【RIZIN】DEEP佐伯代表が本命・伊澤の死角に言及「RENAタイプとの経験値がない」
来る7月31日、さいたまスーパーアリーナにて「湘南美容クリニック presents RIZIN.37」が開催される。同大会では、世界の精鋭8名による女子スーパーアトム級WORLD GPの1回戦4試合が組まれた。そこで、女子格闘技の大会を日本で最も数多く主催してきた、DEEPの佐伯繁代表に話を聞いた。
3・11に実現するはずだった幻のカードが実現
来る7月31日、さいたまスーパーアリーナにて「湘南美容クリニック presents RIZIN.37」が開催される。同大会では、世界の精鋭8名による女子スーパーアトム級WORLD GPの1回戦4試合が組まれた。そこで、女子格闘技の大会を日本で最も数多く主催してきた、DEEPの佐伯繁代表に話を聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
「このスーパーアトム級っていう階級(49キロ以下)は日本人がギリギリ世界を狙える階級なんですよね。52キロを超えるとUFCでも階級があって難しくなりますけどね」
まず佐伯代表は、東洋人でも世界の頂点を目指せることが可能だという見解を示しながら、「その分、この階級には世界を見渡したときに、有名な強豪がいないから、RIZINがそのなかで探してきた外国人がどれだけ強いのかは未知数ですけど、もしかしたら化け物を見つけてきたのかもしれないし、分からないですよね」と話した。
実際、現在の王者・伊澤星花の相手となるラーラ・フォンターニャはPAWCストロー級王者とCOFフライ級王者の肩書きを持ち、目下のところ「無敗」で自給自足の生活を送っているストイックなファイター。RENAの相手アナスタシア・スベッキスカはADCCキエフ大会に出場し2階級で優勝するなどの実績を持つ。しかもこのご時世にウクライナ出身となれば、それだけで今を語ることができる女子選手とも言える。
また、前RIZIN王者・浜崎朱加の相手、ジェシカ・アギラーに関しては、WSOF初代女子ストロー級チャンピオンの実績を含め、実績は抜群だが、40歳と年齢的にどの程度できるのかが注目されている。
ちなみに浜崎VSジェシカは、3・11の東日本大震災の日にJEWELSの新宿フェイス大会で行われるはずのカードだった。
「その話は会見のときに(浜崎と)していたんですよ。『浜ちゃん、地震のときってどうした?』って」
佐伯代表いわく、あの日は地震で大会が開催できなくなっただけではなく、電車も動いていないため、総勢50人を超える選手や関係者が東京・新宿に(当時)あった、DEEPジムに宿泊したという。
「(浜崎はジムに)泊まったって話していましたけど、衝撃的な日でしたよね」
そう言って佐伯代表は記憶をたどりながら、「あの日は試合当日に大会を中止にしたんですけど、告知もできないから、会場の外にスタッフを立たせて、来場しに来た方にその場で中止を伝えたりもしましたね」と振り返った。
「今回のトーナメントに、藤井恵さんが勝てなかったジェシカ選手が出るとなれば、その弟子の浜ちゃんが相手になるんだろうなと思ってましたね。だけどジェシカ選手に関しては、他の誰とやっても面白かったんじゃないですか? ただ、今回は一番ストーリーがある浜崎さんになったってことですよね」
さらにGP1回戦のもうひとつのカードに、2017年に開催された同GP優勝者・浅倉カンナVSパク・シウがある。これについて佐伯代表は「パク・シウ選手は年末にはRENA戦もありましたけど、外国人選手でいったら、この階級では一番名前がありますよね」とコメントしたが、果たしてカンナ選手はパク・シウ選手に勝てるのか。
「正直言って、相性で言ったらカンナ選手が一番いいと思う。パク・シウ選手に勝てる確率が高いのはカンナ選手だと思いますよ。やっぱりカンナ選手は自分の強さであるレスリング力、相手をテイクダウンしてコントロールする。それが得意なので。どうしてもパク・シウ選手はそこに穴がある」
カンナからすれば、その穴をうまく突くことができれば、おのずと「勝利」のふた文字が見えてくると佐伯代表は言う。
「逆にパク・シウ側からすれば、この1年、日本で(元レスリング世界王者の)山本美憂さんと練習して、いかにテイクダウンされないか。そこを練習してきたはずだけど、ビザの関係で、最近、韓国に(パク・シウは)戻らないといけなくなって、美憂ちゃんとの練習ができていないんですね。そこがこの試合にどう影響するか。だけど僕はカンナ選手が有利だと思いますね」
伊澤はRENAのようなタイプとやったことがない
さて、今回のGPにはいくつか注目すべき点が存在するが、そのうちのひとつに、RENAが会見上で宣言した「最終目標は伊澤戦」がある。RENAはあえて「最終目標は優勝ではなく、伊澤戦」とコメントししているが、実際、伊澤VSRENAの行方はどうなのだろう?
