「このバイクがなかったら僕の人生はない」 “義理人情”で広がる旧車オーナーの輪
クルマ・バイクの愛好家やファンが集まる団体「オーナーズクラブ」は、ブランドや個別車種が持続的に存続することに寄与する側面がある。原付から10トントラックまで幅広く扱う自動車・バイク整備工場「アートモータース」(神奈川県平塚市)の整備士で、カワサキ・W1SAの旧車オーナーでもある熊澤武さん(41)に、メンテナンス・維持の観点からのオーナーズクラブの利点を教えてもらった。
唯一無二のエンジン音に魅了…カワサキ・W1SAオーナーに聞いた
クルマ・バイクの愛好家やファンが集まる団体「オーナーズクラブ」は、ブランドや個別車種が持続的に存続することに寄与する側面がある。原付から10トントラックまで幅広く扱う自動車・バイク整備工場「アートモータース」(神奈川県平塚市)の整備士で、カワサキ・W1SAの旧車オーナーでもある熊澤武さん(41)に、メンテナンス・維持の観点からのオーナーズクラブの利点を教えてもらった。(取材・文=吉原知也)
まず、僕の愛車の1つは、72年式のカワサキ・W1SAで、唯一無二のかっこいいエンジン音に魅了されて、6年前に手に入れてから人生の1台として大事に乗っています。旧車が大好きで、「50年前のものでも、もう50年走らせたい」をモットーにしています。
旧車の修理の際に、正規品の部品調達が難題になるケースがあります。そもそもメーカーがいまはもうなかったり、現行メーカーが製造していない場合があります。依頼しても“門前払い”になってしまったり、もう無理だと思うかもしれません。
でも、オーナーズクラブが発展している場合は、在庫をストックしていたり、リプロダクトで部品を再現させて製造していたりすることがあります。カワサキWシリーズは複数のオーナーズクラブがあるのですが、例えばW1シリーズは、ない部品がない。特殊なネジでさえもそろっています。有志のあるオーナーさんが長距離を走る耐久テストの実証実験までしているんです。オーナーさんたちの力を結集させると、そこまでできるんです。また、他には、ネットオークションで正規品を探したり、類似品や他社製品を活用するケースもあります。
ネットで交流できる時代になって、とりわけフェイスブックのつながりが強いです。故障したり、エンジンのかかりが悪い場合はこうしましょうといったアドバイスの情報共有が頻繁に行われています。僕自身は、バイクが故障した際の応急処置の方法を紹介する書き込みをさせてもらっています。
それに、旧車オーナーの世界は、義理人情がいい形でしっかりあるんです。ミーティングなどのイベントの機会に顔を合わせることで、人脈を築くことができます。あるW1のオーナーズクラブでは、箱根開催で200~300台が集まる規模にもなっていて、交流が広がります。困った時に、互いに欲しい部品を物々交換することもあって、助け合いも生まれています。
部品があれば、大事に乗って、しっかり整備して、より長く乗ることができます。すべての車種がそうではないですが、「旧車は部品調達次第で残せる時代になった」と思っています。眠っていた旧車を復活させることもできますし、世代を超えて乗り続けることも実現しています。
ちなみにですが、僕はある大手整備会社に務めていました。その後、転職先を探していた時に、オーナーズクラブの方に現在の「アートモータース」の社長を紹介してもらったことが縁で、こうして仕事ができているんです。うちの社長は、W800とW1Sのオーナーでもあるんです。本当に、このバイクがなかったら僕の人生はない。そう思っています。