“神様”ゴッチさんどう思う? 「無我」西村修は大仁田厚の「邪道沼」に両足を突っ込んでしまった
いったん「邪道」大仁田厚と関わると、なかなか邪道の沼から抜け出せなくなる。邪道のリングは、一度、その禁断の味を体験してしまうと、プロレスラーの性なのか、その魅力にはまりこんでしまうのかも知れない。
毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.104】
いったん「邪道」大仁田厚と関わると、なかなか邪道の沼から抜け出せなくなる。邪道のリングは、一度、その禁断の味を体験してしまうと、プロレスラーの性なのか、その魅力にはまりこんでしまうのかも知れない。
「無我」西村修をしても、同じだった。ファイヤープロレス7・17大阪・鶴見緑地花博記念公園ハナミズキホール付属展示場大会の「劇場映画BGUS II presents スクランブルバンクハウス 電流爆破バット+爆破ロケット+有刺鉄線ボード・エクストリーム地雷爆破(火薬量5倍)デスマッチ」で、吉江豊と無我軍を結成し、大仁田、雷神矢口の邪道軍と激突した。
爆破アイテムをすべて用意したかのような邪道のリング。西村はもはや何の躊躇もなく爆破バット手にしていた。大仁田に叩きつける。耳をつんざく爆音とともに、大仁田の体に衝撃が走った。
それでも毒霧で反撃してくる大仁田に、西村は爆破ロケットを打ち込んだ。なおも吉江のキックで大仁田をリング下に敷き詰められた地雷に叩き落し、戦闘不能に追い込んだ。西村と吉江は矢口を爆破バット・サンドイッチ攻撃で仕留めて、無我軍が邪道軍にトドメを刺した。
大仁田は「俺は男だから。ここ大阪で西村に借りを返す。男として生きてきたからには、この借りは必ず返す」と邪道節でリベンジを誓っていた。
もちろん、西村もこのままで済むとは思っていない。「勝つには勝ったが、余裕なんて全くなかった。邪道のリングでの戦い方では、向こうの方がはるか先を行っている。火の扱い方や火器の使い方もなれていらっしゃる」と振り返った。薄氷の勝利だったことを認めている。
しかも大仁田イズムの奥深さをまたまた感じたという。「邪道は底なし沼。まるで底が見えない。それどころか、どんどん深くなっていく」とポツリ。邪道の禁断の味に、すっかり取りつかれてしまったようだ。
邪道軍のミスター・ポーゴが無我軍に加勢するという不可解な動きをしてきた。「何を考えているのか、全く分からない。もしかしたら、無我に加わりたいのかも知れないが、志から感性、生活習慣……すべて我々と共有できないと無理」と否定的な見解だ。
とはいえ「来る者は拒まず」が基本。ポーゴの出方次第では、予想外の動きもありえそうだ。
カール・ゴッチさんの墓前に邪道との抗争は報告せず
間もなく2007年に亡くなった師である“神様”カール・ゴッチさんの命日7月28日がやって来る。西村は「もう一度、日本に行きたい」というゴッチさんの願いを形に、と東京・南千住の回向院にあるお墓の建立に尽力した。ゴッチさんが大好きだった赤ワインと葉巻などを手に訪れて、墓石の清掃なども行っている。
墓前に邪道との抗争は報告しないという。「渕(正信)さんのことは、たまにお話をされていたが、大仁田選手のことは一切、聞いたことがない。ゴッチさんの教えとは対極なのが大仁田選手。怒られてしまう。間違いなく」と、珍しく歯切れが悪い。
いずれにせよ、邪道とのバトルはまだまだ終結にはほど遠い。無我VS邪道の行く末がどうなるのか? ゴッチさんの怒りを買ってしまうのではないか? あるいは「多様性の時代」だと理解を示してくれるのだろうか? 楽しみでもあり、不安でもある。