加藤ローサの“母の顔” 海外で出産と育児「10年かかったけれど、産んで良かったと心から」

瀬戸内にある小さな島を舞台にした映画「凪の島」で女優の加藤ローサ(37)が主人公の母親役を務めている。2012年公開の「ガール」以来となるスクリーン復帰作で、娘の成長を見守った。私生活ではふたりの男児を子育て中の加藤。フランスで経験した長男の出産、育児は想像以上に過酷だったが、「息子たちから教わることがたくさんあった。産んで良かった」と母の顔をのぞかせた。

2児の母である加藤ローサが息子たちとの私生活について語る【写真:ENCOUNT編集部】
2児の母である加藤ローサが息子たちとの私生活について語る【写真:ENCOUNT編集部】

10年ぶりスクリーン復帰作でシングルマザーに

 瀬戸内にある小さな島を舞台にした映画「凪の島」で女優の加藤ローサ(37)が主人公の母親役を務めている。2012年公開の「ガール」以来となるスクリーン復帰作で、娘の成長を見守った。私生活ではふたりの男児を子育て中の加藤。フランスで経験した長男の出産、育児は想像以上に過酷だったが、「息子たちから教わることがたくさんあった。産んで良かった」と母の顔をのぞかせた。(取材・文:西村綾乃)

 映画は両親の離婚により、母と島で暮らすことになった小学4年生の少女・原田凪(新津ちせ)が、島の人たちとの出会いを通じて成長していく物語。加藤は凪の母・真央として娘に寄り添っている。

「長澤雅彦監督とご一緒するのは3度目のこと。いただいた脚本には、子どもたちのかわいらしいやり取りや、島の人たちのおちゃめな部分が詰め込まれていて、監督の人柄がにじみ出ていると感じました。ちせちゃんは(撮影時は11歳)とてもしっかりしていて、親子というより、ママ友のような感覚で接していました。漢字が大好きで、撮影の合間には『ホオズキ』の字を教えてくれました。海まで歩いて一緒に駄菓子を食べたりもしましたね」

 医師の元夫(徳井義実)はアルコール依存症。母に暴力を振るう姿を見ていた凪は、ストレスから過呼吸になることもあった。心に抱えた傷は、「海」が癒やしてくれる。

「撮影を行ったのは、コロナ禍。閉塞感がある日々でしたので、山口の景色の美しさに私自身も癒やされました。凪のようにストレスを感じた時、私の心を穏やかにしてくれるのは『(鹿児島の)実家』です。木々の葉が揺れる音に耳を傾けていると、心が静かになります。息子たちは(実家の敷地内にある)山に入って木を切ったり、たき火をしたり。大自然を遊び相手にしていて、たくましいなと思いました」

 映画の中では凪が、同級生の男の子と冒険に繰り出すシーンがある。加藤自身は幼少期に冒険をした経験はあるのだろうか。

「一人っ子で、ボーッとしていたので、凪のような冒険には縁遠かったですね。でも、小学校4年生の時に経験した転校は、転機になりました。それまでは、小規模の学校に通っていたのですが、転校先は1学年6クラス、1000人超えのマンモス校。かばんにキーホルダーを付けている子がいたり、クラスのお友だちと手紙のやり取りをしたり。前の学校では規制されていたことが、解放されたこともあって全てが新鮮で、毎日が冒険でした」

 天真爛漫な笑顔で大人を和ませる一方で、大人びた発言で周囲をハッとさせる凪。私生活では10歳と、8歳の男の子の母である加藤は、息子たちとどう向き合っているのだろうか。

「学校や、お友達のことなど、私のことじゃないけれど自分のことのように向き合い、考える中で、色々な人の立場に立って物事を考えられるようになりました。5年生になった長男は、シャツなどを裏表にして着ているユニークな子。脱いだものを、表に返さずに洗濯かごに出すので、『私が直すと、裏で脱いでも自動的に表にしてくれると思うようになってはいけない』と直さずにいたら、そのまま着るようになってしまったんです。私は何とか表に返してと思うのですが、『ママ、そんなのガミガミ言うことじゃないよ。僕はこれで良いんだから』と言われて。『そういえば、私は何で表にして着せたいんだろう』と我に返って……。周りの目を気にせずに、伸び伸びとしている長男を見ていると、常識と思っていたことが、ガラガラと崩される。そんなことがよくあるんです」

 奔放な長男を出産したのは26歳の時。元日本代表で夫の松井大輔選手がフランスにあるチームに所属していたことから、妊娠8か月の時に渡仏し海外で第1子を出産した。夫の所属先に合わせフランス、ブルガリア、ポーランドを渡り歩いた。育児中心だった5年間は「出口が見えないトンネルの中にいるよう」と振り返ったこともある。

「私は早くに子どもを持ったので、子どものまま母親になったところがありました。心が追い付かず、母性が出て来るまで時間がかかりました。でもこんな私でも『ママ』と慕ってくれ、絆も生まれました。10年かかったけれど、今は産んで良かったと心から思います」

 夫が2014年にJリーグ・ジュビロ磐田に移籍したことから、一家で帰国。2019年から東京に拠点を移し、昨年ドラマ「きれいのくに」(NHK)で10年ぶりに地上波にその姿を見せた。

「高校時代にモデルを始め、ドラマや映画など考えていた以上にお仕事をいただき、正直1つ1つこなすだけで精いっぱいと思っていました。でも結婚をした26歳から10年間、家族を優先するためお仕事をお休みして。いい意味でハングリーさが薄れました。育児が落ち着いた今は、本を読むなど家の中で自分の時間を持つことも出来ています。新しいことを始めるというより、続けているヨガやゴルフなどの趣味を深めたい。のほほんとした時間が続くように、いただいた脚本をしっかりと読み込むなど、仕事と丁寧に向き合っていきたいです」

 映画「凪の島」は8月19日から、東京・新宿ピカデリー、山口・MOVIX周南など全国で順次公開される。

■加藤ローサ(かとう・ローサ)1985年6月22日、神奈川県生まれ。6歳の頃から鹿児島県で過ごし、高校1年生の時にモデルとして始動。2004年に、結婚情報誌「ゼクシィ」のCMで注目を集めた。同年に女優としても活動をスタート。05年に「東京タワー」で映画に初出演した。11年、元サッカー日本代表選手で、現Y.S.C.C.横浜所属の松井大輔選手と結婚。育児などに専念するため、13年から芸能活動を休止していたが、21年にドラマ「きれいのくに」(NHK)で復帰した。ふたりの男児の母。趣味はゴルフ。160センチ、A型。

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