「伊澤さん目線で言うと、RENA選手が勝ち上がってきたら、ああいうタイプとは今までやったことがないから、意外とそこが見えていない。そういう意味ではRENA選手みたいにパンチや三日月蹴りのような打撃が強い選手とやった時にどうなるのか。そこがまだ見えていないんですよね」
そう言って佐伯代表は次の言葉を続けた。
「だから、もし日本人の4人が全員勝ち抜いたら、次のカードはすごく難しいですよね。RENAVS浜崎は同門だから決勝戦まではやらないと(RENAが)言っているでしょう? ってことは、普通に考えたら準決勝は伊澤VSRENA、浜崎VSカンナになるけど、浜崎VSカンナは3回目になりますからね」
確かに同門だが、決勝戦でなくとも浜崎VSRENAは見てみたい。
「そうなると、伊澤VSカンナ、浜崎VSRENAで準決勝戦は初対決が2試合になるんですよね。まあ、終わってみないと分からない。ジェシカ選手のコンディションもあると思うし、そのくらい外国人は分からない。日本人選手が4人残るかどうかも分からないですからね」
そんななかでズバリ佐伯代表に優勝予想をしてもらうと、当然といえば、当然の返答が返ってきた。
「普通に考えたら現チャンピオンの伊澤さんが本命でしょうけど、それ以外はまったく分からないですよね」
ちなみに伊澤は最近、婚約を発表した。これはどの程度影響するものなのか。
「今までのケースで言うと、伊澤選手は練習環境が変わったわけじゃないので、そこは変わらないと思うんですけど、分からないのは急に生活や置かれる立場が変わることで運気が変わることがある。伊澤選手の場合は大丈夫だと思うけど、なかには『結婚してから元気なくなったな』とかっていう選手の話は聞いたりしますよね。あとは精神的に守りに入っちゃうとかね。ただ、(伊澤さんは)そういう性格の子じゃないからね。だけどこれは誰ってことじゃなく、いつも同じモチベーションでいられる選手はいないんですよ。だからいつかは負けますよね」
それでもMMAわずか6戦目でRIZIN王者に駆け上がった、伊澤の強さには定評がある。
「それと彼女はまだ24歳かな。10年たっても34歳ですからね。だからもし今回どこかで負けたとしても、必ずトップに上がってくるファイターであることは100%間違いない。でも、分からない部分もある。例えば子どもができたとか。そしたら人生変わらざるを得ない部分も出てきますよね。男女問わずその部分はどうしても影響が出てきますからね」
たしかにそこは誰にも分からない領域になる。
最後に、もろもろの条件や見方をふくめ、佐伯代表は今回のGP1回戦をこう総括した。
「全体的に考えると、コロナが明けて、外国人選手が入ってくることになって、RIZINが世界に打って出ようとするタイミングが加速しているんじゃないかと思いますね」