ハリウッドザコシショウが意識する「TPO」 仕事を断る勇気「出しゃばると必ず炎上」
「R-1ぐらんぷり2016」で優勝、一目見た者をとりこにする狂気のネタで活躍の場を増やしているハリウッドザコシショウ。一方で、昨年「M-1グランプリ2021」を制した錦鯉には「バカを全面に押し出せ」とアドバイスを送るなど、意外にも論理的で後輩思いな一面ものぞかせる。8月に通算13回目となる単独ライブ開催が決まったハリウッドザコシショウに、ライブへの並々ならぬこだわりと芸能界で生き残る上での“駆け引き”を聞いた。
「タイトルひとつとったって、妥協はできない」単独ライブにこだわるワケ
「R-1ぐらんぷり2016」で優勝、一目見た者をとりこにする狂気のネタで活躍の場を増やしているハリウッドザコシショウ。一方で、昨年「M-1グランプリ2021」を制した錦鯉には「バカを全面に押し出せ」とアドバイスを送るなど、意外にも論理的で後輩思いな一面ものぞかせる。8月に通算13回目となる単独ライブ開催が決まったハリウッドザコシショウに、ライブへの並々ならぬこだわりと芸能界で生き残る上での“駆け引き”を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
――今年も単独ライブシリーズ「ツアーしょんべん」が決定。すごいタイトルだ。
「サブタイトルがあって、東京1日目が『焼肉ザコシの劇場版バアサンシュー』、2日目が『優秀ザコシの劇場版珍棒じらがのオションベン』、大阪と静岡が『横柄ザコシの劇場版尿道からの小便X』、追加公演が『説教ザコシの劇場版ションベンストーリー珍棒尿道小便』。
タイトルひとつとったって、妥協はできないです。8月のライブに向けて1月くらいから考えてる。最近は芸人のライブでも、オシャレなタイトルでビシッとスーツ着て登場するオープニングムービーとかがはやってるけど、はっきり言って激サムでしょ?(笑) 僕のライブでそんなのやったら『ザコシ、どうした?』って心配されますよ。ちょっと前まではコンビニでボクのライブのチケットを買うのに店員さんにライブ名を伝えなきゃいけなくて、『恥ずかしくてチケットが買えない』なんてご意見もいただいていましたけど、僕から言わせると、そこからもうアトラクションは始まっているんですよ。今はクレジットカードでの決済が主流なので、済ました顔で買えますけどね。
単独ライブって、正直しんどいしやりたがらない芸人も多いけど、僕は自分がやりたいことを100%表現できるチャンスだと思ってる。間に人が入ると、どうしてもダイレクトに自分の頭の中を表現できないんですよ。テレビでも30分収録したものが5分に編集されて、面白いと思ったところが切られてたり、オンエアを見て残念に思うこともある。でも、それはディレクターの考えもあるから仕方がないこと。だからライブではタイトルもチラシも出囃子も選曲も、世界観が統一するように全部自分でプロデュースしてるんです」
――ライブでは攻めたネタをしたいと話しているが、一方で誰も不快にしない笑いというのはあり得るのか。
「あるとは思うけど、本当にいい子ちゃんのお笑いですよね。それは僕はやりたくないですけどね。人間って本来、突かれたくないところを突いたりするのが面白いっていう感覚があるもの。それを全部排除するっていうのもどうなのかなと。人が失敗したり、落ちていくところって面白いんですよ。芸人が滑ってるのだって面白いでしょ。それにフタをするのでなく、イジって笑いにしたっていいと思う。もちろん、テレビみたいにいろんな人が見てたらコンプライアンス的に問題もあるだろうけど、ライブはお客さんが見たくて見に来てるもので、そこでも全部ダメっていうのは……。もちろん、ある程度自粛はしますけどね」
昨年のM-1では、優勝した後輩・錦鯉へのアドバイスも話題
――昨年のM-1では、優勝した後輩・錦鯉へのアドバイスも話題を呼んだ。
「アドバイス云々ではなく、自分がやりたい、面白いと思うことをやってきたなら、それは絶対続けたほうがいいと言っただけですよ。ブラマヨ(ブラックマヨネーズ)が売れたとき、『こういう漫才をせなアカン』とスタッフから言われたことがあったけど、誰かが売れてたときにそれと同じことをやっても売れるわけがないんですよ。なぜなら、ブラマヨだってずっと同じことを続けてきてやっと売れたんだから。売れてるものに寄せたり、こびたりするのでなく、自分が面白いと思うものを貫き通してやっと当たるんですよ。ちょっとした軌道修正はあっても、それまでやってきたことを全部やめてしまうのは違う。だからお前らも絶対にこのままでいいということはずっと言ってましたね。
裏を返せば、僕と似たような芸風のやつも、僕と同じようなことしてたって売れないですよ。むしろやってみろよという気持ちもある。『ドキュメンタル』で俺に勝ってみろ、『R-1グランプリ』の審査員レベルまで来てみろよ。いつまでもそこに留まってるんじゃねえぞって」
――M-1優勝ともなるとCMオファーも殺到するが、CMで滑らないコツは。
「企業案件は基本全部ノータッチですよ。うまいこと監督さんが落とし込んでくれるかどうかで、そこは芸人が出しゃばるところじゃない。僕でいうと、プロレスイベントでゲストに呼ばれることがありますけど、そこで笑いの押し売りをしても、プロレスを見に来てるファンは『変な笑いはいらねえよ!』となるだけ。出しゃばるようなタイミングじゃないところで出しゃばると必ず炎上します。
すぐに『プロレス好きです』『カープ女子です』とアピールしてくる女の子とか結構いるけど、よくてファン歴1年ってところで、大体は1か月2か月程度の知識しかない。ニワカ知識は大概よく思われないので、できないと思ったときはやらない。自分じゃ迷惑かけるかもしれないと判断したときはちゃんと説明したり、ときにはオファーを断ることだってあります。何事もTPOが大事です」
――話せば話すほど、普段のネタのイメージとのギャップを感じる。
「そんなこと言われたって、そうじゃないと生き残れないですよ(笑)。自分の笑いを貫き通すこと、それと同時に何を求められているかを把握すること。そういう意味では、単独ライブは1番『ザコシらしさ』が出せる場所なので、年に1度の1番クレイジーな笑いを見に来てほしいですね」
□ハリウッドザコシショウ/本名:中澤滋紀(なかざわ・しげき)1974年2月13日、静岡県出身。92年、高校の同級生とともに大阪NSCに11期生として入学。翌93年、お笑いコンビ「G★MENS(ジーメンス)」としてデビュー。2002年からピン芸人として活動を始め、16年の「R-1ぐらんぷり2016」で優勝。21年にはこの年からリニューアルを果たした「R-1グランプリ」にて審査員を務める。大阪NSC時代の同期に陣内智則、中川家、ケンドーコバヤシ、たむらけんじなど。
公式ツイッター:https://twitter.com/zakoshisyoh