部品は一切使っていない。全て当時のもの」

 ハコスカの中古市場での相場は3500万ほどだが、なおさら希少で価値が高い。

「レストアしていない車。ノーレストアで、現状であの状態の車というのは、そんなには台数ないと思う。多少、ドアの下のさびとかあるよ。50年もたっているんだから仕方ないよね。それは手当はする気はない。あと10年乗るか、何年乗るか分からないけど、そのまま乗りたい」と、小杉さんは力を込めた。

 GT-Rの魅力は、「やっぱりS20だね。エンジンの音」と断言する。「3000回転ぐらいからワーッというパワーが出てくる。そのエンジンのカムの音、やっぱり5000、6000ぐらいまで変えてあげるとすごいいい音がする」

 さらに、「あと走り。今の車の軽のターボとかには負けちゃうけれども、例えば山道に入ってコーナーを曲がると、意外と思った通りのハンドルの動きをしてくれる。だからすごく乗りやすい。ケンメリになると、ちょっと車体が重すぎる。32はエンジンは全く逆に静かだけども、トルクの出方とかはS20に似ている。だから乗っていて、おもしろい」と続けた。

 他の車種では味わえない極上の感覚。いくら値段が上がろうと、手放すつもりはない。

貴重なS20エンジン【写真:ENCOUNT編集部】
貴重なS20エンジン【写真:ENCOUNT編集部】

初代会長のGT-Rにトンネル内で興奮「レーシングカーみたいな音」

 GT-Rクラブとしての思い出も数えきれない。

 最も印象に残っているのは、中央道を通って山梨でのトンネル内での一場面という。

「やっぱり一番思い出があるのは亡くなった村上さんのハコスカ。すっごいいい車なんですよ。外装関係は全くのドノーマル。エンジンだけちょっとチューンしてある。で、マフラーもちょっとステンマフラーで作っているのかな。トンネルの中にグワーッと響くというか、すごいいい音する。前に村上さんが走っていて、トンネルに入るとやっぱり音響って響くからね。その音がすごいんですよ、レーシングカーみたいな音」

 関東の旧車イベントはほとんどのメンバーが参加している。「みんな和気あいあいでずっと今まで来ている。みんな並んで走るからね。みんなで行こうと言えば、4台5台6台でまとまって行く」。Tシャツやジャンパーなどオリジナルグッズも作成し、統一感を出している。

 道中も注目を集めまくる存在だ。「コンビニに寄るとか、パーキングエリアに寄ると、みんな寄ってくる。2台も3台も4台も並んじゃうと、わわわっていう感じになっちゃいますね。そこでやっぱりいろんな話が出てくる。昔ハコスカのGT乗ってましたよとか、結構そういう話が出てくる」と語った。

 ちなみに、入会資格はあるのだろうか。小杉さんは、「顔を合わせてみんなでこの人ならばっていう感じですね」と人柄重視を挙げつつ、「やっぱりハコスカのR、ケンメリのR、S20を乗ってる人じゃないと、我々の仲間にはあんまり入れたくはない。要するにGT-Rだけど、エンジンがS20」と明かしてくれた。

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