ゲーマーとスポーツの“二刀流” eスポーツ大会の優勝チームはサッカー少年たちだった

ゲーム好きは内向的でスポーツを敬遠する――。それは古いステレオタイプの考え方だと感じさせ、むしろゲームとスポーツの「融合」の可能性が垣間見れたeスポーツ大会だった。7月15日に都内で決勝が行われた、サッカーJ1・J2の全40クラブによるクラブ対抗のeスポーツ大会「eJリーグ ウイニングイレブン 2019シーズン」。初代王座を勝ち取ったJ1清水チームの代表3選手は、男子大学生と高校生で、「サッカー王国」の静岡出身。ゲームも大好きなサッカー少年だった。

『eJリーグ ウイニングイレブン 2019シーズン』。J1清水が初代王者となった
『eJリーグ ウイニングイレブン 2019シーズン』。J1清水が初代王者となった

eスポーツとリアルなスポーツの「融合」の現在地 「リアルな試合とゲームがシンクロする世界観」を示した大会から探る

 ゲーム好きは内向的でスポーツを敬遠する――。それは古いステレオタイプの考え方だと感じさせ、むしろゲームとスポーツの「融合」の可能性が垣間見れたeスポーツ大会だった。サッカーJ1・J2の全40クラブ対抗のeスポーツ大会「eJリーグ ウイニングイレブン 2019シーズン」。初代王座を勝ち取ったJ1清水チームの代表3選手は、「サッカー王国」の静岡出身。ゲームも大好きなサッカー少年だった。

誰もがアッと驚く夢のタッグ…キャプテン翼とアノ人気ゲームのコラボが実現

 同大会はJリーグとコナミデジタルエンタテインメントが主催。各クラブの代表3選手は、エントリー数が21万5000人を突破した選考会を通して15歳以下、18歳以下、全年齢のカテゴリーごとに選出され、チームを組んだ。「ウイニングイレブン 2019」(モバイル版)を競技タイトルとして、7月14~15日の2日間に渡って本大会が実施され、40クラブの代表120人が熱戦を繰り広げた。
 
 少し驚いたのが、優勝を飾った清水チーム3選手のサッカー歴だ。全員がサッカー経験者で根っからの清水サポーター。高校までサッカー部で汗を流した大学3年生の佐野一平選手(22)は、ツイッターでの試合に参加するなどしてゲームの腕を磨いてきたという。チーム最年少15歳で高校1年生の鈴木大樹選手は、今大会に清水のサポーターナンバーの背番号「12」のユニホーム姿で出場するほどの地元クラブファン。1日3時間ほど打ち込むゲーマーでもある。高校3年生の岡田悠選手(18)は、サッカー部でFWとしてグラウンドを駆け回る“嗅覚”を生かして、点の取り合いとなった今大会決勝の第3試合で延長後半に決勝ゴールを決め、チームを頂点に導いた。

SNSを駆使したチームワームの醸成…リアルとゲームの世界が成立できる時代の到来

 3選手はプロゲーマーではないが、限られた代表活動でLINEのグループを作るなどして交流し、SNSを駆使した創意工夫でチームワークを高め合ったという。人気拡大が続くeスポーツにはチーム戦の競技も設定されており、協調性を重んじる部活動での経験が生かされたと言える。JリーグのJ1リーグ戦で清水は低迷に陥っている。それだけに、佐野選手は今回のeJリーグでの優勝を受けて「『王国』復活のきっかけになれば」とエールを送った。サポーターらしい熱いコメントが印象的だった。

 「Gzブレイン」(東京都)の調査によると、2018年の国内のeスポーツ市場規模は、前年比13倍の48・3億円(推定)。企業・団体によるeスポーツへの新規参入が相次ぐ中で、スポーツ界にも波及し、Jリーグは2018年に参入に乗り出した。

 今大会は、参加者が自らが代表になりたいクラブを任意でエントリーでき、賞金総額1500万円は成績順位に応じてJリーグから各クラブに支払われる仕組みを採用。eJリーグ選手はサポーターの一員として、クラブに資金を“提供”することができる。サッカーの「普及・振興」の側面もあるといい、Jリーグの村井満チェアマンは「eJリーグでプレーする選手がクラブにダイレクトに貢献できる。ゲームをプレーする選手には、できれば普段からクラブを応援したり親しんでいただければ、(Jリーグクラブの)選手が持っている力を引き出すことにつながると思う。クラブ側はeJリーグの選手をサポートすることで、相互に絆が深まる」と強調した。

 さらに、「リアルなJリーグの試合と、ゲームが相互にシンクロするような世界観を大事にしていく」と大会継続の意向を示した。

 リアルとゲームの世界が成立できる時代の到来。実際に、今大会に出場した若年層の選手たちは、ゲームとサッカーの両方に自然に取り組み、親しむという新たなスタイルを体現した。eスポーツの浸透によってプロアマ問わず、「競技者」としての活躍の場が広まることが見込まれる。スポーツ界とeスポーツ界の「融合」の実現は、そう遠くはなさそうだ。

(ENCOUNT編集部・吉原知也/Tomoya Yoshihara)

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください