北新地を浄化する“伝説の喧嘩師”の過去 ポン引きの胸ぐらつかみ「上のやつ呼べ」
思春期になると道を外したり、やんちゃしてしまうのはどの時代にもあること。しかし、この男は異色の存在として恐れられた。ターゲットはなんと暴走族。夜な夜な、ボロボロの原付に乗って集団を追いかけ回し、暴走族はその姿を見るだけで逃げ出したという。数々の破天荒エピソードと腕っぷしが語り継がれ、やがて故安倍晋三元首相の護衛役も担当した。ナイフを持った強盗を捕まえたり、火の海に突入して生存者を救出したことも。現在は天満警察署と大阪市の要請で、北新地のパトロールも行うなど、奉仕活動に従事している。孤高の喧嘩師・アンディ南野に聞く「伝説」の真相――。全4回のうち2回目。
色街で危険すぎる自警団結成 違法な客引きを排除
思春期になると道を外したり、やんちゃしてしまうのはどの時代にもあること。しかし、この男は異色の存在として恐れられた。ターゲットはなんと暴走族。夜な夜な、ボロボロの原付に乗って集団を追いかけ回し、暴走族はその姿を見るだけで逃げ出したという。数々の破天荒エピソードと腕っぷしが語り継がれ、やがて故安倍晋三元首相の護衛役も担当した。ナイフを持った強盗を捕まえたり、火の海に突入して生存者を救出したことも。現在は天満警察署と大阪市の要請で、北新地のパトロールも行うなど、奉仕活動に従事している。孤高の喧嘩師・アンディ南野に聞く「伝説」の真相――。全4回のうち2回目。(取材・構成=水沼一夫)
北新地でパトロールを始めたのは、2020年の11月からですね。違法な客引きとか悪質な客引きが多いので、経営者の組合(北新地社交料飲協会)から依頼されました。そこと大阪府の天満警察署と、大阪市に「街の正常化の活動としてやってもらえませんか」と言われてやっています。パトロールして抑止力になったり、実際それっぽい動きがあったら、ビラを持って行って、条例に関して書いてある説明を見せて、「こういうことご存知ですかね」と声をかけます。自分らの店の経営者から、「その辺でお客捕まえて来い」と言われて、分からんとやっている子が多いんですよ。
パトロールのきっかけは、今から10年ぐらい前にさかのぼります。大阪の繁華街って言うたら、キタ、ミナミ、北新地と主要なところがあるんですけど、キタ・梅田というところで、僕の友達が飲み屋さんしてたり、あと無料案内所をしていたんですよ。
梅田の兎我野町(とがのちょう)というところがあって、そこは色街なんですよ。風俗店舗とかあとは違法な風俗、俗によく言う「ポン引き」とかいうのがいて、それのケツモチっていうのはみんな暴力団だった。
ほんで無料案内所とかキャバクラ経営してる僕の友達が、「アンディ、俺らの店の前ってすごいポン引きが多いし、フリーキャッチ、客引きも多い。俺らはここで家賃100万、150万払って店をやっている。でも、フリーキャッチのやつら、ポン引きってどこでも動き回って、俺らが家賃を払っている店の前で客引きをやる。うちに自然に向いていた客足も持って行かれるし、これを何とかして欲しいねん」と言ってきた。
正規の条例で言えば、店員は自分の店の前にしか立てないんですよ。そこから「お客さん良かったらどうぞ」という声かけは、OKなんですよ。ただ、店から1メートル以上、出てしまうと、これはもう違法な客引き行為になる。
僕は「分かった。自警団で防犯パトロールやるわ。防犯のタグと腕章を買って、練り歩いてやる。で、その辺のポン引きとか、全部胸ぐらつかんで引きずり回してやるわ。その代わり、若い子らも3、4人連れて行くから日当ぐらいは出してやって」と伝えました。
それで、週末のだいたいゴールデンタイムの午後8時から12時ぐらいを練り歩きました。ポン引きの胸ぐらつかんで「上のやつ呼べ」と言うと、暴力団が出てくる。暴力団に囲まれて、全員引きずり回しました。出てきたところは全部ですね。ほんで僕らがいるときだけは店の客引きが大成功する。僕らのチームが兎我野町を歩くと、暴力団やポン引きがどっか行くんですよ。ゴキブリが物の陰隠れるみたいに、サササッって。
「うちだけ大目に見てや」 暴力団がまさかの懇願
昔、ミナミでも同じようなことをやったことがあって、成功した経験がありました。すると、2年前に「アンディのことを北新地が探している」という話を聞いたんです。「北新地のあるお店の専務さんがアンディに防犯をして欲しいって探しているみたいやで」と言われて、1回会ったんですよ。ほんで、「なんで僕なんですか?」って聞いたら、「シルバー人材であったり、警察OBが防犯パトロールをしているけど、どこも功を奏してない。唯一、大阪で防犯業務に成功した例を調べていたら、アンディさんっていう名前が出てきたんです。ちゃんと天満警察署とか大阪市からの委託になるから、法にのっとりながら、あなたの力を生かしてくれませんか」と言われて、それでやり始めたんです。
防犯パトロールとして業務提携するから、自分の信用回復にもなる。“世の中への暴力男”じゃなくて、僕もメリットがあるという思いでした。
それで、いよいよ北新地で、というときです。SNSで僕が写真つきで「防犯パトロールやります」と載せたら、暴力団からめっちゃ電話がかかってきたんですよ。僕の番号調べて。言われたのは、「うちだけはお目こぼしてや」「うちだけ大目に見てや」という言葉でした。「いや無理です。できません。僕らがそこにおるときは、そんな上手はできません。何でかって言うたら仕事やから」と断って、全部露払いができた。今も僕らがおるときだけは、平和が確立できているみたいですね。
やっぱりあそこは毎日飲み代だけで動くときは、ホンマ数億円が動く街。企業さんらが接待で使う街やから。だから違法な客引き行為があるだけ、客引きがおるだけで、そういう人の足も遠のく。その治安を維持することで経済効果もすごい高いので、僕らも重宝されているのでええかなってと思っています。
多いときは10人ぐらいで見守りますね。格闘家も半分ぐらいですかね。週2回です。「毎日回ってほしい」って先月から言われてるんですけど、昼の仕事をみんな持っているので、夜8時ぐらいから夜中の1時、2時まで毎日はなかなかしんどいなと(笑い)。力を出してくれているのは、僕の友達なりなんですけど、多いのはやっぱりウチのジムの関係やから、自分自身、格闘技の世界に携わっていてちょっと恩返しになってるんかなと思っています。
□アンディ南野(あんでぃ・みなみの)1979年2月10日、大阪・大東市出身。若い頃からけんかに明け暮れる。28歳のとき、格闘技デビュー。地下格闘技「喧王」で2度優勝。2019年の選挙では腕っぷしを買われて故安倍晋三元首相の警護を務めた。毎週木曜金曜には天満警察署と大阪市の要請で、北新地のパトロールを行い、違反者を摘発している。8月28日「PEACE」(大阪・176BOX)で、元迷惑系YouTuber・へずまりゅうと激突する。格闘技ジム「T.B.NATION」代表。172センチ、80キロ。
◆YouTube
https://youtube.com/channel/UCe8_o1xNHFru5hjI6OEue5A
◆ジム公式サイト
https://tb-na.com