京大生YouTuberわっきゃい、流行する“切り抜き動画”に持論「スタイル自体は悪ではない」
京都大学法学部在学中でありながら、お笑い芸人、YouTuber、実業家とさまざまな顔を持つわっきゃい。「R-1グランプリ2022」に初参戦するとアマチュアながら、準々決勝まで進出した。多彩な才能を持つ23歳が「職業=YouTuber」という風潮への違和感に言及した。
「職業=YouTuber」への違和感
京都大学法学部在学中でありながら、お笑い芸人、YouTuber、実業家とさまざまな顔を持つわっきゃい。「R-1グランプリ2022」に初参戦するとアマチュアながら、準々決勝まで進出した。多彩な才能を持つ23歳が「職業=YouTuber」という風潮への違和感に言及した。(取材・文=島田将斗)
「YouTuberなんて職業はないです」。登録者数70万人の人気YouTuberはこう断言した。
昨年発表された「小学生のなりたい職業ランキング」では1位、中高生も含めたランキングでも上位に必ず入るYouTuber。「おすすめかどうかで言えばおすすめです。“なれるなら”絶対なった方がいい」と淡々と口にした。
「YouTuberって“ユーチューバー”となってしまっていますけれど、必要なスキルが多いんです。基本的な演者力、発声能力、構成能力、表現能力がまず必要だし、編集になってくると、デザイン能力、集中力、ブランディング、コピーライティング。“ユーチューバー”の中には、いろんな職業があるんですよ」
わっきゃいが投稿を始めたのは約6年前。特技でもあるペットボトルの「キャップ投げ」や自身のゆるい日常をニュース番組風に伝える「どうでもいい日常のニュース」など、コメディー系の動画をアップしている。
「先ほどあげた多くのスキルが全て磨かれるし、マーケティング能力も必要ですね。学べるものも多い。実力主義の歩合制なので、身を置いて戦うという意味ではおすすめです。その後にもつながりますし、職業にできるのならの話ですけれどね」とからめだ。
“なれるなら”、“職業にできるのなら”といった言葉をなぜ使うのか。最前線で戦ってきたからこそ分かる現実があった。
「一番はメンタル。精神的に参ってる人ばかりですよ。勝負の連続なので単純に疲れますよね。戦闘民族の人間っているので、そういう人たちはぜひやるべきだと思います。キャパシティーが広い人とか、評価されることに慣れている人とかにおすすめです」
誰でもスマホが1台あれば始められる。参入障壁の低さからも身近なものになっていったYouTuber。さまざまな能力が求められるが「特別な職業というわけではない」と口を酸っぱくする。
「例えばですけれど『プロ野球選手になるのは、おすすめですか?』と言われれば『なれるもんならなった方がいいですよ』って言いますよね。それと同じなんです」
「YouTuberになるのはおすすめか?」。この質問を親に聞かれるか、子どもに聞かれるかで返答は変わってくる。
「親が聞いてきたら、『絶対やめた方がいいですよ』って言います。結局個人の発信メディアのひとつであって、YouTuberって職業はないんですよ。ゲームがうまい人だったら、YouTubeを通じて、広告収入を得ているゲーマーなんですよ」
HIKAKINは“商品レビュアー”
YouTubeで5つのチャンネルを持ち、全チャンネルの合計登録者は約1800万人のHIKAKIN。小中学生から親まで、圧倒的な支持を持つYouTuberだ。そんなレジェンドも「元はビートボクサーの商品レビュアーなんですよ」と説明する。
「職業ではなくて、何をYouTubeで生かすかっていう話なので。みんなYouTuberになる時代もあり得ると思います。ツイッターとかと一緒で自分の持っている武器をどう動画に生かすかっていうスキル。それに需要のある世の中になっているだけです」と分析した。
わっきゃいの好きな野球で仕組みを分かりやすく例えた。「プロ野球選手だって、野球だけじゃ食べていけない。それがテレビで放送されることによって、お客さんが入ってそこでお金が生まれる。大きく言えばエンターテイナーなんですよ」。
さらに「それこそプロ野球とか関係なく、YouTubeで野球がうまい人を集めて、試合を流して、登録者数が増えて、スパチャ(投げ銭)とかも集まって、そのうち球場にお客さんが来るようなったとします。『その人ってYouTuberなの、野球選手なの?』って言ったら、野球選手なんですよね」と続けた。
何度でも強調する。「YouTubeって結局はプラットフォーム。YouTuberを目指すのは間違いで、何かを目指して、YouTubeにアップして収益をあげましょうということです。コムドット、僕はアイドルだと思っています。僕とコムドットって同じ職業かといったら、全然違うので、収益の上げ方が一緒なだけなんです」と熱を帯びた。
昨今SNS上では“切り抜き動画”なるものが流行している。動画の投稿主とは異なるユーザーが元動画を切り貼りし、短い動画などでまとめるというものだ。再生回数が元動画よりも多いということも日常茶飯事。一部からは「乞食」などの声も上がっている。
切り抜きをすることで法律に違反している、合意できていない著作権上の問題などがないという前提のうえで「スタイル自体は悪ではない」と言い切る。
「あの職業は編集者ですよね。需要と供給の時代なので、アップ主があげているものよりも、切り抜きの方が人気なのであれば単純に切り抜きを作っている人の方が編集能力があるっていう話。プロ編集者ということですよね」
○○系YouTuberとはよく聞く。しかし、動画発信とはあくまでツールである。YouTuberになるのではなく、YouTubeで何をするのか――。「職業=YouTuber」の違和感の理由はここにあるのだろう。