中古車、実は「買いやすくなっている」 トヨタやベンツSUV“1強”…高騰化の意外な背景とは?

日本の自動車業界で、中古車市場の拡大が際立っている。リクルート自動車総研の調査では、2021年の市場規模が4兆円を超え、購入単価とともに過去最大規模に。「高騰化」のニュースが目立ち、一般消費者としては“中古車が買えなくなるのでは”と不安感が募るが、専門家からは「不当に高くなっているわけではなく、決してすべての中古車が買いづらいわけではない」といった冷静さを求める声が上がっている。

カーセンサー西村泰宏氏が中古車市場の現状について解説した【写真:カーセンサー提供】
カーセンサー西村泰宏氏が中古車市場の現状について解説した【写真:カーセンサー提供】

21年の購入単価は155万円 「新車じゃないと譲れない」心理に変化…カーセンサー専門家解説

 日本の自動車業界で、中古車市場の拡大が際立っている。リクルート自動車総研の調査では、2021年の市場規模が4兆円を超え、購入単価とともに過去最大規模に。「高騰化」のニュースが目立ち、一般消費者としては“中古車が買えなくなるのでは”と不安感が募るが、専門家からは「不当に高くなっているわけではなく、決してすべての中古車が買いづらいわけではない」といった冷静さを求める声が上がっている。(取材・文=吉原知也)

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 新型コロナウイルス禍や世界的な半導体不足の影響で新車の納期遅れが話題に上がる中で、中古車市場はもともと過熱傾向にあったと指摘するのは、日本最大級の中古車情報メディア「カーセンサー」統括編集長で、同総研所長を務める西村泰宏氏だ。同調査によると、21年の中古車市場規模は「4兆1699億円」で、購入単価は「155万円」。15年は「2兆8100億円」、「116.9万円」となっており、拡大は一目瞭然だ。

 西村氏は「2014年の調査開始以来、単価は毎年約5~10万円上がり続けています。ただ、これは中古車だけが極端に値上がりしているわけではなく、新車の価格自体が上がっており、中古車にもハイブリッド車やSUV車の比率が高くなる中で、全体の質の向上が表れていると考えた方がいいでしょう。基本的に車は新車として登録されてから10年から15年くらいかけて値段が下がっていきます。この中古車市場の原則は変わっていません」と指摘する。

 新車の価格上昇の理由。ハイブリッド車や電気自動車(EV)といった電動化による技術革新、先進安全技術の導入による機能拡充が挙げられるといい、「新世代の車は価格がベースアップしています。もちろん中古になると価格自体は新車購入時より低くなりますが、スタート時の値段が上がっているため、同じだけ値段が下がったとしても必然的に中古での値段は高くなります。これは近年の大きな流れです」とのことだ。

 人気の車種はどんなものか。SUVの“1強”が顕著だという。「2000年代のプリウス人気に象徴される燃費競争は落ち着いてきました。いまは、アウトドアブームも相まって、アクティブ志向のSUVが絶頂期にあります。もともと、中古市場のSUVは、トヨタ・ハリアー、マツダ・CX-5がテッパンで現在もそうですが、よりオフロード感が想起される見た目がゴツゴツしたイメージのトヨタ・RAV4、スズキ・ジムニーの需要が高まっています。輸入車だと、ジープ・ラングラー、メルセデス・ベンツ・Gクラスも人気が強いですね」。

消費者心理は「中古だから5年落ち=型落ちというひと昔前の認識ではない」

 西村氏は消費者心理について分析。新車で300~400万円ほどの車を買いたい人は、新車がすぐに手に入らないのであれば、値段はまだあまり下がっていないが2、3年落ちの中古を探し回る。一方で、「新車じゃないと譲れない」と頑固だった人の心境は変化し、中古車への抵抗感が薄れてきている。また、以前は中古車だから100万円で買いたいという漠然としたイメージを持つことも多かったが、年式が新しい中古車ならば、予算をアップしても手を出すようになっている現状があるという。実際にカーセンサーの中古車物件を見ると、初年度登録から2年以内の中古車の在庫は約17%をマーク。「中古だから5年落ち=型落ちというひと昔前の認識ではなく、新車でも同様の型が販売しているような現行モデルが手に入りやすくなっているんです」(西村氏)とのことだ。

 それに、残価設定ローンやサブスクなど、車の所有の仕方が幅広くなる中で、乗り換えのサイクルが早くなっている傾向が見られる。一般的に人気の車種については、新しい年式でも中古市場に出回りやすくなり、自然と昔よりも早いタイミングで流通台数が増えて価格が落ちやすくなっているという。西村氏は「一部の人気車種・ブランド・グレード以外は、中古車は買いやすくなっていると言えます」と強調する。

 さらに、「我々の調査では、車の買い替えは平均で6.2年に1回です。1年ごとに単価が上がっているということで単純計算すると、久しぶりに中古車を買おうとすると高くなったと感じるかもしれません。それでも、同じ程度感の中古車を買うのであれば、新車時に比べれば同じレベルの値頃感で手に入るでしょう。それに、ハイブリッドや安全機能搭載の車を売る場合は、リセール価格にも反映されます。逆に言えば、高いものを買えばその分、売値は下がりにくいのです」。冷静な理解が必要だという。

 今後の市場はどうなるのか。西村氏は「中古車市場全体について、緩やかに値段が上がっていく傾向は変わらないと思います。ただ、すべてに手が届かなくなるといったことでは決してありませんし、年月がたてば徐々に安くなっていくということはこれからも変わりません」としている。

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