鴎友学園女子が偏差値38から超進学校に変貌した理由 東大現役9人、早慶MARCHに大量合格
新女子御三家の一角として知られる東京都内の中高一貫校、鴎友学園女子中学高校(東京都世田谷区宮坂)の人気が近年高まっている。実質倍率(第1回入試)は20年までの2倍前後から21年は2.4倍、22年は2.8倍と上昇。今春の大学合格実績では東大9人、京大1人、一橋7人、東工大6人(いずれも現役)など超難関国立大のほか、早慶上理に約250人、MARCHに約360人というめざましい実績を残した。80年代には偏差値38という不人気校に落ち込み経営危機を迎えた同校が40年かけて都内屈指の進学校に変貌した理由を探った。
「園芸」で野菜を育てる体験型授業 時に虫に大騒ぎ
新女子御三家の一角として知られる東京都内の中高一貫校、鴎友学園女子中学高校(東京都世田谷区宮坂)の人気が近年高まっている。実質倍率(第1回入試)は20年までの2倍前後から21年は2.4倍、22年は2.8倍と上昇。今春の大学合格実績では東大9人、京大1人、一橋7人、東工大6人(いずれも現役)など超難関国立大のほか、早慶上理に約250人、MARCHに約360人というめざましい実績を残した。80年代には偏差値38という不人気校に落ち込み経営危機を迎えた同校が40年かけて都内屈指の進学校に変貌した理由を探った。
鴎友学園はキリスト教の精神に基づき「慈愛と誠実と創造」を校訓としている。入学してほしい生徒として「大学受験のための学習だけではなく、あらゆることに興味・関心を持つことができる」「自ら進んで問題を発見し、その解決に向けて、仲間と協力して真剣に取り組むことができる」「困難な状況の中でも、しなやかに粘り強く、自分の人生を豊かにしようと努力する」の3つを求めている。こうした方針は同学園中学校の進路指導ポリシーに如実に示されている。
まず中学1年では「自分レポートを作成し自分を見つめ直す。また頻繁に席替えを行い他者との関わりの中で自己を発見する」、中学2年では「車椅子やシニア体験などを通じて弱い立場にある人たちに目を向け、現代社会が抱える課題に気づき解決する力を養う」、中学3年では「さまざまな立場の方の講演を聞き職場訪問や見学を通して将来の自分の姿を描いていく。11月の沖縄修学旅行では歴史や文化などの事前学習を土台にして現地を訪れ、平和をつくる人となることを自覚する。理科では実験の方法から自分たちで考え研究を行い、仲間と協力して課題を解決する力を養う」とある。並行して英語の多読多聴や基礎力の定着、オールイングリッシュによるコミュニケーション能力の向上を目指している。高校に進学すると2年生の段階で全カリキュラムを終了。以降は具体的な進路の絞り込みや国公立大二次試験対策、小論文の個別添削など大学受験に向けた実践的な指導に入るようだ。
ユニークな授業は「園芸」。野菜や花、土に親しみ日々成長する生命を育てる驚きと喜びが体験できるという。時に虫に大騒ぎになることもあるというが、これも課題解決につながっていく授業の1つだろう。中学に入ってすぐに社会課題を意識した授業を行っている鴎友の教育カリキュラムについて受験に詳しい大学講師がこう話す。
「難関大学の入試は近年、思考力、表現力、読解力を問う問題が増えています。例えば今年2月の慶応大学文学部入試の小論文は講談社選書メチエの荒谷大輔著『使える哲学―私たちを駆り立てる五つの欲望はどこから来たのか―』から出題され、近代社会のパラダイムの“正しさ”の問い返し、つまり“正しい”と思われたオピニオンに対する自分の考えを論述する答案作りが求められました。自由や平等の尊重、その一方で多様性や他者の権利にどう配慮すればよいのかを丁寧に記述する表現能力が必要ですし、そのためには早くから新聞や新書を読むなど現代社会が抱える課題についてアンテナを張り巡らす習慣を身に着けなければなりません。鴎友に限らず、近年合格実績を伸ばしている中高一貫校は生徒の思考力、表現力、読解力の養成に力を入れています。慶応入試の小論文を見ても分かるように多くの難関大学が発想力豊かな生徒を求めています」
生徒が主体的・協働的に学ぶアクティブ・ラーニングと呼ばれる授業を推し進めることで人気校に変貌した鴎友学園。同校は大学合格実績と学部別進学状況を分けて公表しているため、その実力が測りやすい。
今春入試の早稲田は現役合格者が61人。進学状況を見ると文2、教育3、文化構想2、社会科学3、法2、政治経済2、商1、基幹理工1、創造理工2、先進理工1、スポーツ1となっている。慶応は50人が合格し、進学状況は文6、法1、総合政策1、経済1、理工2、医2、薬2だった。国公立は計69人、私立は計124人。全体的に東大など超難関国立大から早慶、MARCH、私立医大あたりに進学しており、保護者からは魅力的な学校に見えるはずだ。鴎友が人気校となった背景には地理的な事情もあるという。「鴎友が校舎を構える世田谷区は中学受験激戦区で中高一貫校の数は東京23区で最多です。鴎友から徒歩10分足らずの東京農業大学第一中高は近年合格実績を伸ばしていてキャンパスが広いことでも人気です。こうした競争があるため各校とも合格実績を積み上げる必要があるのでしょう」(予備校講師)
女子御三家と呼ばれる私立中高一貫名門女子校の桜蔭、女子学院、雙葉の人気に迫りつつある新女子御三家の鴎友、豊島岡女子学園、吉祥女子。少子化が進む中、優秀な生徒獲得のための学校間競争はますます激戦となりそうだ。